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ジョブ型雇用を考える

2020年07月07日
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コロナ禍の影響で、仕事に対する考え方が大きく変ろうとしています。

テレワークが広がり、会社に出社しなくても仕事ができるようになり
つつあります。

また企業もこの機会を活かして、雇用システムそのものを変えつつあり
ます。

最近、ジョブ型雇用という文字が盛んに使われるようになってきました。

 

このジョブ型雇用、欧米の企業で採用されてきたシステムです。

 

年功序列、終身雇用といった日本型の雇用システムとはまったく逆の
考え方といってもよいこの雇用システムが注目され始めたのはなぜなの
でしょうか。

 

今回の記事は、このジョブ型雇用について皆さんと一緒に少し考えて
みたいと思います。

 

 

日本型雇用とは

 

 

まず欧米型のジョブ型システムについて考える前に日本型の雇用システ
ムについて整理してみたいと思います。

いままで高齢期雇用の記事で度々触れてきた日本型雇用システムに
ついてはお時間があれば目を通して頂ければ幸いです。

日本型の雇用システムは、日本的経営の「三種の神器」として表現され
る「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」が特徴ではありません。

日本型雇用システムの特徴を表す言葉は、「メンバーシップ型」。

 

欧米型の雇用システムでは、まず職務を決めてから雇用契約を結ぶことが
一般的なのですが、日本では職務という考え方が極めて希薄なのです。

 

メンバーシップ型という考え方は、「職務を決めないまま会社のメンバ
ーになること」を意味しています。

労働政策研究・研修機構の濱口 桂一朗氏の言葉を借りると、

 

「日本の雇用契約はその都度職務が書き込まれるべき空白部分が残され、
この法的性格は一種の地位設定契約やメンバーシップ契約と考えること
ができる」

 

と表現されていました。

 

この日本型雇用システムを簡単に図式化すると下記の様になります。

日本の雇用システムは、職務を決めないで会社の一員になること。

ようするに会社のメンバーになることに重点が置かれているのです。

 

 

 

 

 

このシステムの結果としての「終身雇用」「年功序列」なのです。

今回のような環境激変の状態においても、解雇は簡単にはできません。

ここにきて、大手電気メーカを中心に大企業が、欧米型といわれるジョブ
型雇用に転向すると表明し始めました。

即戦力を調達したいというよりは、もっと簡単に社員を解雇できるシス
テムへの移行を望んでいるようにも感じます。

 

 

ジョブ型雇用とは

 

 

日本型のメンバーシップ型雇用に対して、欧米型のジョブ型雇用とは
どういうものなのでしょうか。

ジョブ型雇用は、自分自身の専門スキルを活かして、職務や勤務場所を
絞り込むことができる限定正社員または有期契約労働者を指します。

その結果、企業は専門性の高い優秀な労働者を確保することができる
のです。

一方で労働者は自らの職務を提示することができ、職務記述書なるもの
に記載された内容や条件以外のことを行う義務は発生しないので、ライフ
ワークバランスが取りやすい傾向にあるといえます。

企業側はこの職務記述書に書かれた職務を一方的に変更することはでき
ませんが、企業の経済状況により、労働者に依頼していた仕事がなくな
った場合は配転を行う必要がありません。

 

ようするに解雇となるわけです。

 

労働者にとっては明確に職務と勤務場所が定められていることから、
労働者は景気の動向や今回のコロナ禍のような非常事態では失業する
リスクがあります。

 

日本型のパートナーシップのような安定した雇用は保障できませんが、
就業中は自分に合った環境で自分の能力を十分に活かすことができるの
です。

このジョブ型雇用とメンバーシップ型の比較を考えると、最も端的に
表現すると、

 

欧米型はあくまでも仕事ありきであり、「仕事に人をはりつける」という
意味でのジョブ型雇用。

 

これに対して日本型はあくまでも人ありきで、「人に仕事をはりつける」
のが、メンバーシップ型であるといえます 。

 

