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年金はどれくらい目減りしていくのか?

2022年05月21日
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コロナ対策やウクライナ戦争に端を発する原料価格高騰。

 

そしてそこに円安という新たな問題が加わり、この国の借金は増えてい
くばかりです。

 

そんな中、とても心配になるのが年金給付問題です。

 

先日の記事で支給額が減額されるとお知らせしたばかりですが、いった
いどれだけ減っていくのかということは、既に支給を受けている世代だ
けでなく、これから支給を受ける世代の方にとっても大きな心配事です。

 

今日の記事は、その心配ごとにスポットを当ててみたいと思います。

 

 

画像素材:フォトサリュ
なんとも言えない重苦しい不安が覆う時代になってしまいました

 

 

年金問題には2つの問題が存在する

 

 

年金には制度設計上の問題と制度運営上の問題がありますが、設計上の
問題の中にも2つの問題があります。

 

一つ目の問題はタテ(縦)の問題と言われる世代間の問題です。

 

年金受給世代の年金は現役の若い世代が賄っています。

 

ようするに現役世代が高齢期の世代を年金という形で支えているわけで
す。

 

若い現役世代からすると自分たちが高齢期になったらもらえるかどうか
わからない年金をなぜ高齢期の世代の為に稼ぎ出さなければならないの
かという不満が残ります。

 

将来への漠然とした不安がその不満を増幅させているのは事実です。

 

でもよくよく考えてみると、若い世代は子供の頃の義務教育をはじめ様
々な恩恵を高齢期の方々から受けていたのです。

 

高齢期の方々がまだ現役であった頃に稼ぎ出してくれたものの恩恵を受
けていました。

 

要するに「支え合い」なのです。

 

でもどうしてもこの年金受給という点だけにスポットを当てると不公平
感が出てしまいます。

 

二つ目の問題は、ヨコ(横)の問題です。

 

これは世代内の不公平を表しています。

 

高齢期の皆さんの現役時代のサラリー(収入)額によって年金が違うこ
とによる不公平が起きているのです。

 

現役時代の給与が高い人=年金をたくさんもらえる人ということになり、
給与が低かった人との格差が生じてしまいます。

 

ようするに支払った額が大きければたくさんもらえるということです。

 

これはある意味仕方がない事なのですが、今日の主題でもあるように、
年金がこれから減っていくとなれば深刻な問題へと発展していく可能性
があります。

 

今現在の年金受給世代でも年金だけで生活はできていません。

 

年金以外の2000万円~5000万円必要になると聞くと不安でたま
らなくなるのは仕方がない事かもしれないですね。

 

 

年金には縦と横の問題が存在しています

 

保険料率はもう上げられない

 

 

サラリーマンの方は給与明細をもらう度に疑問に思ったことがある筈で
す。

 

社会保障費が年々高くなっているのではないか・・・

 

そうそのとおりです。

 

先日、大企業の社員が加盟する健康保険組合連合会が、健康保険料率が
過去最高になったと報じていました。

 

給与明細を見ると驚きの数字が総額から天引きされているのです。

 

ただ、年金の保険料率に限っていうともう上限に達していて上げられな
い状況なのです。

 

今迄、増え続ける年金受給額に対応する為に、保険料率を上げながら対
応をしてきました。

 

その数値は、制度が発足した1942年当時で約5%であったものが、

戦後一旦下がり、

1960年くらいからはひたすら右肩上がりで上昇してきました。

 

そして、

 

2003年には、13.6%

 

2017年には18.3%で固定されてしまいました。

 

これ以上あげると生活ができないという限界ラインに達しているのです。

 

賢明な読者の皆様ならもう理解できた筈です。

 

そうです。

 

もうこれからは受給額を減らしていくしかないのです

 

 

出所:厚生労働省 年金財政ホームページより引用 保険料率は上限

 

 

どれくらい目減りするのか?

 

 

それでは、どれくらい目減りするのでしょうか。

 

筆者が調査しても様々な数値が出てきます。

 

その数値が一番影響を受けるのが経済状態です。

 

円安がこれ以上進むと国の経常収支は更に悪化し、円そのものの信頼が
低下して、負のスパイラルに落ち込む可能性すらあります。

 

楽観視できない状況で、専門家の中には経済状態が最悪の場合を想定す
ると、2050年くらいには受給額がマイナス40%になる可能性もあ
るとする専門家もいます。

 

筆者は無責任なことを言える立場ではないのですが、それが事実になっ
た時には多くの方々の高齢期の生活は破綻しかねません。

 

現役時代の賃金が低いとその影響も大きくなることを考えると、弱い立
場の人が更に弱い立場に落ち込んでしまう可能性があります。

 

 

画像素材:いらすとや
年金の受給額が下がると高齢期の不安が増すばかりです

 

それ以外にも課題が

 

 

現在、年金財政は健全化の途上とも言えます。

 

今年も2年連続で減額になりましたが、年金改定率にはこれからも様々
な要素が介入してくる可能性があります。

 

先日の記事でもご紹介したように景気・物価・現役世代の賃金動向等を
調整するマクロ経済スライドのような機能が使えなくなることも想定さ
れます。

 

