ワーカーズコープで働く
コロナ禍の影響で仕事を無くす人が増えています。
テレビの報道である程度は知ってはいたのですが、足元から忍び寄る
不安を象徴するかのような光景を見ることができました。
それは、地域のハローワーク。
仕事を求める方がその仕事を見つける場所でもあり、失業した方が雇用
保険給付を受け取る場所です。
先日、地域のハローワークの前を通った時、その異様な光景を見ること
になったのです。
ハローワークは、結構早く(8時30分)から営業していますが、8時過ぎ
から入り口に長蛇の列ができていました。
間違いなく職を無くした人が増えているのです。
これからこの国では、失業者が急激に増えていくことになるのかもしれ
ません。
筆者の住む街にあるハローワーク 入り口には早朝から長蛇の列が・・
雇用と賃金が消えていく
コロナ禍の影響で、今雇用と賃金が縮小しています。
特に非正規を中心に雇用が消滅しつつあります。
何かあれば必ず弱い立場の人から影響を受けるのは悲しいことです。
リーマンショックの時は、製造業を中心に雇用が激減しました。
当時筆者はある事情で、毎週末夜行バスを使って東京と関西を行き来し
ていました。
低料金で使える夜行バスの利用客の殆どが、非正規で働く若者でした。
派遣切りにあいながらも、仕事を求めて全国を転々とするその様に筆者
は心を痛めました。
今度は、サービス業を中心に影響が拡大しています。
そして、その影響は正規社員にも広がろうとしています。
休業という名の拷問です。
ホテル等の宿泊業を中心に顧客減少の影響から稼働がなくなり、会社側
から休業を言い渡されますが、ひどいものでは賃金が80%ダウンする事
例も報告されています。
これでは生活が維持できません。
家族を養うことも不可能です。
雇用が無くなり、
賃金も消えていく
労働しなくなり、不安感は募る
そう今、雇用と賃金が消滅しようとしているのです。
雇用と賃金が、コロナという名のブラックホールに吸い込まれるように
消えていきます
以前の記事でもご紹介した「縮小」がここにも存在しています
高齢になると仕事がない
こんな状態になると、若い世代もその影響を受けますが、一番影響を受
けるのが高齢期に入った方々です。
(といっても筆者もその一人ですが)
以前の記事でもご報告したとおり、高齢になると年齢差別で仕事がない
のです。
ハローワークの求人やネット求人サイトを見ても、明らかに高齢期の方
々は敬遠されています。
「年齢不問」と書かれた求人は微々たるもので、その殆どは軽作業や警
備の仕事です。
この国には、明確な年齢差別がまかり通っています。
なおかつ、こんな厳しい状況下で、どのようにして働くことができるの
か?
今回の記事では、高齢期での働き方をテーマに一つの方策についてご紹
介してみたいと思います。
画像素材:いらすとや 高齢期になると思うように仕事が見つかりませ
ん 憂鬱な気持ちは募るばかりです
協同で働く
労働者にとって厳しい状況は、コロナ禍より前から存在していました。
被災後から環境が激変した人もいます。
離婚等の人生の変化を経験することにより、生活環境が変わる人もいま
す。
そして、企業の都合で生活を大きく変えなければならない人たち等
働こうとしても、なかなか仕事が見つからないことは珍しくありません。
そんな中で、今までの働き方とは全く違う働き方をしている方々がいま
す。
「世の中に自分たちの働く場所がないから創るという事はとてもシンプ
ルなこと」
「ないなら、自分達で仕事をつくろう」
「好きなことを仕事にすることは無理なことではない!」
こんな言葉が躍るあるパンフレットがあります。
一般社団法人 協同総合研究所が発行する
「ワーカーズコープ 協同ではたらくガイドブック」
がそれです。
ワーカーズコープ = 働く人の協同組合
という意味ですが、
①出資は自分たちで (だから自分が経営者)
②出資した会社で、自らが働く
③でも、一人じゃなく、集った仲間と働く
④組織内では、上下関係もない
⑤あるのは志と社会貢献への想い
⑥儲けるのではなく、自分たちが食いながら社会に貢献し、社会課題を
解決する
こんな働き方をしている人たちがいることを筆者も最近知りました。
画像素材:いらすとや
ヒエラルキーがないフラットな環境で、みんなで働くということとは?
