オールドケアラー
8月に入って度々台風が接近し、大雨による被害が今年も多発しています。
加えて、列島に南から湿った空気が入り込み、大気が不安定になってい
るようです。
その関係で雨だけでなく、雷や突風による影響も出ています。
今晩も、もう2時間以上も雷が鳴り続け、雷の明るさで街灯も必要では
ない状態でした。
落ちるのではなく、天に広がる稲光を見ていると、何とも言えない不安
が広がります。(ある意味、花火よりも美しいのですが…)
筆者は先日、その何とも言えない不安と同じ不安を目の当たりにしてし
まったのです。
空に真っ黒で恐ろしい雲が現れると、次に雷鳴と共に稲光が走ります
家族というリスク
若い時にはなかった(考えもしなかった)リスクがあります。
加齢と共に発生するリスクは自身の健康被害だけではありません。
今回遭遇したそのリスクとは兄弟の高齢化によるものでした。
リスクの張本人は、男性Mさん(75歳)です。
奥さんと別離があったのか、元々いなかったのかはわかりませんが、独
居高齢者です。
お子さんもどうやらいないようです。
75歳にしては非常に老けていて、他の男性と比べても老化が進んでい
ます。
認知症の進展は言うまでもありませんが、言語障害もあり言葉が正確に
判断できません。
更に感情の起伏が激しく、平気で暴言や暴力を振るう男性なのですが、
老後の資金が底をつき、年金だけでなんとか生活する方法を模索中です。
ご本人も苦労をされているのですが、一番ご苦労をされているのがご親
族です。
ご家族がいない分、ご親族がこのMさんのサポートを地域の力を借りな
がら実施しています。
中でも高齢のお姉さんが何かとMさんの面倒をみているのですが、お姉
さんにかかるストレスは中途半端なものではありません。
お姉さんの口からも思わず(本音の)言葉がこぼれます。
「ストレスで押しつぶされそう…」
ご自身の生活やご家族の生活がありながらも、追加で弟であるMさんの
生活をも支援しているのです。
画像素材:いらすとや
ストレスで悩むのは現役世代だけではありません
高齢者も3K(金・健康・孤独)にプラスしてストレスに悩むことに…
ヤングケアラーの問題がクローズアップされていますが、高齢夫婦によ
る老々介護以外にオールドケアラーの問題も顕在化しようとしているの
です。
この問題、新たなリスクも生み出す可能性があります。
街中に増え続ける心のクリニック、多くの現役世代が通う病院ですが、
そこに今度は高齢者が増えていくという事態になりかねないのです。
結果、社会保障費(医療費)が加速度的に延びていくかもしれないと
いう危険性をはらんでいます。
リスクが更に新たなリスクを生み出す…
考えただけで寒気がしてきます。
このリスクが顕在化する可能性の高さを知ると、早期からリスクに対す
る対応を家族や親族で話し合っておく必要があると感じます。
家族や親族でこのリスクを分散する術を模索する必要があるのです。
このMさんのように老後の資金がなくなった場合は、簡単に施設への入
居は難しくなります。
受け皿である施設もお金次第なのです。
そう簡単ではないのです。
画像素材:PIXTA お金さえあれば日々の生活に心配は無くなります
ただ筆者は、施設で幸せな人をいまだ見たことがありません
一人の力では難しい
凄いパワーを持った人でも、弱ってしまった高齢者を独りでサポートす
ることは難しいです。
独りで抱え込まず、行政(地域包括サポート)も含めて周りと相談しな
がら、負担を分散させないといずれはその重圧に押しつぶされてしまい
ます。
どんな分散方法があるのか、知ることから始めていくしかないのです。
自分の周りにどのようなセーフティーネットがあるのか、
地域で活動するNPO法人等の組織も含めて情報も整理しておく必要性が
あります。
介護が必要になる前にいろいろな情報を整理することで、選択肢が広が
ります。
地域包括サポート一つとっても、行政が直接運営しているのではなく、
行政から委託された地域の社会福祉法人や医療福祉法人等が運営してい
る場合が殆どですので、そこに全て任せてしまうと、そこにもリスクが
存在する場合があります。
介護が必要になりそうな方の状態や特性に合わせて、選択肢を考える方
がより良い方向性に持っていける可能性が広がります。
最近は自治会にも入らない、脱会する方も多いのですが、地域とのつな
がりを失くさず、自治会と密接な関係にある民生委員や地域の社会福祉
協議会、上述の地域包括サポート、そして市役所に設置されている相談
窓口等に足を運んでみてください。
そうすれば、安いけれど地縁もない遠い施設に行くこともなく、住み慣
れた地域でサポートを受ける方法が見つかるかもしれません。
とにかく早め早めの対応が大事です。
いくら景色は良くても、住み慣れた地域から見知らぬ土地にいくのは
誰もが躊躇すること…
働く事も大事
Mさんがここまで弱ってしまった理由の一つに働かなくなったこと、そ
れにより人との縁と経済的な報酬を失ったことがあげられます。
加えて地縁も失くしてしまうと完全に孤立してしまいます。
今、この国は70歳迄雇用が保証される社会を目指していますが、実態
はそうはなっていません。
65歳以上で働く人も増えていますが、実情は非正規や低賃金で良い環
境とはいえません。
なるべく良い環境での「社縁」の復活や地域活動での「地縁」づくり…
高齢期になってもこの2つの縁があれば、Mさんのように凄い勢いで老
化が進展することを防ぐことができる可能性が高いのです。
おまけに十分とは言えないまでも報酬ももらえます。
筆者は、この国が更に深く高齢化していく上で、いかに高齢でも働ける
社会を創っていけるのかがこの国の未来を決めるような気がしてなりま
せん。
これからも増え続けるオールドケアラー、
ヤングケアラーも含めてこれからも大きな社会の課題として存続しそう
です。
子供家庭庁ができて、子供に関する様々な問題を解決すべく動き出しま
したが、今度は老人庁をつくらなければならなくなるかもしれませんね。
筆者も今回のような問題に出くわす度に、なんとかしないといけないと
思うのですが、妙案はなかなか思い浮かびません。
どんな方策や施策が必要なのか、
どんな社会実験が必要なのか、
それをどこが考えて実践することが一番良いのか…
少なくとも、もっとたくさんの頭で考えていかないことには、良いアイ
デアは出てきそうにもありません。
これからも思い悩む日々が続きそうです。
今回の記事も最期までお付き合い頂き、感謝申し上げます。