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腐っていないか?日本の雇用システム

2022年04月16日
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先日あるポスターに目が留まりました。

 

そのポスターには、「最低賃金を守りましょう!」と書かれていました。

 

地元兵庫県の最低賃金は928円です。

 

月160時間働いても15万円にも満たないお金です。

 

ここから家賃や光熱費等の公共料金や健康保険等の社会保障費等を差し
引くと僅かな生活費しか残りません。

 

これで子供や家族を養うことは不可能です。

 

なぜ、生活ができない金額が設定されているのかがよくわかりません。

 

更にこの国ではもう20年以上賃金は上がるどころか下がり続けていま
す。

 

若い人が結婚して子供をもうけることを諦めるのも無理はありません。

 

この国の少子化対策は、なぜかピントが完全にズレています。

 

ハローワークが公開する求人には、最低賃金が溢れています。
(求人票には928円ではなく、殆どが930円ですが・・)

 

あろうことか、自治体が出す求人にも最低賃金に近いものが多い事には
驚かされます。

 

血税を職員に注ぎ込んでおかせながら、市民を最低賃金で雇うのかと怒
りさえ感じます。

 

最低賃金さえ守れば何をしてもいいのかと。

 

筆者は思うのです。

 

この国の雇用システムは完全に腐っていると。

 

 

 

 

何気なく見るポスターも真剣に見れば疑問が湧いてきます
出所:日本労働組合総連合会兵庫県連合会のHPより印刷

 

 

 

フレキシュキュリティという概念

 

 

なぜこんなことになっているのかという疑念とともに諸外国ではどんな
システムになっているのかと調べてみることにしました。

 

そんな中で聞きなれない言葉を見つけました。

 

その言葉は、フレキシュキュリティ。

 

英語の安全を意味するフレキシビリティ(Flexibility)と
安全性を意味するセキュリティ(Security)を組み合わせてできたもの
らしいのです。

 

労働者の生活を安定させる為の雇用の柔軟性を図る政策を指してこう呼
ぶのだそうです。

 

経済成長が鈍化して雇用問題に直面した欧州を中心に広まったこの概念
について少しまとめてみようと思います。

 

まず、雇用の柔軟性という難しい言葉が出てきました。

 

雇用の柔軟性とは、解雇規制の緩和や手厚い失業補償の給付により、働
く人が安心してプライベートも両立しながら、次の職場を探すことがで
きる仕組みのことを指すようです。

 

解雇規制を緩和してはいますが、決して企業側に従業員の解雇を促す為
の制度ではなく、景気後退時の企業保護と労働者にチャレンジ意欲を湧
かせる為の制度のようなのです。

 

この国ではバブル崩壊以降の景気後退時に雇用確保の為に、労働条件の
悪化を許したことが長期間の賃金低迷を招いてしまいました。

 

今考えると、本当に雇用確保が一番重要だったのかという疑問が残りま
す。

 

もっと違う方法があったのかもしれないと。

 

解雇規制を緩和し過ぎてしまうと、景気が後退すれば失業率は大幅に高
まることになります。

 

でも、労働者保護ばかりを重視すると、結果的に経営の悪化と共に労働
条件の悪化による労働者のモチベーション低下を引き起こす可能性が高
くなるかもしれません。

 

雇用規制を緩和しつつ、失業対策等の強化による労働者保護に努める。

企業側、労働者側のどちらにもメリットをもたらすような政策がないか
という検討からこのフレキシュキュリティという概念は生まれたようで
す。

 

この概念、とても説明が難しい為、まず外国の導入事例を紹介しながら
読者の皆様と一緒に考えて行きたいと思います。

 

まず、取り上げるのは以前の記事でもご紹介したことのある北欧の福祉
大国デンマークの事例です。

 

 

 

画像素材:PIXTA 度々記事で取り上げているデンマーク
日本が手本にすべき国の一つかもしれません

 

 

高齢者福祉にも優れた同国は雇用システムでも優れたシステムを保有し
ているようです。

 

デンマークのフレキシキュリティ制度は「黄金の三角形」と呼ばれてい
ます。

 

その特徴は次の3つです。

 

解雇しやすい柔軟な労働市場

 

この日本では長く続いた日本型雇用システムの影響もあって今までは解
雇は非常に難しい状況でした。

 

しかしながら、企業は解雇ではなく(半強制的な)「希望退職」「早期
退職」という手段で結果的には社員を解雇し続けています。

 

結果として、辞めざるを得なかった希望退職や早期退職した人たちは、
なかなか再就職ができない環境で苦しむことになったのです。

 

それに比較して、デンマークでは解雇もしやすいが、再就職もしやすい
環境を創っていると言えます。(再就職システムについては後述)

 

手厚い失業手当

 

驚くべきことにデンマークの失業手当は、前職の給与の約9割の額を保
障しながら、最長4年間も支給することになっていました。

 

