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非正規を考える

2021年10月30日
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大きな選挙になってようやく政治家の皆さんが騒ぎ始めました。

 

非正規が全体の40%になるまで放置した政治の責任は大きいと思いま
す。

 

非正規容認に大きく舵を切り、製造業にまで広げた2006年、当時の小泉
総理はハッキリと公言していました。

 

「格差は悪い事ではない」と。

 

今、どう思うのか是非お聞きしてみたいものです。

 

よく、「自民党をぶっ壊す!」と叫んでいましたが、結果として国民の
生活をぶっ壊したのですから・・・

 

その頃の状況は筆者もよく覚えています。

 

2008年に世界を震撼させたリーマンショックによる不況が非正規を加
速させていました。

 

当時、事情があり、毎週末深夜バスで首都圏と関西を往復していました。

 

その格安の深夜バスには非正規の方が多く乗車していたのです.

 

狭いバスの中で、ヒソヒソ声で話す内容を聞いていると、非正規で働く
若者であることがわかりました。

 

深夜バスに乗ったことがある方はご存知かと思いますが、マナーの悪い
オジサンやディズニーランドやUSJに遊びに行く若者等他人に迷惑をか
ける人が少なくありません。

 

そんな中でも、非正規で働く若者は礼儀正しく、周りに配慮ができる好
青年が多かったと記憶しています。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes 若者が上を向いて希望が持てる時代になれば

 

 

彼らの話に耳を傾けていると、苦しい状況がよく理解できました。

 

不景気で非正規の仕事ですら見つけるのが大変になったよ・・・

求人の多かった首都圏ですら求人がみつからない・・・

残るは自動車産業しかない だから愛知に行くことにしたよ

寮がないと生活ができない 寮付きの仕事を探しているんだけど・・・

非正規じゃぁ~ 結婚できそうにないなぁ・・(苦笑)

 

 

こんな切実な会話を聞いていると、自分の事のように沈んでしまいます。

 

この深夜バスで移動していた2か月の間、多くの非正規の若者の話を聞
いて筆者が素直に頭の中に想い浮かべた言葉は、

 

 

俺は(たくさんお金もらって、居場所があって)幸せな時代に生きてこ
れたんだな~

こんな状態を放置しておいて本当にいいのだろうか?

若者の未来を明るくするために自分には何ができるんだろう?

こんな状況が続けば(自分の)子供達や孫の時代にはいったいどうなる
んだろう?

これは決して他人事ではないと。

 

そして、こう思ったのです。

 

この国の将来を担う若者や子供が、自身の将来に希望が持てないという
ことは、この国の将来に希望がないということだよな・・と。

 

この現実を国民一人一人が真剣に考えないといけないのだと。

 

そして、株価は上がったとか、失業率が下がったとか綺麗ごとばかりを
並べ立て、本来守らないといけない国民の真の姿をみようともしない政
治家はもう要らないのです。

 

必要なことは、現実を変えて、国民に希望の光を見せてあげることです。

 

これから、そんな政治家が出てくること望むばかりです。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

 

最低賃金で生活するということ

 

 

筆者は高齢社会の勉強の為に多くの福祉施設で、低賃金で働く非正規の
職員の方々を見てきました。

 

地方にある大型施設では、管理者もしていましたので、経営にも携わり
ました。

 

当然のことながら、職員の給与にも深く関与することになったのです。

 

そして、100人近くいる職員の給与明細を初めて見た時に自分の目を
疑いました。

 

その時の正直な感想は、

 

“こんな薄給で生活は成り立つのだろうか?・・

 

という驚きにも近いものでした。

 

当然のごとく、職員の約60%は非正規です。

 

そして、非正規の職員の殆どが最低賃金だったのです。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes
非正規で働く人はこの日本の社会をどのように思っているのでしょうか

 

 

 

さすがに家に戻っても気になって、計算してみました。

 

最低賃金単価861円×基準労働時間8時間×23日
(慢性的な人手不足で月8休、土日祝日はありません)

 

手当等は関係なく単純に計算すると、158,424円になります。

 

3K職場の代表としてとてもキツイ仕事ですが、これだけなのです。

 