欧州でのウクライナ戦争の長期化、中国のゼロコロナの影響等で世界経
済自体が大きく縮小する可能性もありうるのです。

 

我々市民も、年金財政健全化の動向をしっかりと見極める必要があると
いえます。

 

 

目減りにどう対抗するのか

 

 

どうやら年金の目減りは防げそうにないようです。

 

それではこれから対抗策について考えてみたいと思います。

 

実を言うと、政府はこの目減り対策を既に実施しようとしています。

 

読者の皆さんも政府がパートへの厚生年金(2階建て)加入を検討して
いるという話はご存知の筈です。

 

筆者も最初は政府が年金財源(積み立て金)を増やす為に検討している
と思っていたのですが、実はそうではなさそうです。

 

サラリーマンの配偶者の多くがパートで働いているので、その配偶者が
新たに厚生年金に加入することで世帯単位での年金受給額を上げようと
検討をしているのではないかとも考えられているのです。

 

ようするに、本当の狙いは基礎年金の目減り対応という可能性が高いの
です。

 

サラリーマンだけでなく、1階建ての基礎年金しかない自営業の配偶者
を狙った策である可能性もあるのです。

 

基礎年金については読者の皆様も記憶に残っていると思うのですが、過
去に組織管理上の問題、そして運用の問題と様々な問題があり、一時期
基礎年金は大きく傷んで(減損して)しまった経緯があります。

 

 

社保庁の時代から数えきれない程の不正と不祥事を繰り返してきた年金
機構。その結果で国民の積立金は大きく棄損してしまいました

 

 

自営業等の基礎年金加入者が老後に厳しい局面に立たされる可能性が高
い為になんとか年金額を増やしたいという狙いが透けて見えます。

 

年金受給額が目減りするのは必至。

 

だから何とか増やす策を考える。

 

ある意味自然な発想です。

 

目減りする可能性は、基礎年金だけではありません。

 

基礎年金(一階部分)と厚生年金(二階建て部分)の双方で目減りの可
能性があります。

 

これも専門家によって予想数値が違いますが、(30年後までには)

 

厚生年金は2割減

基礎年金は3割減

 

の範囲で目減りの可能性があるそうです。

 

話しが脱線してしまいましたので、また対応策に戻ります。

 

パートへの厚生年金加入対策以外にも対応策は大きく2つあります。

 

その一つが、政府が盛んに受給予定者にお願いしている繰り下げ受給で
す。

 

需給開始年齢を一か月遅らせることにより0.7%受給額が上がってい
く仕組みを活用して、目減りしても需給を遅らせて、その分を取り戻す
という作戦です。

 

政府の都合の良い戦略でもありますが、結果として目減り分が吸収でき
る可能性はあります。

 

繰り上げ受給の為には、受給年齢になっても自分で働くことが求められ
ます。(資産が十分ある人は別ですが・・)

 

この方策の為には、健康を維持して、働き続けるというある意味難しい
個人の努力目標が実現されなければなりません。

 

二つ目の方策は、お金に働いてもらうことです。

 

保有する資産に働いてもらって(運用するということ)お金を増やすの
です。

 

当然のごとく働いてもらう為のお金の確保が必要です。

 

老後の貴重な資金である退職金ですから、先述の年金運用のように失敗
は許されませんが…

 

「年金は目減りしますよ!」

 

「だからしっかり働いて受給を繰り下げてくださいね」

 

「そうすれば目減り分は解消できますよ!」

 

とても都合の良い考え方ですが、悲しいかな今はこれしかなさそうです。

本当に悲しくなりますが・・・

 

 

 

 

 

繰り下げ方法も工夫ができる

 

 

こんな都合の良い政府の方策ですが、ある程度の柔軟性はあるようです。

 

・基礎年金と厚生年金とに分けて繰り下げができる

 

・本人と配偶者とを分けて繰り下げができる

 

働く年齢や収入額、そして資産額に合わせて柔軟に対応ができるという
ことになります。

 

もう一つ、年金受給時期で大きな課題でもあった、受給年齢を超えて働
くと受給額が減らされるという規制の緩和を政府は進めています。
(一部今年度から実施済み)

 

受給を繰り下げて、長生きできるかどうかはわかりません。

 

筆者の家系のように早死の場合は、総受給額で大損をする可能性があり
ますが、人間死ぬ時期を予測することはできません。

 

今は政府の誘導策に乗るしかないのかもしれませんが、受給開始時期は
あくまでも本人の判断次第です。

 

自営業かサラリーマンか、大企業で高給取りだったか中小企業だったか
によって条件が大きく変わります。

 

その人に合った年金政策を考える時が来たのです。

 

今後も年金運営がうまくいかないと、消費税が上がる等の増税の可能性
が高まります。

 

年金がある程度の額に維持できたとしても生活はますます厳しくなるか
もしれません。

 

その為にも、正しく知って、正しく対応をしていくしかないのです。

 

 

これからも年金については、記事で取り上げてみたいと思っています。

 

 

今回の記事も最期まで読んでくださり、感謝申し上げます。

 

 

mattoco(マットコ)