サクセスフル・エイジングは実現できるのか?
打合せで東京に到着…
期待していた桜は既に葉桜に近く、少し残念でした。
東京大学構内の桜も殆どが葉桜
でも、歴史と伝統を感じさせてくれる工学部1号館の前にある枝垂れ桜
だけはまだ綺麗でした
地下鉄で移動する最中にも多くの高齢者の皆さんに出会いました。
東京でも後期高齢者となって、歩行機能に障害を持った方々が凄く増え
たなという気がします。
首都圏でこれからも爆発的に増えていく後期高齢者…
上りのエスカレータはあっても下りが無い場合、苦労して手摺につかま
りながらゆっくりと恐る恐る階段を下りていく高齢者を見ていると少し
心配になります。
このままでいいのか…
そんな光景を見ながら、フッと頭を過ぎった言葉、
以前の記事でもご紹介したことがある
「サクセスフル・エイジング」
今から38年も前に米国の老年医学者のジョン・ロウ氏と心理学者の
ロバート・カーン氏によって発表された理論です。
それまでの高齢者を対象とした研究では、もっぱら生活習慣病等の予防
医学が中心だったものを、高齢でも健康状態を維持している高齢者に目
を向けた研究を進めた結果生まれた理論だといえます。
何とか弱らず元気な状態を維持する方法はないのか…
この国では弱ってしまった高齢者を施設に入れるという考え方はあって
も、元気な高齢者を積極的につくっていくと考え方ができているとは思
えません。
国が推進する施策もあることはありますが、一般の方々には殆ど知られ
てはいません。
今回の記事は、どうすれば元気な高齢者が増えていくのかという観点で
考えていきたいと思います。
サクセスフル・エイジングの条件
サクセスフル・エイジングの基本的な考え方を下記の図に表してみます。
この図は、ある意味でサクセスフル・エイジングの条件ともいえるのか
もしれません。
病気や障害がないこと
高齢期になると持病は誰しもが持っていると思いますが、ここでは生活
に支障が出る病気や障害がないと捉えるべきかもしれません。
高い身体・認知機能を維持していること
加齢による筋肉の減少等はあったとしても、QoLを維持できるだけの身
体機能や認知機能を有していれば大丈夫だといえます。
人生への積極的関与
極端な言い方をすれば、自立しているか否かということかもしれません。
捉え方が難しいのですが、高齢になっても何らかの形で社会に貢献する
姿を指しているのではないかと考えられます。
筆者は前述の研究者が示した3つの要素の内、この要素が最も重要な要
素であると感じています。
そして、上図の中にはいくつかのKEY-WORDが存在していますが、こ
の3つの要素が重なる部分にサクセスフル・エイジングが存在すると
いってもいいのかもしれません。
重なり方やその大きさには個人差があることは確かです。
そう考えると、サクセスフル・エイジングの実現に向けて努力の仕方も
人それぞれと言えるのかもしれませんね。
人生の区分も変わる
今までは人生の区分を大きく分けると3段階でした。
子供
大人
老人
子供の数が多くて老人が少なかった時代はこれでよかったのですが、
高齢者の数が増えてくるとこの区分では分けることは難しくなってきま
した。
そこで、今は4段階になったのですが、平均寿命が延びて85歳を超え
てくると、この4段階でも難しい時代になってきます。
そう、4段階から5段階へと移行していかないと社会システムが追いつ
いていかなくなるのです。
超高齢化に対応していく為には、この社会システムの変更が必須となり
ます。
それは、度々記事でもご紹介してきたように2025年以降徐々に明確
になっていくと筆者は考えているのです。
この社会システムの変更は、サクセスフル・エイジングの理念とも密接
に関与していきそうです。
どういうことかというと、
それは下図に示すサクセスフル・エイジングの理念を説明すれば、すぐ
に理解ができる筈です。
サクセスフル・エイジングの理念のKEY-WORDは自立です。
下図に示す4つの自立が実現する時、高齢者であっても多くの不可能を
可能にすることによって生産的に社会に貢献できることができるのです。
身体的自立
身体的自立については、説明の必要がないと思いますので省略します。
経済的自立
この経済的自立は、他の自立と関係性が強く、最も重要な要素になりま
す。
既に年金だけで生活基盤を構築することは不可能であることは誰しもが