ここから税金、社会保険、住宅の賃貸料、公共料金等を差し引くと僅か
な食費しか残りません。

 

子供がいる場合は、ここからその諸経費がマイナスされます。

 

やはり、これでは生活が成り立ちません。

 

更に問題なのは、職員の約80%は女性ということです。

 

そして、その大半がシングルマザーなのです。

 

ということは、この薄給が世帯としての生活の基盤ということになりま
す。

 

 

地方の離婚率は、都会と比較して高く40%の後半というところも少な
くありません。

 

とても心配な女性がたくさん働いている職場であることが、よく理解で
きました。

 

離婚して、生活基盤を失くした女性がすぐに職を見つけられるのが、常
に人手不足に悩む介護現場だったということなのです。

 

弱い立場の女性が3Kで薄給の介護現場へと追いやられる実態がよくわ
かりました。

 

 

介護や医療の場合は、サービスの報酬は国によって決められています。

 

介護施設の場合、収入は介護保険料と施設利用料に限られますが、介護
保険料は社会保険料の高騰によって今後上がることは難しく、下がる可
能性の方が高いといわれています。

 

ようするに、職員の給与を上げる為の「のり代」が少ない構造的に課題
を抱える職種なのです。

 

 

今後も、仕事の構造を大きく変えていかないと将来に希望が持てない薄
給の非正規職場に、弱い立場の女性や若者が追い立てられていくことに
なります。

 

弱いものがさらに弱く、厳しい状況に追いやられる。

 

日本の格差は、収入だけでなく立場の格差へと広がりつつあります。

 

非正規が格差を生み、その格差の構造は複雑化しながら拡大しています。

 

非正規にメスを入れない限り、この負のスパイラルは膨張を続けるので
す。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes

 

 

 

資本主義の危機

 

 

高度経済成長期でも生活は厳しい時はありました。

 

でも、以前の記事でも申し上げたとおり、明日は今日より良くなるとい
う実感だけでなく、一生懸命頑張れば食える時代でした。

 

一生懸命働けば食えた時代から、どんなに頑張っても食えない時代へ、
希望が見えない時代へと向かいつつあります。

 

それはどうやら日本だけではなさそうです。

 

格差の問題が爆発寸前の米国、そしてそのお隣りのメキシコでも同じよ
うです。

 

メキシコでは国立大学を出ても、非正規(人材派遣)の仕事しかないの
だそうです。

 

薄給の為、大学を出ても自立ができず、親の家にお世話になり続けない
と生活ができないそうです。

 

メキシコ政府はとうとう「人材派遣(非正規)禁止令」を出しました。

 

政府が設定した期日が迫る中、企業の対応に国中の労働者が注目してい
ます。

 

非正規の社員が正社員化されるのか、それとも解雇の嵐となるのか。

 

 

 

 

画像素材:Jim Mayes
企業は利益を上げているのに、働く者の多くは薄給、お金はどこに行っ
たのでしょうか

 

 

 

今、欧米を中心とした先進諸国は中国の社会主義経済と対峙し、資本主
義を守ろうとしていますが、足元を見ると格差の問題でその資本主義が
崩壊の危機に瀕しています。

 

格差が資本主義そのものを脅かしているのです。

 

その格差の主因は非正規です。

 

非正規をこのまま放置すべきではありません。

 

非正規に頼るこの国の経済構造を見直すことこそ、失われた30年の主
要因を明確にし、再びこの国を成長へと導く近道になると考えています。

 

そして、それはこの国の国難ともいえる少子高齢化への特効薬にもなり
えるのです。

 

若者が結婚できる社会

若者が将来に希望を持ち、安心して子供を産み育てることが出来る社会

高齢になっても、健康を維持して可能な限り働き続け、社会を支える側
に居続
けられる社会

 

そんな社会を望む時、薄給の非正規を社会から消し去るべきです。

 

 

筆者は、小泉元総理にお聞きしてみたい!

 

「格差の何が悪くないのか?」

 

「非正規を容認したことは本当に正しかったのか?」

 

政治家は選挙公約を並べ立てるだけではなく、自分の口から発した言葉
について責任を持つ時代が来たのだと思います。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。