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生涯現役で働く

2020年10月14日
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以前の記事では、生涯現役社会について取り上げてみました。

 

今回の記事では、その生涯現役社会に向けて国はどのような取り組みを
しているのか、そしてその取り組みの進捗についてご紹介しておきたい
と思います。

 

高齢期になると、働きたくても仕事がなかなか見つからないと悩む方々
が多い中で、国として高齢でも働ける環境の整備を進めています。

 

その取り組みは、このブログを始めた頃の記事でご紹介したことのある

「生涯現役促進地域連携事業」です。

 

厚生労働省が、生涯現役社会に向けた取り組みを実施すると宣言した自
治体に対して自治体の規模(取り組みの規模)に合わせて補助金を出す
事業です。

 

少子・高齢化が進展する中、健康で意欲と能力がある限り年齢にかかわ
りなく働き続けることができる生涯現役社会の実現に向けた取組みを国
が進めつつある中で、高齢者雇用環境の整備を目的に2016年度から進め
られてきました。

 

この制度は65歳を超えても働ける環境を整備するもので、その背景には
「少子高齢化」による生産年齢人口の減少という社会問題があります。

 

この動きは、政府が声高に謳っている「1億総活躍社会」の実践に向け
た動きであるともいえます。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes  すっかり秋らしくなりました

 

 

 

生涯現役促進地域連携事業

 

 

以下に生涯現役促進地域連携事業の概略について少しご紹介しておきま
す。(厚生労働省のホームページから抜粋)

 

 

「現在、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。
以下「高年齢者雇用安定法」という。)において、企業に対し65歳まで
の高年齢者雇用確保措置を講ずることが義務づけられていますが、企業
を退職した65歳以降の高年齢者の多様な就業機会の確保が、今後の重要
な課題となっています。

特に、平成26年には、団塊の世代全員が65歳に到達し、その多くが活動
の場を自身の居住地域等に移しているため、これらの層を含む高年齢者
が地域社会で活躍できる環境を整備していく必要があるという環境に対
応する活動です。」

 

文面からは、65歳以降の高齢者の雇用をターゲットにしているように
見受けられます。

 

これから大量退職時代を迎えるにあたって、地域の自治体にとっても大
きな課題の一つになっているこの高齢期雇用、この制度が始まってすぐ
に多くの自治体が手をあげているようです。

 

制度が始まった2016年度は一次募集で、3府県、4市、二次募集で、
5府県、3市と年度合計で15ものの公共自治体が参加表明をした後、
活動を開始していました。

 

2017年度では、4県、4市と若干少なくなっていますが、それ以降
は、各自治体とも協議会やプロジェクトを興して参加する形で参加数は
右肩上がりになっています。

 

今年度(令和2年度)開始分では、「連携推進コース」と「地域協働コ
ース」に分けて、各々13団体、19団体の計32団体が活動を開始す
る予定です。

 

このように、この制度を活用する自治体が増えている背景には、現有の
制度では高齢期の雇用を実現することが不可能な状態であるという現実
が存在しています。

 

このままいけば、おそらく一部の地域を残して、ほぼ全ての自治体が
この制度に参加することになるのかもしれません。

 

高齢化が進む中で、高齢期雇用の問題は地域にとって大きく、そして深
い問題なのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

 

事業の実態

 

 

「高齢者の活躍の場を拡げよう」という掛け声だけはよく聞くこと。

 

しかしながら、実際活躍をしているところを見たことがないという人も
多いのではないでしょうか。

 

そんな声を知ってか、この制度は厚生労働省が高齢者の活躍の場を広げ
ようとかなり本気に検討して打ち出した政策の一つだと聞きます。

 

この事業は、高齢者の活躍の場として積極的に開拓すべき「重点分野」
を設定することが要件となっているそうで、こんなところまで気にして
いるところからも本気度を感じます。

 

しかしながら、過去の取り組みの中でその分野を見ると、最も多いのが

 

「介護や医療(関連事業)」

次いで、「観光(関連事業)」

「製造業・工業(関連事業)」

 

と、まだまだ活躍の分野そのものが広まっているわけではないことも
事実のようです。

 

次に、具体的に何をしているか、事業内容を調べて見ると、

「高齢者向け」「事業者向け」「その他(共通)」に分けて推進してお
り、大きくは11の事業が行われていることを確認することができまし
た。

 

その中で高齢者向けの事業に限定して抜き出してみると、

 

①新たなセカンドライフに向けた動機付けを目的としたセミナーやシン
ポジウムを開催しているもの

②相談窓口や交流の場を設けているもの

③職業に直結する技術や資格などの養成を行っているもの

④起業の支援を行っているもの

⑤求人・仕事の開拓を行っているもの

 

上記の5事業でした。

 

では、この「生涯現役促進地域連携事業」、実際どのような取り組みを
実施しているのか筆者も少し現場を調査してみました。

 