地域社会の課題を解決する為に、NPO法人を立ち上げる方は世にたくさ
んいます。
でも、集ったメンバーで出資して協同で組織を立ち上げるというやり方
に筆者は少し興味を持ちました。
このワーカーズコープに所属する団体の仕事内容は、その殆どが地域の
課題解決です。
以下に少しその事業内容をご紹介してみます。
①訪問・居宅・通所介護等高齢者の自立支援
②子供(学童)保育・放課後等デイサービス
③障がい者就労支援
④屋外/屋内清掃・緑化・造園
⑤地元特産の直売・地元加工品販売
最初は上記の仕事を一つから始めて、どんどんと仕事を増やしていった
経緯が理解できました。
集ったメンバー(組合員)は、出資者であり、自分たちの意見を反映し
て組合の事業が行なわれ、組合員自らが事業に従事することを基本原理
にしています。
労働者でもありながら、事業に自分の意見を反映させるこの働き方は面
白いかもしれません。
働く人たちが、出資をし、経営、運営にも責任を持つ協同労働という働
き方の発想は、今まで筆者の頭の中にはありませんでした。
組織にヒエラルキー構造がないために、何を決めるのも合議制をとって
いるようです。
組織を経営している以上、今回のような社会変化に影響される可能性は
ありますが、企業側の判断で急に仕事が無くなったりはしません。
このワーカーズコープという組織は、全国で28組織、組織メンバーは
1万5千人あまり(2017年現在)だそうですが、今後も増えていくこと
は確かかもしれません。
雇われるのではなく、主体者として働く働き方。
独りではなく、協同・連帯して働くという働き方。
上記の組合のパンフレットには、下記のような宣言文が記載されていま
した。(一部を抜粋)
「宣言」
私たちは、発見した。
雇われるのではなく、主体者として、
協同・連帯して働く
「協同労働」という世界。
一人ひとりが主人公となる事業体をつくり、
生活と地域の必要・困難を、働くことにつなげ、
みんなで出資し、民主的に経営し、責任を分かち合う。
そんな働き方だ。
突然、会社から雇止めや休業を言い渡され、失意のどん底に落とされる
恐怖感はなくなるかもしれません。
当然のごとく、経営の責任は自身にあるわけですから責任は重大です。
しかしながら、この働き方はアフターコロナの時代の働き方としては
とても理にかなっているかもしれません。
21世紀に入ってからまだ20年、その間リーマンショック等の経済危
機や感染症危機がたびたび襲ってきました。
不確実の時代という言葉やVUCAという言葉に代表されるように先が見
えない時代だからこそ、このような働き方が望まれるのかもしれません。
法整備が進む
このワーカーズコープという働き方には、今まで根拠法がありませんで
した。
ようするに今までは、協同組合として法人格を取得できなかったわけで
す。
これまでは、NPO法人格等を取得して運営されてきたようですが、法整
備ができれば組織は適正な法人格を取得できるようになります。
新しい働き方に対する根拠法案の名は、「労働者協同組合法(案)」
この労働者協同組合法案、6月12日に全党・全会派の賛同により衆議
院に提出されました。(提出者15名、賛同者53名)
このような働き方が早くこの国でもできるようになれば、不安定な雇用
を解消できるかもしれません。
(時間がかかるかもしれませんが、希望は持てます)
誰もが年齢差別や学歴差別等の何の制約もなく、自分のやりたいことを
仕事にできることは素晴らしいことです。
この法案について詳細を記事内でご説明することは難しい為、法案の
概要を下記に示しておきます。
日本労働者協同組合連合会のホームページの法制化特設サイトの情報を
元に筆者が焼き直したもの(簡素化したもの)
上記の図を見ると、労働者協同組合法案がなぜできたのか。
何を目指すのかがよくわかります。
詳細を知りたい読者の皆さんは、日本労働者協同組合連合会のホームペ
ージをご覧ください。
筆者が社会人大学院で勉強している時に気付いたことがあります。
学部長の講義の際、学部長が学生達に聞きました。
「なぜ、大学院で勉強しようと思いましたか?」
会社が終った夜間や土日の休日に学ぶことは楽なことではありません。
学費も決して安くもありません。
なぜ?
一番多かった答えは、
「社会の役に立ちたいから・・・」
この答えの裏には、
「自分は(会社に、社会に)活かされていない」(と感じている)
という実態があることを筆者は確かに感じとりました。
(年寄りの感覚というものでしょうか)
みんな社会の役に立ちたいと思っているのに、そんな機会がないのです。
そんな願いをこの働き方は叶えてくれるかもしれません。
以前の記事でもご紹介したように、ドイツは働きたい人が皆働ける労働
市場改革を実施して経済を復活させました。
GoToトラベルのような小手先の対応を繰り返しても効果は出ません。
バブル崩壊以降も高度経済成長期の雇用の形を大きく変えることができ
ていないこの国で、新しい働き方が生まれるかもしれません。
このコロナ禍で、大きく変えるチャンスが到来しているかもしれないの
です。
この働き方、高齢期の方々や家庭を持つ女性等の弱い立場方々がもっと
活躍できる可能性を秘めています。
筆者もこれからもこの働き方に注目していきたいと考えています。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。
次回の記事の投稿は、9月27日頃を予定しています。
今月上旬、筆者は4回目の心臓手術を受けました。
今迄で一番難しい手術で、真剣に自分の死というものを考えました。
次回の記事は、死ということ、生きるということを今更ながら考えて
みたいと思います。