一極集中から多極集中へ
コロナ感染拡大とその影響が長引く中で、首都圏を中心とした都会から
地方へと移住する人が、若者を中心に増えているそうです。
地方の自治体の中には、都会からの移住を推進すべく引っ越し代を補助
したり、電化製品等の生活必需品購入費の補助をするところまで現れま
した。
その補助金額はというと、50~100万円と聞くから驚きです。
自治体がコロナ感染で配布する営業自粛協力支援金よりもはるかに大き
な額です。
政府が「地方創生」と銘打って、疲弊する地方に大金をばら撒いて何と
か再生しようとしましたが、全く効果は出ませんでした。
皮肉なことにコロナの影響が「地方創生」に微力ながら力を貸している
ことになっているのです。
今回のコロナ感染拡大は、人口が集中する都市部で医療を中心に大きな
打撃を与えています。
やはり都市への人口集中、特に首都圏への一極集中は大きな問題です。
今回の記事は、日本の一極集中と地方再生について考えてみたいと思い
ます。
画像素材:フォトサリュ
地方の衰退は、(駅前の)商店街を歩けばよくわかります
ローカライゼーションは進むのか
アベノミクスは、グローバル化による経済発展を模索しましたが、イン
バウンド需要が激減したように脆くも崩壊しました。
以前の記事で、グローバリゼーションについてご紹介しましたが、その
対極としてあるのが、ローカライゼーションです。
グローバリゼーションを直訳すると、世界(規模)化。
対してローカライゼーションは、地域化とでも訳せばいいのでしょうか。
コロナ禍でグローバリゼーションのリスクの大きさを実感してしまった
今こそ、日本は真の「地方再生」や「地方創生」が可能になるのかもし
れません。
高度経済成長の時期以来、地方を切り捨ててきたこの国が本当に地方を
再生できるのか。
その再生のお手本は、以前の記事でもご紹介したドイツにあります。
以前の記事でもご紹介したとおり、ドイツには日本のような「一極集中」
はありませんでした。
ドイツの場合は、いわば「多極集中」とでも表現すればいいのかもしれ
ませんが、強い地方(街)がたくさんあったのです。
そしてドイツは地方政府が強力に地方経済を強力にバックアップしてい
ました。
日本がドイツのように「多極集中」に進むためには、何が必要なのでし
ょうか。
この「多極集中」という言葉を筆者に教えてくれたのが、京都大学ここ
ろの未来研究センターの広井 良典教授です。
広井先生もドイツの分散型の社会を「多極集中」と呼んでいいたのです。
高齢になっても安心して働ける街
ドイツは、年齢や人種、性別に関係なく誰もが働ける制度を確立して経
済を復活させました。
地方に仕事がなければ、地方創生等ありえません。
筆者は今まで地方創生を議論する場に多く参加しましたが、そこで論議
されていたのは交通機関の整備や交通手段の確保といった経済基盤の論
議が中心で、仕事の話といえば農業や小規模な環境エナジー事業くらい
でした。
その農業も就業者の平均年齢が10年ごと(調査する度)に10年上が
るありさまで新規就業者がほとんどいない状況です。
それも新規就業者に長期間多額の補助金を出してもこんな状態なのです。
あるところでは、研修期間2年+実働期間5年、計7年で補助金額が、
1000万円を超えるにも拘わらず新規就業者が増えない実態がそこに
はあります。
地方では、人・モノ・金の循環ができていないのです。
地方で人がモノと金を生み出すことが出来なければ、地方創生は夢の
ままです。
地方を再生させる為には、価値を創出する循環が必要です。
その為にも、まず仕事(雇用)を生みださなければなりません
話を東京に戻すと、なぜ東京はこんなに大きくなったのでしょうか。
それは東京には多くの人が携わることができる仕事があったからです。
その仕事はより良い生活を保障してくれるものであったのです。
だから今でもより良い生活ができる仕事がない地方から首都圏を目指す
人が絶えないのです。
そんな首都圏や大都市をコロナが狙い撃ちしました。
アフターコロナの時代は、今までと産業構造は変わってしまうかもしれ
ません。
人の移動が激減すれば交通機関の仕事は減ります。
政府は必死に観光業界や飲食店を守るべく大きなリスクを冒しながらGo
Toを進めましたが、当初の皮算用どうりのインバウンドはもう期待でき
ません。
アベノミクスが目指した見せかけのお金の経済でもなく、インバウンド
に頼った需要でもなく、本当に必要な仕事を作り出すことが大事です。
それを地方で創り出す。
世界最速で高齢化が進むこの国で大事なことは、いくつになっても安心
して働ける環境、いくつになっても社会に貢献できる環境の整備です。
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コロナが、東京一極集中の課題を明確に浮き彫りにさせました
新しい革命に乗る
といっても地方で主要産業を創り出すことは簡単なことではありません。
今まで通りの企業を中心とした経済活動は、今回のコロナのような外的
な影響をどうしても受けてしまいます。
だからこそ地方で創り出す仕事は、生活に根付いた仕事だと筆者は思い
ます。
そのヒントを前述の京都大学 広井先生が教えてくれました。
高度経済成長期が工業化の時代であれば、その後インターネットの普及
とともに訪れたのは情報革命でした。
そしてその次に来るのは「生命革命」だと先生はおっしゃっていました。
①健康・医療
ここには介護等の高齢化対応や生活支援が含まれます。
超高齢化を解決する秘策は超健康立国だとも言えます。
②環境(自然エネルギー)
地熱や風力といった資源を地方は持っています。
ある意味で地方は環境エネルギーの宝庫なのですが、事業にはお金も
必要です。
③生活・福祉
①と重複するかもしれませんが、日本の高齢化対策のノウハウには価値
があります。
④農業
かつてこの国の主要産業は農業でした。
改革の伸びしろが一番大きな産業であり、今ならまだ豊富なノウハウが
蓄積されています
そして真剣に取り組めば、IT化やロボット活用の効果も大きいかもしれ
ません。
⑤文化
インバウンドで日本を訪れた外国人の一番の興味はこの国の文化です。
健康的な食文化、伝統芸能(忍者も人気でした)、時には猛威を振るい
ますが美しい自然。
地方だからこそ見直すことがたくさんあります。
広井先生が示したくれたこれらの産業を地域主導で立ち上げることが
できれば、地方再生の道筋が見えてくるかもしれません。
上記の5つの事業は、「生命関連産業」ともいえるかもしれせん。
これからこの国の経済をこの生命関連の産業が支えることになるかもし
れないのです。
そして、この産業をベースに協同で年齢や性別に関係なく誰もが安心し
て働くことができれば地域は復活するかもしれません。
その為には、地域に住む人のライフデザインそのものを変えていく必要
があるのかもしれません。
このライフデザインの見直しは、記事で読者の皆様とともに考えてみた
いと考えています。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回の記事は、12月28日頃に投稿予定です。
年末のお忙しい時期となりますが、是非お付き合いください。