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介護崩壊をどう防ぐのか

2020年05月02日
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都市圏を中心に医療崩壊が懸念される状態が続いています。

 

そんな中で、新たな崩壊が始まろうとしています。

 

ある意味で、医療崩壊よりも深刻度が高いかもしれません。

 

それは介護崩壊。

 

デイサービス等の介護施設にはたくさんの利用者が集まります。

 

ある意味3密(密閉・密集・密接)といってもおかしくはありません。

 

それも疾病弱者である高齢者の方ばかりです。

 

ここにきて福祉施設でのクラスター発生事例が多く報告されるようにな
りました。

 

まだ医療施設ほどその数は多くはありませんが、疾病弱者である高齢者
ばかりをサポートしているために、一度発生した時の影響度は計り知れ
ません。

 

その影響度ゆえに、感染防止の為に介護施設も苦渋の選択を余儀なくさ
れています。

 

社会貢献という色合いが強い事業でありながら、元々からその経営は厳
しく、経営母体も小さいところが多いため、影響は深刻です。

 

特に参入事業者が増加した都市部の事業者さんは、休業によって介護報
酬が入らなければ経営的に危機的な状態になります。

 

でも、深刻なのは事業者さんだけではありません。

 

以前の記事でもご紹介したとおり、介護はその70%が家族や親族が実施
しているという実態があります。

 

生活の為に親の介護をやりながら懸命に働いている人々にも、今回の影
響は深刻なものとなっています。

 

そう介護をしている家族の負担が信じられないほど増えることになるの
です。

 

時間的な拘束が増えるというだけではありません。

 

肉体的なものだけでなく、精神的なものも含めると大きな負担といわざ
るをえないのです。

 

厚生労働省は、通所介護といわれるデイサービス等の介護職員でも、
在宅介護ができるように方針を変更しているのですが、もともと在宅で
介護ができる環境が無いためにわざわざ通所介護を受けているのです。

 

何度も記事でご紹介したとおり、この国の家は介護を前提に造られては
いません。

 

やはり介護施設がないと無理があるのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

深刻な単身世帯

 

 

より深刻なのは高齢者の単身世帯です。

 

以前の記事でもご説明したとおり、高齢者のみの単身世帯と高齢者夫婦
のみの世帯が1400万世帯を超えている実態があります。

 

2016年度の統計数値ですが、もう全世帯の30%近くに達しています。

 

2025年問題以降、この問題は深刻さの度合いを急速に高めていくことに
なります。

 

親族が近くに居住していない場合は、心身が弱った時には介護施設だけ
が頼りなのです。

 

介護施設の休業は、疾病弱者でもある高齢者の皆さんの生活を直撃する
ことになるのです。

 

新型コロナウイルスの収束が長引けば長引くほど、影響度を増すことに
なります。

 

 

認知症への対応も必要

 

 

以前の記事でもご説明した通り認知症は「不活性」で進行します。

 

高齢者の皆さんに食事や入浴等サービスだけでなく、軽い運動をも提供
する介護施設の休業は、心身の不活性につながるのです。

 

厚生労働省が2015年に調査した際の患者数は、525万人。

 

おそらく予備軍も含めるともっと大きな数字になります。

 

本来は症状の進行を遅らせるようにしなければならないところを今回の
介護施設の休業措置はその逆になってしまう可能性があります。

 

介護施設の役割は、ただ心身が弱った高齢者の皆さんの生活支援をする
だけではないということを考えると、影響はとても大きいのです。

 

また、ここにきて新たな課題も発生しているようです。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で本来、介護サービスを受けるべき人が
受けていないという事態が広がる恐れがあるとの情報を入手しました。

 

介護サービスを受けるために自治体の窓口に申請する「要介護認定」の
申請数が各地で減少していることがわかったのです。

 

感染予防のため申請を控えている人が多いと考えられますが、要介護状
態の確認が遅れれば、それだけ家族にも負担が増えることにもなるので
す。

 

非常事態宣言が出されているために、外出を自粛しているので仕方がな
いことだとは理解できますが、外出自粛によって家にいる時間が増える
と、高齢者は運動機能や認知機能が一気に低下する恐れがあります。

