不安との闘い
後半に入った統一地方選挙の投票率がパッとしません。
あれだけ宣伝しているにも拘わらず、上がるどころか下がっています。
投票に行かないのは(選挙に対して)無関心なのではなく、この国の将
来を諦めている人が多いのではないかと思うことがあります。
ある意味この国の将来を予想できているともいえるのかもしれません。
選挙の争点の一つでもある少子化対策も財源をどうするのかという点で
結論がなかなか出ません。
筆者は、子供手当(出産費用も含めて)を増やしたり、夫の育休を取得
しやすくしても子供の数は増えないと思っています。
若い世代は将来の不安ゆえに、結婚や出産を回避していると思えるから
です。
国は一部の層の国民しか見えていないようです。
政府は今迄対策として欧米に倣って様々な対策をしてきましたが、日本
とは事情が異なっているような気もします。
欧米は女性の自立を促しながら少子化対策を打っています。
結婚=出産という感覚ではなく、未婚でも子供を持っている人が多いの
が気になるところです。
それに比べて日本では、結婚=出産という暗黙の了解のようなものが存
在しています。
ですから、結婚しないと出産等ありえないということになってしまいま
す。
欧米のように、子供を産み育てる為の支援が必要なのではなく、将来の
不安を払拭しなければ子供の数は増えないと思うのです。
先進国の中で一番高いといってもいい貧困率(特に一人親世帯)、米国
と同じように格差もとてつもなく広がってしまいました。
若い世代は将来結婚したら、
子供を持ったら、
どれくらいお金がかかるのか予想しているので、結婚や出産を選択しな
い人が多いのだと筆者は感じるのです。
画像素材:いらすとや 将来の事を考えるとストレスが溜まりますね
厄介な能力
人間は言葉を使い、知識を持ち、考えることを知ったしまったことで、
将来を予測する能力を持ったといえます。
この(とても優れた)能力はとても厄介です。
副産物としての「不安」を生み出してしまいました。
そう、将来に対する「不安」というものを創り出してしまったのです。
このブログのテーマの一つでもある「老後の不安」もその一つです。
でも、この「老後の不安」は高齢期の方々特有のものではなさそうです。
若い世代の方々も持っています。
・自分たちの時代には年金はもらえるのだろうか
(自分たちは必死に高齢者の為の社会保障費を稼ぎ出しているのに…)
・将来(老後も含めて)の為にはお金が必要
・(非正規が蔓延した社会の中で)この収入では結婚は無理かも…
・この収入では子供は持てない
(持ったとしても最低限の数に絞らないと…生活が成り立たない)
・将来子供にかかる教育費のことを考えると子供の数は…
というように、子供のことだけではなく、自分の老後のことも真剣に考
えているのです。
画像素材:PIXTA 人生は一人で考えるものではないと思います
不安も一人で抱え込むと大変です
だから、家族はとっても大事な存在ですね
この将来を考える能力は、人間にとってとても厄介な「不安」というも
のを抱え込む結果になってしまったわけです。
前回の記事でご紹介した人間の身体に詳しい東京大学の伊福部先生(福
祉工学)によると、
「言葉を使って未来を考える機能は大脳表面の新皮質にあり、それは
ヒトだけが特に発達した」
とのことです。
そして、新皮質からのこの情報は旧皮質に伝えられ、不安や心配を感じ
させるそうです。
この情報が延髄まで伝わってしまうと、心臓や呼吸のリズムまでおかし
くなると聞けば少し恐ろしくもなります。
動揺すると、呼吸や心臓の動きが早くなるのが納得できますね。
人間の身体の仕組みは、とても不思議です。
伊福部先生によると、この新皮質の要望に応えるためには生き甲斐のあ
る就労・生活をすることが理想的なのだそうです。
画像素材:PIXTA
高齢期でも、生き甲斐を持って働く事が、健康と笑顔の源泉になります
