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なぜ賃金は上がらなくなったのか?

2020年09月12日
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週末のTV討論で、与党の幹部が安倍政権の功績を誇張していました。

株価は上がり、税収が戻り、賃金が上がったと。

とんでもない話だと思います。

アベノミクスの恩恵を受けたのは、一部の大手企業だけで、中小企業や
国民の生活は全く良くなっていません。

賃金は全く上がらず、逆に下がっています。

つい先日まで、最低賃金をどうするのかという論議が行われていました。

 

結局、毎年上がり続けていた(といっても基準が低すぎますが)最低
賃金は、今年は据え置かれることになったそうです。

 

最低賃金は、時給1000円以下。

 

1日非正規で8時間働いても、収入は8000円には届かない。

月20日働いても、単純計算で16万円。

 

そこから家賃や税金、社会保障費を差し引くと、ギリギリの生活費しか
残りません。

一人ならともかくも、これで子供や家族を養うこと等とてもできません。

まさにワーキングプアという言葉が現実味を帯びます。

 

おまけにこの賃金は、昔にように右肩上がりには上がらないのです。

これで夢や希望を持てというのは、あまりにも酷です。

 

この賃金、大事なものを守る為にはどうしても必要なモノですが、

なぜ日本人の賃金は上がらなくなったのでしょうか。

 

今回の記事では、この日本人の賃金について読者の皆さんと一緒に考え
てみたいと思います。

 

 

なぜ日本だけ?

 

 

以前の記事でもご紹介したとおり、過去20年間の賃金を比較した場合、
先進国の中で日本だけが賃金が減少していました。

他の先進国では、大幅に賃金が上昇していて、殆どの国が20年間で150
%以上の伸びを記録しているのに対して、日本だけが右肩下がりなので
す。

 

なぜ、日本だけ賃金が上がらないのか?

 

その要因を探っていくと、様々な要因が複雑に絡み合っていることが
分かります。

 

まず、一つ目の要因として上げられるのが、度々記事にもしている日本
企業の雇用システムの変化です。

いわゆる日本型経営は「三種の神器」という特徴が示すとおり、独自の
雇用システムから成り立っていました。

 

 

 

 

 

 

・新卒を採用し、OJTを通して教育を実施する。

・年功賃金をベースに、従業員は同じ企業で安心して長く働くことで
賃金が上昇する。

・社員も会社を信じて、欧米に負けじと長時間労働に応じ、生産性を
高めてきました。

・結果として、終身雇用制が確立した。

 

それを大きく転換させたのは、バブル崩壊。

 

自信を無くした多くの日本企業が「欧米型経営」を取り入れ始めたこと
で、日本企業の雇用システムは劇的に変化してしまいました。

 

そして、年功賃金による終身雇用が崩壊することにより、労使関係も
大きく変りました。

企業の新卒一括採用はまだ形を残しつつも、職業訓練を施し、生産性を
高めるインセンティブが働かなくなったのです

 

成果主義が跋扈し、不安定な非正規雇用が大幅に増えてしまいました。

 

そんな中で、企業は米国型経営への転換により、ステークホルダーの中
でも、特に“株主重視”の姿勢を強めていきました。

その結果、日本型経営の一つの象徴でもあった“社員重視”の企業姿勢は
影を潜めることになったのです。

社員軽視の姿勢は、社員教育や社員への労働分配の減少につながります。

その結果が膨大な企業の内部留保につながっているのかもしれません。

ようするに終身雇用の崩壊は、社員への投資の崩壊でもあります。

そして、企業の社員軽視の姿勢は、賃金にも跳ね返ることになったので
す。

 

 

もう誰も守ってはくれない

 

 

二つ目の要因にあげたいのは、労働組合の弱体化です。

一昔前は、年度が替わる前には「ベースアップ(定期昇給)」の話題で
持ちきりでした。

マスコミでも毎年大きく取り上げられていましたが、この数年はまった
く目にしなくなりました。

それどころか、日本を代表する企業の中には、ベースアップを廃止する
動きまであります。

筆者の子供の頃は、ベースアップ要求の季節になると、交通機関は決ま
ってストライキをやっていました。

子供心に、学校が休みになるかもしれないと、ストを期待していたもの
でした。

テレビでは、企業の労使交渉の緊張したやりとり等が報道されることも
あり、労働組合の役割は、当時は子供であった筆者にも理解ができたの
です。

 

毎年5月1日のメーデーには、各地で組合主催の大規模な集会も行われて
いました。

 

 

今でも労働者の皆さんは、労働条件の改善に向けて頑張っていますが

 

 

 

その集会で叫ばれていた言葉は、

 

「労働者の権利を守ろう!」「(労働者)仲間を守ろう!」

 

でした。

 

今は、誰が労働者を守ろうとしているのでしょうか?

弱い立場の非正規を容認した政治家でしょうか?

最低賃金を上げまいと理屈をこねる経済団体のお偉い方でしょうか?