 

筆者も、今は全てが負のスパイラルに陥っているのではないかと懸念して
います。

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

筆者の考える対策

 

 

こんな負のスパイラルをどのように断ち切ればいいのでしょうか。

 

筆者の考え方を少しまとめてみました。

 

まず、高齢者の皆さんにとっても、事業者さんにとっても施設が安全に
運営できる方法が一番いいことだと思います。

 

そうすれば、家族や親族の負担は軽減できます。

 

①3蜜を回避しながら運営を続ける方法を模索する

 

小規模な高齢者施設は、一般の家を改造して使っているところも多い
ために3蜜を回避することは難しいのが実情です。

今使っている施設を活用することが難しいのであれば、施設の近くで
閉鎖されている施設を使うことを自治体や地域の団体・組織と協力して
検討できないでしょうか。

又は、空き店舗や閉鎖されている施設の有効利用も考えるべきではない
かと考えます。

行政や地域の団体だけでなく家屋の所有者との調整も必要にはなります
が、今自粛で閉鎖されている施設はかなりあります。

3大介護の中で、対応が難しい「入浴」だけは、工夫が必要ですが、
もともと複数の同時入浴は難しい状況にはあったのです。

新たな家賃の発生を抑えることができれば、経営に大きな負担には
ならないはずです。

 

②送迎に地域の力を借りる

 

・地域でのボランティアを含めたシェアリングを実施する

・行政がタクシー会社やバス会社と提携する
(タクシーやバスは利用客が激減して困っているはずです)

・コミュニティバスを増便する
(乗車定員を限定して、介護施設を巡回させる)

 

送迎も車内の定員を減らして換気を徹底すれば、感染リスクは減らすこ
とができます。

これからは気候も良くなるために窓を開けて走行することは問題になり
ません。

送迎の運転手の確保と経費増には対応が必要ですが、行政を中心とした
地域内の協力関係で乗り切れないか模索すべきです。

 

③地域全体で助け合う

 

仕事の都合で準備が整わない場合、地域全体で助け合う。

地域には多くのNPO法人や団体が活動しています。

こんな時こそ、地域内で連携して地域力を発揮させるべきではないでし
ょうか。

 

 

もう一つの考え方は、もっと大胆な案です。

 

今回の新型コロナウイルスの影響は、医療のあり方にも、介護のあり方
にも一石を投じたのではないでしょうか。

 

医療については筆者が考え方云々をここでお話しするには難しい面があ
りますので避けますが、介護についてはここで在宅介護を大胆な手法で
変革する良いチャンスでもあるのです。

 

この日本は、バブル崩壊後の社会構造の変革をだらだらと先延ばしにし
てきました。

 

このコロナウイルス禍によって、いよいよというか、ようやくというか、
うむをいわせず変革せざるをえないことになったのだと思います。

 

来るべき2025年問題を考えると、在宅介護の質を上げておく必要があり
ます。

 

それを今回の感染予防対策と同時に考えるのです。

 

言葉が適当かどうかはわかりませんが、

 

「自宅介護改革」

 

ともいえるのかもしれません。

 

極端な話ですが、自宅での介護を実施した場合、感染リスクは大幅に
軽減できます。

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

やはりコーディネータが必要

 

 

上記は筆者のつたない考え方ですが、地域にあったやり方は必ず見つか
るはずです。

 

専門家の意見は確かに重要です。

 

しかしながら、我々は今、前例のないことに挑戦しなければならなくな
ったのです。

 

専門家でもわからないことがあります。

 

こんな時は、最前線で頑張っている人の知見や感覚の方が、専門家の知
識より最適である場合もあるかもしれません。

 

前例のないことに挑戦することは難しいですが、メリットもあります。

 

思い切ったことをしなければ、対応できない可能性も大いにあるのでは
ないでしょうか。

 

そう、大胆に未来の構想を練るのには、良い時期かもしれません。

 

そのためには、やはり前回の記事でも書いた全体を俯瞰して対応策を
考えるコーディネータが必要だと筆者は思っています。

 

そんなコーディネータを地域で育成していくことが、この難局を乗り切る
為には必要だと強く感じました。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

かいご畑