知る事実です。
身体的に自立していても、キチンと納得して働くことができない現状が
あるのです。
70歳を超えても40%以上の高齢者が働く時代になったといいますが、
問題はその中身です。
劣悪な労働条件で働く高齢者が殆どだからです。
若い方々とほぼ変わらない能力を持っている方々が多いのにも拘わらず
です。
年齢に拘わらず、能力に合わせた報酬がもらえる労働システムが必要な
のだと筆者は考えています。
高齢者だから(報酬は)現役の3分に1でいいよね…
高齢者だから、年金があるから、最低賃金でもいいよね…
こんな考え方を排除した新しい社会システムが必要なのです。
欧米のモノマネをするわけではありませんが、まず「年齢差別」を法律
で規制することから始めてみてはどうでしょうか
そうすれば、人口の多くを占めるようになった高齢者の皆さんが、働い
て、儲けたお金で消費をしてくれます。
生産して、消費することで社会に貢献してくれるのです。
「高齢になったら月10万円(の収入)でいいんです」なんてことをい
う方もおられますが、筆者は違うと思います。
歳を重ねても、能力に合わせた報酬をもらいたい。
認められたい。
当たり前のことです。
高齢者になっても社会の一員なのですから…
精神的自立
経済的自立と共に大事なのが、精神的自立です。
住み慣れた地域で、自分らしく生きる
記事でも度々ご紹介してきたエイジング・インプレイス…
家族や友人、親族等近隣社会も含めた社会環境を安定的に良好な状態に
保つことも重要なことなのです。
ようするに、生きていくための環境整備ということになります。
居場所があるか否かで、生活の質は雲泥の差が出てきます。
社会貢献
高齢期で自立なんて難しい…
本当にそうでしょうか…
身体的な健康状態を維持しながら、経済的に、精神的に自立することが
できれば、前述のように大きく社会に貢献することができます。
消費を通して社会貢献するだけではありません。
働くことによって健康を維持し、「社会に支えられる立場」から「社会
を支える立場」に居続けることが、どれほど社会に対して大きなイン
パクトがあるのか…
そんな元気で自立した高齢者を創る必要があるのに、今の社会システム
はそうはなっていないのです。
画像素材:PIXTA
サクセスフル・エイジングを考えることは、長くなった人生を真剣に
見直すことに繋がるかもしれません
高齢者が政治を動かす時代
後期高齢者の医療費負担増…
全世代型社会保障…
重い社会保障費に苦しむ現役世代を救う為にも高齢者の皆さん理解して
ね…
そんな(国の)声が聞こえてきそうです。
全く、後ろ向きな考え方ですね。
これからも現役世代はやせ細り、高齢者は増え続けるのに、これから二
重、三重の我慢をしてくれというのでしょうか?
我慢してくればかり…
もっと社会システムを変えて、高齢者や高齢者が持っている資産を活用
しようという考え方はないのでしょうか…
そう考えると、社会システムの変更にはもっと高齢者の声が必要なのか
もしれませんね。
仕方がない…
諦めてばかりではなく、高齢者の皆さんが声を上げて、政治を変えてい
く時代になったと筆者は考えています。
政治家も年寄りが多いのですから、もっと政治家に意見する高齢者が増
えてもいいと思うのです。
一票の重さだけに頼っているとまた騙されます(笑)
前述のように、サクセスフル・エイジングの理念と社会システムには密
接な関係があるのです。
もうすぐこの国の高齢化率は30%を超えて、更に高齢化率は上がって
いきます。
以前の記事でも何度もご紹介してきた国が公開している人口統計表です
将来予測ができている筈なのに有効な手段も施策も出てきません
少子化対策よりも高齢者活用の方が遥かに効果は高いと思うのですが…
誰しもが理解できる事実です。
なのに、有効な手段や施策は出てはきません。
街を歩けば、将来この国がどうなるのかを予想することが容易になりま
した。
今回の記事でご紹介したサクセスフル・エイジング、実現するならこの
国で実現しなければならないのではないかと強く感じています。
手遅れにならないうちに…
今回の記事は、東京で見た急速に深化するこの国の高齢化の姿を見て、
想うところを記事にしてみました。
今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。