 

今でも組合の数だけでみれば、減ってはいないそうです。

企業別組合は今も存在していますが、加入者数は減少しているそうです。

そして、その影響力はもう過去のような力はありません。

 

「会社の御用聞き化し、組合執行部が出世のステップになっている」と
いう指摘まであります。

もう企業の中では、労働者個人を守る術は無くなりつつあるのかもしれ
ません。

賃金を上げるためには、成果を会社に評価してもらうか、ポジションを
上がる以外には給与を上げることができなくなってしまったのかもしれ
ませんね。

 

でも、こうなるとずる賢い輩が台頭してきます。

 

他人の手柄や成果を横取りする。

金の匂いを嗅ぎ分け、会社や社員のこと等そっちのけでなりふり構わず
金を搾取する。
(企業内なので、ある意味合法的かもしれませんが・・)

そんな人間が、なぜか結果的に社内で偉くなるんです。

そうなると誰も真面目に頑張ろうとは思わなくなるものです。

 

この組合の弱体化に伴い、「仲間を守る」という意識は組織の中で急速
に薄れてしまいました。

 

 

製造業を呼び戻そう

 

 

日本の賃金が上がらないことには、非正規雇用者の増加が大きく関わっ
ています。

記事の冒頭でも少し触れたように、非正規雇用者は正規雇用者に比べ
実際の賃金水準が低いのです。

このまま非正規雇用者の比率が高まっていくと、統計上では平均的な
賃金水準をも引き下げてしまうことになります。

非正規社員の比率が高い産業ランキングを見ると、TOP3には全て
サービス業が入ります。(1位は宿泊・飲食サービス業)

ようするにサービス業で働くということは、賃金が安く生産性が低い
ということになります。

 

(決してサービス業が悪いと言っているわけではありません。)

 

逆に非正規社員の比率が低い産業ランキングを見ると、上位にはIT関連
や公共サービス事業が入っていますが、日本のお家芸でもある製造業は
まだまだ善戦しています。

 

生産性が世界と比較しても見劣りしない製造業。

 

生産性が高いということは、賃金は安くないともいえるのです。

日本の賃金の安さの要因には、日本の産業構造の変化もその一つにあげ
られます。

以前の記事でも述べたように、生産性が高い製造業の就業者が減少し、
労働生産性の低いサービス産業への就業者が増加していることによるも
のです。

以前の記事で示した図をもう一度確認してみてください。

 

 

 

この図は2012年までのデータですので、もっと差が拡大しているかも

 

 

 

 

簡単に言ってしまえば、労働生産効率が上昇しやすい製造業の就業者が
減少したことが、日本の給与が上がらないことの要因になっているので
す。

でもこの日本のお家芸、工場の多くがコストの安い中国に行ってしまい
ました。

結果として、国内での設備投資は減少し、就業者を吸収する力がなくな
ってしまったのです。

それもそれなりの賃金をもらえる就業者が減少してしまった。

 

今、その中国が大変な国になろうとしています。

香港の問題しかり、海洋進出の問題も周辺国にとっては深刻な問題です。

そんな国に工場を持つのはもうやめて、国内に生産拠点を回帰すること
をすべきではないでしょうか。

今、人件費コストはかつてのような格差は無くなっています。

 

この10年で雇用者数は増加しましたが、製造業の増加はとても少なく、
宿泊業、飲食サービス業が大幅に増加しています。

福祉・介護事業も多くの就業者を吸収しています。

ようするに、生産性を高めることができる製造業の雇用者は増えず、
コロナ禍でもろに影響を受けている宿泊・飲食サービス業の雇用者が
大きく増えていることになります。

おまけに雇用者数が急激に増えている福祉や介護の分野では、賃金が低
く、待遇にも問題がある為に離職者は依然として多いのが実情です。

この社会保障費に頼る分野では、経済の良化が見込めない限り、報酬の
改善は見込めません。

そう元から構造的な問題を抱えている分野なのです。

 

生産性を高められる可能性のある製造業のような分野で、就業者をもっ
と吸収できるような社会にしていかなければ、国民の賃金は上がらない
ということになります。

コロナ禍で大変な時期ですが、もう一度この国の産業構造を国が主導し
て変えていく時期に来ていると感じています。

 

日本のお家芸である製造業には、まだまだロボット化・オートメーショ
ン化やIT化等による生産性向上の為の伸びしろが存在しています。

アイデア頼みで伸びしろが少ないサービス業を産業の柱にしておくリス
クはこのコロナ禍が証明しました。

コロナ禍で、国民の生活が困窮する中で、今一度どうすれば国民の所得
(賃金)が上がるのかを中長期ビジョンで考えていく時が来ているので
す。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。

 

 

次回の記事は、9月17日頃に投稿予定です。

コロナ第2波も感染状況がようやく落ち着きを見せています。

東京を中心とした大都市圏で一気に感染者が増えた時には、どうなる
ことかと、とても心配でした。

東京も警戒レベルを引き下げましたが、直ぐに第3波の心配をしなく
てはならないかもしれません。

この東京を中心にした首都圏の一極集中、多方面で問題であることが
再認識できたのではないでしょうか。

次回の記事では、コロナ後に首都圏に襲い掛かるもう一つの問題、

「老いの一極集中」

について皆さんと考えていきたいと思います。