高齢期の就労がこの国を救う
筆者が学んだ大学の高齢社会研究機構では、この国が抱える難問を解決
する為に、3つのテーマに取り組んでいました。
1.高齢になってもいつまでも元気でいられるように健康増進を促す
(健康増進が実現できると社会保障費まで抑えることができる)
2.いつまでも働けて快適な生活を送る生き甲斐就労を促す
(働く事で健康を維持し、さらに経済的な不安も軽減できる)
3.少し弱ってしまっても住み慣れた自宅で安心して生活ができる在宅
医療介護システムの構築
以前の記事でもご紹介したように実験システムも進められてきました。
まだまだ全国レベルの活動にはなっていませんが、これからも深く進化
していくこの国の高齢社会に対応する為のロールモデルになるのではな
いかとも考えられています。
高齢になって迄働きたくないという方もいるかもしれませんが、以前の
記事でもご紹介したように、日本人は働ける状態であればいつまでも働
きたいという方が圧倒的に多いのです。
実際高齢者といっても、元気な方々が大勢を占めています。
上図は、OECDが2010年に各国の60~64歳までの男性を対象に雇用に
対する意識を調査した結果を筆者が図式化したものです
60歳を超えても働きたいと思っている人の割合は、日本は76%と非常に
高く比較的高い数値を誇る米国や英国をも大きく上回っています
このデータからも、生き甲斐就労を欧米で実現するのは難しいことかも
しれませんが、この日本であればできるような気もします。
なぜなら、日本人は元々農耕民族であり、大昔はみんな死ぬその日まで
働いていたのですから。
この国に住む人間の未来に横たわる不安を解決する為には、まず高齢期
の方々が生き甲斐を持って働くことが一番なのです。
今この国は、完全に負のスパイラルに落ち込んでいます。
高齢化で(医療費や介護費等の)社会保障費が暴騰
⇩
現役世代の(社会保障費)負担増(非正規の増大等で収入減の中で)
⇩
若い世代が将来の不安から結婚や出産を回避
⇩
社会を支える人が減少していく=現役世代の負担が更に増えていく
⇩
国がドンドン貧しくなっていく
画像素材:フォトサリュ―
暗くて重い雨雲がたちこめるような嫌な雰囲気ですね
これではお先真っ暗ですね。
そうではなく、正しいスパイラルに変えていくことが必要なのです。
そこでもキーパーソンは、実は高齢期の方々なのです。
筆者の勝手な考え方ですが、正しいスパイラルについて下記に記述して
みます。
高齢期の方々が、生き甲斐を持って働き、年金に頼らない生活をする
⇩
働くことによって健康維持と認知症予防ができ、社会保障が抑えられる
⇩
高齢期の方々が働くことによって経済的に余裕ができる
⇩
そうすると、高齢期の方々が持っている膨大な資産が消費に回る
⇩
経済が好循環になり、現役世代の仕事が増える⇨現役世代の収入が上昇
⇩
更に景気が良くなり、仕事が増えて、海外からの投資も増える
⇩
好循環で貧困や格差が収まり、治安や社会情勢が好転する
⇩
将来の不安が軽減され、結婚や出産が増えていく
⇩
社会を支える現役世代が増えていき、国に活力が戻っていく
こんな真っ青な空を見ると気分が晴れますね! 写真:北海道
こう簡単にはいかないのですが、高齢期の方々が年金に頼らず、生き甲
斐を持ちながら社会に貢献していく。
こんな(高齢)社会が実現できれば、国難ともいえる少子高齢化に対応
できるのではないかと考えています。
その為には、この国の閉塞的な「姥捨て文化」を撲滅する必要がありま
す。
高齢期の方々を弱い立場で何もできない人間だと決めつける文化を捨て
去ることから始める必要があるのです。
高齢期の方々をどのように捉えて、どう活用するかにこの国の将来がか
かっていると考えるのは筆者だけでしょうか。
この国の将来を諦めてはいけないのです。
若い世代や子供たちの将来の為にも…
今回の記事も最期までお付き合い頂き、ありがとうございました。