この違いを図示化すると、下記の様になります。

 

 

 

資料出所:濱口 桂一郎著 「若者と労働」 31頁の図を参考に筆者がまとめなおしたもの

 

 

ジョブ型雇用の特徴を改めて記述するとこうなります。

 

①職務やポジションを明確に定める

②企業と労働者の間では労働時間や勤務場所が決まっている

③企業は職務記述書に記載されている仕事以外は依頼できない

 

テレワークを前提にすれば、こんな働き方もありかもしれません。

 

アフターコロナの時代、このジョブ型雇用システムは、今後の新しい
働き方として、浸透していく可能性が高いかもしれません。

グローバル化の次に現れたコロナ禍という新たなリスクに対応する為に
は、企業も安定して社員を雇用する余裕がなくなる可能性があるからで
す。

 

メンバーシップ型雇用の仕事に対する考え方は、職務範囲を明確に定め
ずに、企業や従業員が必要と判断した場合は、その仕事内容に関わらず
業務を執行することができました。

これは、ある意味柔軟な対応がとれるという意味では、企業側にとって
は好都合な状況でした。

それも広い大部屋で机を並べて、仕事をしているのですからとてもやり
やすかった。

また、働く時間も限定されていないため、必要とあらば残業も行えまし
た。

これが、近年問題視されてきた長時間労働にもつながっていたのです。

 

でも、その日本型システムにも良い所がたくさんあることを忘れては
いけません。

 

 

日本型と欧米型の比較

 

 

ここで日本型雇用システムと欧米型雇用システムの比較を筆者の独断で
実施してみました。

比較検討の横軸は、若手、ミドル、高齢期の世代別にしてみました。

これをみると日本でのジョブ型雇用システムの導入には、大きなリスク
が存在することがわかります。

 

 

 

 

 

 

まず若年層では経験が浅くスキルがない若者が就業できない可能性が
増加するかもしれません。

お金に余裕がある世帯で育った高学歴で、高スキルの若者は希望の職に
つける反面、スキルや専門知識を持たない若者は低賃金の劣悪な環境に
追いやられる可能性があります。

グローバル競争の中で企業がこれからも高スキルを持った外国人の採用
を加速させると今よりもさらに格差が広がることも予想されます。

今以上に、若年層に失業や貧困が広がる可能性すらあるのです。

また高齢期をみると欧米型の持っている良い面が掻き消されてしまい
ます。

欧米では定年制や年齢差別がないために高齢期になっても健康であれば
いつまでも働けますが、年齢差別が平然とまかりとおるこの日本では
高齢期の雇用条件が改善されるとは思えません。

 

そして長年企業の中で職務を転々とし、専門知識を持たずにいた高齢期
の労働者にとっては、ジョブ型雇用はとても厳しいものになるかもしれ
ないのです。

欧米のように若年層の失業率が高くなり、加えて高齢期の(社内も含め
た)就業難民が増えた時、この国はどうなるのでしょうか。

安易な方向転換には危険性がはらんでいるようにも感じました。

 

 

この国の資産は人だけ

 

 

先日、新聞で大手企業の社長さんのインタビューが掲載されていました。

日本型の雇用システムをこれからも続けるとのこと。

社長さん曰く、「事業を育てるのにはとても長い時間がかかる」

その事業を育てるのは、社員であることもきちんと認識されていました。

 

社員を育てて、事業を創る

 

この基本形こそが、日本企業の強みだったのではないでしょうか。

この社長さんは新聞にではなく、社員に対して発信されていたのかも
しれません。

この社長さん、日本型雇用システムの良い点を深く認識されていると
思いました。

できる人間を連れてきて、事業を創るのであれば、誰でもできることか
もしれません。

経営はスピードだという異論も聞こえてきそうですが、スピード感を
持って生まれた事業は、スピード感を持って消えていきそうです。

 

どんなに時代が移り変わろうとも、人も事業もじっくり育てる。

 

そんな経営者が今、この国には必要なのではないかと感じました。

 

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。