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定年廃止

2024年04月06日
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とうとう「定年廃止」という言葉が、マスコミで大きな活字となって現
れました。

 

定年廃止を定めた企業も中小企業を中心に存在はしていましたが、それ
はとても僅かであることを誰もが知っていました。

 

確かに「定年廃止」という言葉はありました…が、

 

でも、今回はついに(本気で)「定年廃止論」が浮上してきたと筆者は
感じたのです。

 

そう、これから真剣に議論されるかもしれないと思ったのです。

 

 

以前の記事でもご紹介した図です(2017年度調査データ)
年金制度改革で、65歳までの雇用を義務付けられた企業の対応です

7年前、調査時の「定年廃止」実施企業は僅かに2.6%でした
今も大きく増えているとは思えませんが…

 

 

業界によっては、構造的な人手不足が深刻になっているようです。

 

これから坂道を転げるように下がり続ける人口問題の深刻さに、ようや
く気付いたということなのでしょうか?

 

どうやら、今回はそうではないようです。

 

海外からのある報告書が要因になったようです。

 

この国を変えるのは、やはり外圧しかないのでしょうか(笑)

 

日本への提言ともいえる報告書を書いたのは、OECD(経済協力開発機
構)でした。

 

OECDの2年に1度の対日経済審査の報告書の中身はこんな感じです。

 

高齢化が更に進む中で、定年を廃止して高齢者の雇用を促すべき

 

成長を維持したければ、現実(少子高齢化)をもっと直視すべき

 

人口が減る中で、働き手を確保する為に改革した方がイイよ

 

筆者の感覚で言葉を変えていますが、大体こんな感じだと思います。

 

OECDからのいわば警告(イエローカード)とも受け取れます。

 

以前の記事でも書いたように、米国や英国のように年齢差別の観点から
法律で定年制度を禁止している国もあることを考えると、OECDは当た
り前のことを言っているともいえます。

 

しかしながら、いきなり定年制度を廃止すると、そのインパクトはかな
り大きなモノになるのかもしれません。

 

 

ガラパゴス制度

 

 

高度経済成長期に確立された日本特有の雇用制度が大きな壁になること
は、筆者にもよくわかります。

 

以前の記事でも説明をさせて頂いた日本の雇用制度は、当時はとてもこ
の国にフィットして機能し、日本の強みにもなっていました。

 

その雇用制度とは、日本特有の特徴を持っていて、とても個性的です。

 

 

 

 

 

1.(新卒)新規一括採用の実施

 

海外のようにスキルを持った人材を採用するのではありません。

 

2.企業内教育(OJT)で人材を育成していく

 

3.年功賃金

 

年齢と共に上がっていく賃金は、いわば生活給とも呼ばれ、安定した生
活を送る為の基礎にもなっていました。

 

それがある為に、マイカーや(家族の為に)我が家を購入する(できる)
人が多かったのです。

 

非正規と低賃金が蔓延り、それが崩壊寸前です。

 

本来、国が保証すべき生活を企業が国に代わって実施していたのです。

 

4.そして定年退職

 

この①~④がセットとして運用されていたのです。

 

ゆえに定年退職のみの廃止は、とても難しいのです。

 

定年制度の廃止は、このセット運用(システム)を全て見直す必要性を
迫ることになります。

 

年功賃金や年功序列はかなり崩れてきましたが、上記のシステムは大き
く変わってはいません。

 

そして、もう一つ大事なことがあります。

 

賃金に対する考え方です。

 

(終わりである)定年退職があるからこそ企業は賃金を上げることがで
きたのです。

 

その説明は、以前の記事でもご紹介した下記の図で説明ができます。

 

 

この図、覚えていますか?
この図の進化版が必要になってきたのです…

 

 

少し以前の記事のおさらいをしたいと思います。

 

上図の横軸は入社から退職までの勤続年数を表し、縦軸は賃金と社員の
会社に対する貢献度を表しています。

 

右肩上がりの、オレンジのラインが年功賃金です。

 

入社から退職する間際まで右肩上がりに上昇しますが、社員の貢献度は
年齢によって変わります。

 

