高齢期でも働き続けられる未来は来るのか?
コロナ第3波の大波が全国を襲っています。
地方でも感染者数が過去最高を記録するところが続出し、知事が独自で
非常事態宣言を出せるようにすること等が検討されています。
こんな状況の中で、働く高齢者が次々に離職している業界があります。
解雇・休業・時短等の影響を受ける人が多くいる中で、人手が全く足り
ていない介護の現場です。
介護の現場の中でも、訪問介護の現場では働く人の約40%は、60代や
70代の高齢者によって支えられています。
元気な高齢者の手によって、心身が弱った高齢者を介護するという優れ
たシステムに今異変が起きているのです。
コロナに感染すると重症化するリスクが高い高齢者の皆さんが思案を
重ねた結果、離職を決断されているようです。
中には家族から心配されてやむを得ず離職した人もいるのかもしれませ
ん。
高齢期でもせっかく働ける環境を得ながら、働くことが出来なくなるの
は残念としか言いようがありません。
高齢期でも働くことは、健康を維持すること、認知機能を確保すること、
生き甲斐や遣り甲斐をもって生きていくことにつながります。
コロナの感染拡大で、こんなところにも負のスパイラルが発生していま
す。
今回の記事は、コロナの時代にあっても高齢期の方々がやり甲斐や生き
甲斐を持って働くことの大切さについて考えてみたいと思います。
画像素材:Jim Mayes 季節は秋から冬に
新たな介護離職
親の介護のために長年働いてきた会社を辞めて、住む地域や仕事も変え
る。
こんな「介護(の為の)離職」をする人は、もの凄い勢いで増加してい
ます。
安定した仕事を辞めることによって、生活苦を伴いながら親の介護を
する人も少なくないと聞きます。
とても悲しくなってしまいます。
そして、そこに加えて前述のように新たな「介護(職の)離職」も増え
ています。
60歳代、70歳代で介護職に就いている高齢者の皆さんは、実際に自身の
親の介護を経験した人が多く、そのノウハウを活かして介護職として
頑張っておられます。
3K職場の代表格とされ、なおかつ給与等雇用条件が良くない介護職は
元々から離職率が高く、人手が不足する中では高齢者の皆さんは貴重な
戦力であったはずです。
企業を定年退職すると、その年齢ゆえに不安定な非正規の仕事しか見つ
からない今の社会構造の中で、圧倒的に人手が不足している介護の分野
だけは唯一といっていいほど高齢者を受け入れている業界でした。
そんな大事な働き手が今、コロナの影響で大量に離職しようとしていま
す。
しかし、今の年齢差別がはびこるこの社会の中にはその受け皿はありま
せん。
高齢者が安心して働ける場所がまだまだ少ないのです。
コロナで政府が経済のみを重視する為に、こんなところでも大きな影響
が出ています。
経済も大事ですが、まずコロナの感染を封じ込めなければ、いろいろな
ところにひずみが出てしまいます。
もっと大きな視野で考えなければ、国民の生活が立ち行かなくなるので
はないかと危惧するばかりです。
介護だけでなく医療にも異変が
介護だけでなく、医療にも大きな変化が起きようとしています。
政府は今75歳以上の医療費(後期高齢者医療費)の見直しに着手して
います。
現在、後期高齢者医療の窓口負担は1割ですが、それを2割に引き上げ
る検討が進んでいます。
先日も与党内で調整が行われ、折衷案の方向で進んでいます。
高齢化による社会保障費の増大に歯止めがかからず、以前の記事でも
ご紹介したとおり1973年に無償化された医療費は1982年に見直され、
その後はずっと1割負担の時代が続きました。
でも、後期高齢者がこれから爆発的に増えていく状況の中で見直しを
しなければならない状況になっています。
後期高齢者の自己負担を2割にする検討案は5パターン
最新情報では200万円以上で調整が進んでいますが、選挙結果でまた
変更されるかもしれませんね
2020年度の後期高齢者医療費は約6.8兆円と巨額ですが、団塊の
世代が後期高齢者となる2025年には約8.2兆円まで膨らむことが
予測されています。
この増加により後期高齢者医療の現役世代の負担は、国民一人当たり
年額にして6.3万円から8万円に増えるそうです。
後期高齢者がこれから急増する中で、現役世代の負担も大きく増えて
いくことになりそうです。
そんな中で先日、首相の口からも、
「少しでも多くの方々に支える側として活躍してもらい、能力に応じた
負担をいただくことが必要だ」
という言葉が出ました。
能力に応じた負担をするためには、働かなければなりません。
(有り余るお金を持っている人は別にしても)
しかし現状、年齢が高齢というだけでその能力に応じた仕事ができない
現状が横たわります。
仕事を見つけるのは「自助努力」というのでは、あまりに無責任な発言
です。
今回の窓口負担率の増加について、政府は一律ではなく、年収によって
差別化するように進めているようですが、仮に年収155万円以上とし
た場合は、75歳以上の37%にあたる605万人がその影響を受ける
ことになりそうです。
当然年金を含めた年収が155万円とした場合、月額で約13万円程度。
その中から社会保険料を支払えば、生活費は自助努力に頼らざるをえま
せん。
この605万人の内、何人が働くことが出来るでしょうか?
国は社会保障費を抑えることしか考えていないように見えますが、やは
り働けるうちはいつまでも働ける制度とセットでなければ全てが破綻し
そうです。
それも高齢者がやってみたいと思う仕事でなければ、持続性も継続も
ありえません。
画像素材:Jim Mayes 厳しくても向こうに青空(希望)が見えれば
制度の拡充が必要
国も「65歳超雇用推進助成金」等の制度を設けていますが、高齢者を
雇う事業者にとっては、助成金の支給は1度だけであったり、助成金
そのものも中途半端な額でしかありません。
お金で解決するのではなく、もっと高齢者が働きやすい環境をつくる
為の制度や仕組みが必要です。
例えば以前の記事でご紹介した「ワーカーズコープ」等は良い働き方に
なるかもしれません。
65歳以上の方々が自ら出資して協同で組織を立ち上げるのであれば、
税金を一定期間減免したり、立上げ時に補助金を出したり、事業運営の
支援をしたりする方が、高齢者皆さんもやり甲斐や生き甲斐を感じなが
ら働くことが出来るかもしれません。
高齢者の皆さんがもっと前向きに働ける制度や仕組みが必要なのです。
そこには雇用される働き方ではなく、雇用されない働き方があっても
よいのではないかと思いました。
今回の記事では、少子高齢化とコロナの板挟みとなったこの社会で、
いかに高齢者の皆さんが持っている能力を活かすかを考えてみました。
読者の皆様のご意見も是非お聞きしてみたいと考えています。
今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。
次回の記事投稿は、12月23日頃を予定しています。
コロナ禍の影響で、都会から地方への移住が静かなブームになって
いるそうです。
この機会に首都圏一局集中や都市に人口が集中することを是正できれ
ば、地方再生につながるかもしれません。
次回の記事では、コロナ対策や経済対策にもつながる地方移住につい
て考えてみたいと思います。