日本では、失業手当には上限が課せられていて、筆者の場合は前職の半
分にも満たない残念な内容であったことをハッキリと覚えています。

 

再就職した際の賃金差を埋めるシステムはありながら、そのシステムは
失業手当を受け取ると使えないようになっています。

 

言葉が適当ではないのですが、正直「しみったれ」です。

 

加えて最長4年には驚かされました。

 

4年あれば、落ち着いて仕事を探せます。

 

その間、前職の9割の手当が保障されるのも大きいですね。

 

この国の雇用手当は原則最長5か月です。

 

再就職が厳しいこの国で5か月は正直厳しく、良い仕事を見つけること
ができない環境と言えます。

 

長い間続いた終身雇用の影響もありますが、化石のように古臭くて残念
なシステム
です。

 

充実した職業訓練プログラム

 

先に言っておかなければならないのは、デンマークでは大学や職業訓練
に通うのもお金がかかりません。

 

日本のように大学は高額、職業訓練もお金がかかる、かからない場合で
も審査が面倒で条件があるような事ではないのです。

 

そして、日本でいう義務教育が終わると、高等教育へ進むのか、それと
も職業訓練校に進むのかを本人の意志で選択することになるのです。

 

要するに日本のように失業したから、ハローワークに行って職業訓練を
受けるという事とは全く次元が異なっていて、職業訓練が日常に根付い
ているようです。

 

その職業訓練は、専門分野が300以上もあり、職業プログラムも10
0を超えるというから驚きです。

 

日本のハローワークが紹介するプログラムは手で数えることが出来ます。

 

根本的に風土と文化、そしてシステムが違い過ぎると感じました。

 

日本のように知名度の高い大学に入り、大きな企業に入社して、その会
社で長く働くという文化が醸成されたところでは、なかなか再就職シス
テムの要である職業訓練システムは根付きません。

 

デンマークの職業訓練教育はまさに生きていくための教育であるのに対
して、日本の教育はまだ知識偏重型で生きていくためのものではないと
感じました。

 

終身雇用が基本であった日本では再就職システムは脆弱であっても良か
ったのですが、終身雇用と年功賃金が完全に崩壊しようとしている今だ
からこそ再就職システムの再構築が必要であると感じます。

 

また、デンマークでは在職者向けの教育訓練にも力を入れており、失業
予定者(表現が適切ではありませんが)が特定企業や業界でなく他の労
働市場でも活躍できるようスキルを習得する制度をも整えているようで
す。

 

このように、フレキシキュリティの効果を発揮させているデンマークの
取り組みは企業の雇用状況が貧困化していくこの日本においてとても参
考になるものかもしれません。

 

下図にデンマークの雇用政策(システム)を筆者が参考資料を元にまと
めてみました。

 

こうしてまとめると、国の産業に刺激を与えながら、財政を健全化させ、
経済成長を促すことが可能なシステムであることがよくわかります。

 

手厚い失業給付が、労働者の失業の恐怖を和らげています。

そして充実の職業訓練プログラムを受けないと失業給付が受けれない仕
組みにもなっています。

その背後には、「国がしっかりサポートするからあんたもしっかり頑張
りなさい」というメッセージがあるような気がしたのです。

結果的に、解雇が怖くない労働市場が出来上がり、陳腐化して成長性の
なくなったゾンビのような産業を整理することもできます。

国策として成長分野への人財投資(シフト)ができるわけです。

 

自由競争に任せきり、格差を放置した結果、日本の労働者の価値はどん
底まで落ちようとしています。

 

今一度、この国の雇用システムを考え直すべき時に来ているのではない
でしょうか。

 

 

 

 

解雇を嫌う風土

 

 

日本の企業では労働組合の衰退が顕著で、会社側との交渉では雇用を守
る為に賃上げは諦める、早期退職や希望退職もやむなしという状況が長
く続きました。

 

会社側も労働者側も解雇という2文字を極端に嫌い、恐れてきた為にお
互いが我慢の連続だったのです。

 

ここで、上図で示したデンマークの雇用システムと対比する意味で日本
の現状を図式化してみました。

 

 

 

 

 

 

日本の雇用システムは、高度経済成長期の右肩上がりで殆どの労働者が
企業で長く働き続ける環境下で出来上がったものがベースです。

 

その為、主要産業が成熟化(陳腐化)しても新しい産業を興すことがで
きていません。

 

結果として、低生産性のサービス産業を中心とした産業構造に変わらざ
るを得なかったのです。

 

国策として新しい産業に人材を投資(シフト)することが出来ない上に、
陳腐化した産業内に大量の余剰人員を解雇できないまま放置することに
なったのです。

 

そして解雇を嫌う(労働者/組合/社会の)体質が大量の早期退職や希望
退職を生むことになり、訓練を受けることなく低賃金労働市場に放り出
される労働者が増えました。

 

そして、その結果として社会保障費が増えていくのです。

 