上記⑤の求人・仕事を開拓して、企業や団体と仕事を求める高齢者をマ
ッチングしている活動を地域促進連携事業者(以下事業者)の協力を得
て見学をさせて頂く機会を得ました。

 

この事業者は、本制度に初年度から参画しており、取り組みとしては一
番長い経験を持っているので、筆者もとても期待して参加させて頂きま
した。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes 筆者の自宅にある金木犀も花が咲きました

 

 

 

この催しが行われたのは、ウィークデーの午後。

 

場所は、市の文化センターの講習室でした。

 

参加したのは、4企業・団体と応募した高齢者(市民)25名。

 

25名の内訳は、男性5名、女性20名でした。

 

事業者の職員と地域の労働局の職員を含めると総勢30名ほどの参加。

 

企業・団体の内訳は、福祉介護が2団体、設備(建物)管理が1団体、
警備が1団体でした。

 

事業者からの全体説明の後、企業・団体から事業内容の説明があり、
その後に4グループに分かれて個別説明がありました。

 

個別説明では、参加の高齢者の皆さんからの質問も受け付けていました。

 

筆者も全体が見える場所で見学をさせて頂いたのですが、やはり人数的
にも多い女性がとても積極的で、説明を聞く姿勢は真剣そのもので発言
が多かったのです。

 

女性の年齢は60~70歳代で、とても元気で働くことに意欲的でした。

 

反面、男性は消極的で発言もほとんどなく、視線は上を向くものと下を
向いてうなだれている方が殆どで、なぜかその姿がとても印象的でした。

 

男性の年齢はいずれの方も60歳代前半といったところで、会社をリタ
イヤされたばかりではないかと推察されました。

 

筆者の勝手な思い込みかもしれませんが男性の顔にはこんなことが書い
てあるように感じたのです。

 

ハローワークに行っても仕事が見つからない・・・

シルバーセンターにはろくな仕事がない・・・

期待してきてやってきたが、やっぱりこんな仕事しかないのか・・・

 

一種絶望感のような雰囲気を感じてしまいました。
(あくまでも筆者の感想です)

 

サラリーマンを長く経験した男性にとっては、目の前の現実はサラリー
マン時代とのGAPがあまりに大きすぎるのだと思います。

 

それに比べて長い間専業主婦であった女性の方が、仕事に対する違和感
を感じずに済むのかもしれません。

 

労働局から派遣されてきた職員は、企業・団体からの全体説明が終ると
そそくさと帰ってしまいました。

 

筆者はとても残念でした。

 

心の底で、「きちんと現場を見てほしい!」と叫んでしまったのです。

 

本気の政策も、現場は事業者に任せきりで、心が入らなければ、結果は
出ないかもしれないと強く感じてしまいました。

 

事業者職員の熱意と国の職員の想いにもGAPを感じました。
(あくまでも筆者の感想ですが)

 

プログラムは流れるように進み、グループ単位の説明が終ると最後には
面接の受付をして終ります。

 

事業者の職員にお聞きすると、面談に進む人はこの中で大体10人弱だ
ということでした。

 

高齢期の就労で遣り甲斐を見つけることは、とても難しいことなのだと
改めて実感させられました。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

 

また、別の事業者が運営する就労の機会を得るためのセミナーにも参加
してみました。

 

上記の事業者とは別の事業者さんが運営する活動です。

 

この内容については、本記事の続編でまたご紹介したいと思います。

 

この「生涯現役促進地域連携事業」、制度が始まって4年。

 

まだまだ課題は多いのですが、これからこの活動が更に進んでいく中で
希望が見いだせるのであれば素晴らしい活動であると感じています。

 

そのためにも、この活動を多くの方が知って、参加することが大事なの
だと思いました。

 

高齢者の皆さんにも

高齢者予備軍(55歳以上の方々)にも

そして地域の企業・団体の皆さんにも

 

読者の皆さんも、お住まいの自治体でこの活動が進められていないか
確認をしてみませんか。

 

もし活動をやっていれば、いろいろな知識を付けたり、いろいろな方と
の出会いがあるかもしれません。

 

高齢期になれば、こんな出会いから貴重な人生の財産が生まれるかも
しれません。

 

筆者もこの「生涯現役促進地域連携事業」の継続的な調査を続けてみた
いと思っています。

 

そこから生涯現役社会につながるヒントが得られるかもしれません。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。

 

 

次回の記事は、「家」について考えてみたいと思います。

コロナ禍で経済が低迷する中で、なぜか家が売れているのだそうです。

テレワークが普及する中で、家の役割が大きく変ろうとしています。

この記事でも多く取り上げてきた「エイジングインプレイス」

住み慣れた地域や自宅で最後まで住み切ることができるのか、今回の
変化はその方向性を明示してくれるかもしれません。

投稿は、10月19日頃を予定しています。

是非、お付き合いください。