若い時にはまだ会社への貢献度は少ないのですが、賃金が少ないと退職
してしまうので、企業が持ち出しで給与を払うのがAの部分です。

 

そして経験とともに仕事ができるようになり、会社への貢献度も上がり
ます。

 

Bで示された部分、ここで企業は利益をあげるのです。

 

この年功賃金は強制退職という意味合いを持つ60歳定年という終点が
あったからこそ実現できていました。

 

社員の貢献度を計算できるからこそできていたとも言えます。

 

年金制度改革によってそれが60歳で終わらなくなったのです。

 

問題は、Cの部分です。

 

中高年期になると、企業にとっては貢献度よりも賃金の割高感が増して
しまいます。

 

その結果、雇用延長する場合は、この高止まった給与が企業側の大きな
負担となり、賃金は大幅にダウンしてしまうことになるのです。

 

筆者が2017年に下げ率を調査した限り、定年前の60%程度がもっ
とも多かったのですが、50%を下回る場合も少なくありませんでした。

 

 

 

以前の記事でもご紹介した賃金の伸び率です(1997-2016比較)
賃金はようやく上がるようになりましたが、多くの高齢者の賃金が下が
っていく
とどうなるのでしょうか?
高齢でも働けるのはいいことですが、食えないのであれば意味がないの
かもしれませんね…

 

 

 

このように、60歳で終わらなくなった難しさを書きましたが、今度は
終わりが無くなるという、更に難しくなる状況を迎えます。

 

企業が高齢期を迎えた社員の貢献度をどのように考えるのか…

 

下がったままの賃金を65歳以上も続けるのか…

 

65歳以上は、更に賃金は削られていくのか…

 

その削られた賃金から社会保障費は差し引かれるのか…

 

そこには、難しい問題がたくさん転がっているようです。

 

オレンジのラインの傾きが大きく変わる可能性もあります。

 

でも、そうなると生活設計は難しくなってしまいそうです。

 

そうでなくても、結婚しない人が増えていく中で、これからもっと結婚
をしない人が増えるのかしれませんね。

 

そうなると、少子化はもっと進んでしまうのかもしれません。

 

多くの人が、家や車を持つことを諦めてしまうと、消費は大きく落ち込
んでしまう可能性すら出てきます。

 

定年廃止だけでなく、日本の新しい雇用システムを真剣に見つめ直し、
再構築していく必要があるのです。

 

 

家も車も、今迄のように売れなくなるのかもしれませんね…
そうなると、ニュータウンも生まれなくなる…かも
オールドタウンが朽ち果てていく姿だけを見ることになるのでしょうか
ニュータウンを走るこの道も、いつかは車の姿が消えるのかも…

 

 

もう一つの心配事もあります。

 

OECDは、日本の成長力維持を目的に今回の提言を実施したようです。

 

もし定年が廃止されて、多くの高齢者が働けるようになると、年金(制
度)はどうなるのでしょうか。

 

確かに「支えられる人」よりも「支える人」が増えることは悪いことで
はありません。

 

若者の不平等感も緩和されるかもしれません。

 

ただ70歳を超えても働けるようになったとすると、年金支給制限を受
ける人も増えていきます。

 

もしかすると、国は年金支給条件を変えてくるかもしれません。

 

国は社会保障費の暴騰を防ぐ為に、年金支給年齢を繰り下げていきたい
と考えていますから…

 

そうなると高齢者の中でも現役世代とそうでない世代との不平等感が増
えていきそうです。

 

結果的に年金が削られていくようになれば、生活に困窮する人で溢れか
えるようにならないかと心配です。

 

OECDが考えているほどこの国の状況は簡単ではなさそうです。

 

定年の廃止がいいのか…

 

別の施策がいいのか…

 

国難ともいえる少子高齢化の対策は、後がない崖っぷちの状態に近くな
ったのかもしれません。

 

今回の記事は、OECDが投げ放った小石の波紋の大きさについて考えて
みました。

 

もっと、もっと、この国の将来について真剣に考える人が増えていくこ
とを願うばかりです。

 

 

今回の記事も最期まで読んでくださり、感謝申し上げます。