貧困が蔓延していくのです。

 

加えて、この国の企業が疎かにしてしまったことがあります。

 

それは以前にも記事にしたことのある社員の教育です。

 

社員教育にはお金と時間がかかります。

 

でも、この教育こそが社員にも大きな起爆剤になっていたと感じていま
す。

 

会社生活が40年から50年になろうとしていく中、一つのスキルで乗
り切るのは難しくなりました。

 

人生にセカンドステージがあるように、会社生活にもセカンドステージ
がある時代がきたのかもしれません。

 

そのセカンドステージにはどんなスキルが必要なのかを社員も自ら考え
る必要があるのかもしれないのです。

 

だからこそ、社員教育が必要で、その後自分自身の努力も必要になって
きます。

 

以前の記事で、日本人は大学を卒業すると勉強をしなくなるという海外
比較の統計数値をご紹介したことがあるのですが、確かに諸外国では社
会人になってから大学等での学び直しをしている人が多いのが実態です。

 

長くなった社会人人生を乗り切る為にどんな勉強をしていくのかを在職
中に考える時代になったのかもしれません。

 

 

筆者がセカンドライフを目指して学んでいたところには立派な銀杏の木
がたくさんありました
この銀杏の木のように大きく社会に貢献したいと思う日々でした

 

 

フレキシュキュリティの本質

 

 

今迄フレキシュキュリティの概念に触れてきましたが、なぜデンマーク
をはじめとする欧州の国々がこの概念に注目しているのか。

 

それはこの国の課題でもある経済成長をどのように促すのかという点で
す。

 

この国の雇用システムは、前述したように他のシステム同様高度経済成
長期に確立したものがベースになっています。

 

この陳腐化した雇用システムでは、上述の雇用の柔軟性を想定していま
せん。

 

長い間、終身雇用と年功賃金という労働力確保の為の施策によって、新
卒で入社してから同じ会社で定年まで安定雇用を保障することが当たり
前とされてきました。

 

しかし終身雇用制度では、自身のキャリアアップやスキルの転身等の努
力(チャレンジする意欲)を生み出しにくくなります。

 

終身雇用制度が崩壊しつつある中、ネット上では転職サイトが幅を利か
せるようになり、多くの社会人が自身のキャリアアップの為に転職を前
向きに考えるようにもなってきました。

 

このまま雇用の柔軟性が高まり、この国に長く居座った文化が崩れてい
けば、新たな雇用システムが定着し、経済成長が促される可能性はあり
ます。

 

長引く新型コロナウイルスの影響もあり、在宅勤務や地方移住が広がり
つつあります。

 

ただ、大きな環境変化は(生活の)不安も募ります。

 

フレキシキュリティが実現すれば、失業後の生活に困ることはなく、前
向きに転職活動を進めることができるでしょう。

 

筆者はこのフレキシキュリティ、日本にもあったシステムかもしれない
と思っています。

 

少子高齢化が進む中で、親の介護等で介護離職する人は増え続けていま
す。

賃金が上がらず、
最低賃金で働く非正規が増え続け、
その為の未婚化や晩婚化、
そして出産年齢人口の高齢化、
減少していく年金等々

人生が長くなった為に高齢期迄働き続ける必要が出てきました。

 

本当は、非正規雇用をはじめとする格差の問題は根本的に解決が必要で
す。

 

ただ、解決には時間もかかります。

 

人生100年時代に長期的なビジョンで自分のキャリアと向き合う為に
も必要なシステムなのかもしれないのです。

 

今迄の安定雇用の時代はもう終わるのかもしれません。

 

悩んでいても仕方がなく、新しい働き方を模索していく意味でも、国に
考えて欲しいシステムといえるのかもしれないのです。

 

デンマークと海を隔てた隣国のオランダではフレキシキュリティの導入
により、失業率の低下だけでなく、財政赤字の解消も実現しているよう
です。

 

長い間、財政改善を叫びながら毎年多額の国債を発行するこの日本。

 

オランダにこのシステムが導入されたのが 1999年だそうです。

 

このシステムを導入したのが、同国が初めだということですので、導入
国は20年近くかかってこのシステムの安定化を図ってきたようです。

 

財政の健全化と経済成長の為にも勉強する価値はあります。

 

岸田総理の「成長と分配」には中身がありません。

 

このようなシステムの導入検討が急務のような気がしてなりません。

 

この国の将来を担う若者の為にも・・・

 

今回の記事も最期まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

今回の記事で投稿させて頂いた記事が200記事となりました。

ここ迄続けてこれましたのも、読者の皆様のお陰と心より感謝申し上げ
ます。

これからは、本ブログサイト上でもっとたくさんの情報を読者の皆様に
ご提供できるようにしていきたいと考えております。

その詳細は近々にトピック欄にてご案内をさせて頂く予定です。

 

これからもagefriendlyブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。