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高齢期での雇用の難しさ その2

2019年04月24日
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労使関係の変化

 

高齢期での雇用の難しさについて、前回の同じテーマによる記事では
バブル崩壊後に日本の産業構造が大きく変化したことを中心にまとめて
みました。

2回目となる今回の記事では労使関係の変化について少しまとめてみたいと思います。

日本における会社側と労働者側の関係は、組合を通じて一種独特なものがありました。

欧米とは違い、人を大事にする経営を貫いてきた日本的経営では、少なく
とも長く会社に勤め、会社に貢献してきた社員をとても大事にしてきました。

長く会社に勤めてきた高齢期の社員に対して会社として感謝の念があった
ことは確かです。

これは在職者だけでなく、会社を定年退職した元社員に対しても同じでした。

筆者の会社では、定年したOBの方に新しい社章を渡していました。

このバッチには社章の下に、あるシンボルマークが付いていたのです。

そのバッチのシンボルマークを見れば社員は、先輩(OB)であることが
一目瞭然であったわけです。

 

筆者も若い頃は、先輩からシンボルマークが入った社章を付けている方が
いれば、丁寧に挨拶するように指導を受けてきました。

最近はセキュリティ強化の影響で、そのような光景には出くわさなくなり
ましたが、会社として長く会社の為に働いてきた高齢期の社員やOBに
敬意を表してきたわけです。

そんな社員と会社との関係はバブル崩壊以降大きく変っていくことになります。

 

 


画像素材:フォトサリュ

 

株式市場の影響

 

バブル崩壊以降企業経営における株式市場の影響は急激に大きくなって
いきました。

それを示す一つの代表事例として株式保有比率をみてみましょう。

日本企業経営の伝統ともいえたメインバンクという安定株主の比率が
低下し、外国法人等の投資家の比率が増えています。

最近の情報をみると、日本取引所グループの調査では2017年度(2018.3月)の外国法人等の株式保有率は前年度比でプラス0.2ポイントの30.3%となっていました。

バブル崩壊後には5%にも届かなかったその比率は大きく上昇しています。

逆にかつては40%を超えていたメインバンクの株式保有率は30%以下に
低下しています。

「ものを言う株主」が力を持つようになったのです。

 

この株式市場が企業に与える影響は、企業の経営手法の変化となって現れることになります。

1980年代迄は当たり前だった、経営(企業)と資本(安定株主)との関係が
変わり、資本がその性格を大きく変えてしまったといえます。

近年のグローバル化の進展により、資本の変化は加速しているともいえるのです。

 

 

画像素材:フォトサリュ

 

経営手法の変化

 

ものを言う株主の影響もあり、企業の経営手法は大きく変ってきました。

ものを言う株主は、株価や配当を重視するのは言うまでもありませんが、
その結果で企業の経営手法は長期指向から短期指向へと転換されていると
いえます。

これは企業の経営目標にも大きく表れることになります。

経済同友会がまとめている「企業白書」によると、1980年代の日本の企業の経営目標の第1位は、「新製品・新事業の拡大」で、第2位は「マーケットシェアの維持・拡大」となっていました。

筆者の会社でも、年度の方針発表では最初に長期ビジョンや商品開発中長期計画等が説明されることが多かったように記憶しています。

これは、株主への利益還元よりも企業の将来へのビジョンを明確にすることが重要視されていた結果なのではないかと考えます。

それが、最新の企業白書(第17回企業白書2013)における企業の経営陣へのアンケート結果では、利益改善が最も経営上の重要な課題になっていました。

グローバル化の進展で生き残る為にはイノベーションが重要であるという
認識もありながら、利益が最も重要であるという結果がでていました。

 

この短期指向には、国の法律改正の影響もあるのではないかと感じています。

2004年の会社法改正では、四半期決算となりました。

3カ月単位の経営結果が重要視されれば、どうしても短期指向とならざるをえません。

2015年の改正では、社外取締役による監視強化がなされる方向性が打ち出されています。

このように企業経営における短期的業績(利益)が問われる中で、比較的
高賃金である高齢期の社員は、どうしても経営上の負担となってしまうの
です。

しかしながら、企業経営には短期性のものだけではなく、長期性をもった
考え方は必須です。

 

高齢期社員の雇用は、変わってしまった労使関係をもう一度見直し、日本
経営の強さを復活させるための起爆剤になるかもしれません。

破綻へと向かいつつある日本型の労使の信頼関係を取り戻す機会にできないかと筆者は考えています。

かつて日本企業における労使の関係は「運命共同体」ともいえる関係で
あったと言っても過言ではないと思います。

それが日本企業の強みでもあったはずです。

長年企業で経験を積んできた高齢期の社員の頭の中には、日本的ともいえる長期視点をもった事業運営のノウハウが詰まっています。

一旦失いかけた日本経営の強みのスパイスを持っているのです。

 

年金支給年齢は今後も後ずれをしていくことは誰もが予想できるように
なりました。

企業も高齢期社員の雇用を前向きに捉え、高齢期の社員ももう一度自分の
乗った船に貢献するという姿勢が、再び日本企業が強くなるための条件なのかもしれません。

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。