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高齢期での雇用の難しさ その1

2018年12月24日
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人手不足は深刻な状態

 

2018年12月8日、国会で外国人労働者を受け入れる枠組みとなる入国管理・難民認定法の改正案が成立しました。

テレビでも与党と野党の論議が連日流れて大きな話題となったことは皆さんもご存知かと思います。

今、産業界では人手不足が深刻なのだそうです。

最新の有効求人倍率は、1.62(2018年10月 全国平均)だそうです。

この数字は、今の高年齢者の皆さんが会社に入った1970年代とほぼ同じ
水準です。

労働者が少ないことが、よくわかる数字なのです。

しかし、政府も高齢者や女性が働くことに期待していると言いながら、
高年齢での再就職を含めた雇用は活発であるとはいえません。

ダイバーシティという言葉が盛んに使われるようになった昨今、外国人
ばかりに焦点が当たるのではなく、高年齢者にも焦点が当たるようにする
ためにはどうすればいいのか。

今回の記事では、高齢期の雇用がなぜ進まないのかということに対して、
その理由も含めて少し皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 

 


画像素材:フォトサリュ

 

高齢期雇用の難しさ その理由

 

高齢期になっても働きたい人が多い中で、なぜ多くの人が納得して働き続けることが出来ないのでしょうか。

企業に働く高年齢者は60歳を超えても、年金政策の変更で希望すれば65歳
まで雇用延長して働き続けることが出来るようになりました。

しかし、雇用延長の条件は高年齢者にとって納得できるものではないというのが本音です。

給与は大きく下がり、働く形態は嘱託等の不安定なものに変わります。

そして仕事の中身も馴れ親しんだ仕事から大きく変わることも珍しくあり
ません。

この変化はなぜ起こるのでしょうか。

一つ目は日本の産業構造が変化したことではないかと考えています。

日本の産業構造の変化を総務省統計局が集計した「産業別就業者構成割合の推移」を使って図を示してみました。
(筆者の方でわかりやすいように図に追記しています)

図のとおり、高度経済成長期、急速な工業化を通じて第2次産業である製造業が大きく伸長しましたが、その後サービス化、情報化を伴いながら第3次産業であるサービス業が台頭してきています。

現在の高年齢者が会社に入社した1970年当時の産業の中では、製造業が30%近いウェイトを占めています。

学校を卒業した当時の今の高年齢者の皆さんは、その多くが製造業に就職したことになるわけです。

しかし、バブル崩壊後の1990年代に入るとサービス業が大きく成長し、全産業内に占めるウェイトを大きく広げることになります。

バブル崩壊を起点に産業構造が大きく変化したといえるのです。

図を見ても、製造業とサービス業のウェイトは1995年以降に逆転しています。

加えて、製造業のウェイトが一貫して縮小傾向にあるにも拘わらず、サービス業は拡大傾向にあります。

これを就業者数に置き換えるとサービス業では雇用機会が増えるのに対して、製造業では就業機会が減少することを意味しています。

この日本における産業構造の変化は、既に特定産業分野での人手不足として現れています。

この雇用ニーズと再就職を含めた雇用希望者との不整合が発生していることこそが、高年齢者雇用を考える上で、大きな課題であると考えています。

多くの高年齢者を抱える製造業に雇用ニーズは少なく、サービス業を中心に大きな雇用ニーズがある。

これは産業構造の変化により、現在の高年齢者の持つノウハウや技術を活かせる場所が少なくなっていることを物語っているともいえます。

事実、現在世界の製造業の中心となっている中国に多くの日本の製造業に携っていた技術者が活躍の場所を求めて海を渡っているのです。

ただ、その数は国内の高年齢者全体から見れば僅かな数字でもあります。

結果として、多くの高年齢者が、自分の能力を活かせる場所を探していることもまた事実なのです。

 

 

 

二つ目は日本の独特な雇用システムの影響です。

日本の雇用システムを表現する上で日本の年功賃金について図に示してみました。

日本の年功賃金制度は実によくできていると思います。

図の横軸は入社から退職までの勤続年数を表し、縦軸は賃金と社員の会社に対する貢献度を表しています。

オレンジのラインが年功賃金です。

入社から退職する間際まで右肩上がりに上昇しますが、社員の貢献度は年齢によって変わります。

若い時にはまだ会社への貢献度は少ないのですが、賃金が少ないと退職してしまうので、企業が持ち出しで給与を払うのがAの部分です。

そして経験とともに仕事ができるようになり、会社への貢献度も上がります。

Bで示された部分、ここで企業は利益をあげるのです。

この年功賃金は強制退職という意味合いを持つ60歳定年という終点があったからこそ実現できていました。

年金制度改革によってそれが60歳で終わらなくなったのです。

問題は、Cの部分です。中高年期になると、企業にとっては貢献度よりも賃金の割高感が増してしまいます。

その結果、雇用延長する場合は、この高止まった給与が企業側の大きな負担となり、賃金は大幅にダウンしてしまうことになるのです。

筆者が2017年に下げ率を調査した限り、定年前の60%程度がもっとも多かったのですが、50%を下回る場合も少なくありませんでした。

しかし、その結果で高年齢者のモチベーションは大きく下がり、結果雇用
延長はうまく機能しなくなっているケースが多いのです。

 

 

資料出所:島田晴雄・清家篤「仕事と暮らしの経済学」(岩波書店 1992年)中の図を元に筆者が作成

 

高齢化が明らかにしたもの

 

このように産業構造の変化による課題の顕在化と日本の雇用システムの限界を明らかにしたものは、実は高齢化の進展です。

この国が持つ大きな課題を高齢化がハッキリさせたのです。

この問題を解決する為には、図の上方向への赤い矢印で表した高齢者側の
企業への貢献度を上げるという高齢者側の努力と、雇用延長でも大きく賃金を下げないという企業側の努力が必要となります。

既に給与が大幅に下がり、モチベーションが下がる影響を懸念して、雇用延長での給与を見直す企業もでてきています。

自動車産業のホンダ(本田技研工業)では、筆者が調査したところ定年前の80%まで雇用延長した高年齢者の給与を改善していました。

筆者はホンダの経営陣の決断に脱帽しています。

しかし、多くの余剰人員を抱える製造業では、ホンダのように対応できる
企業は少ないのではないかとも考えています。

そこで大事になってくるのが、高年齢者自身の市場価値を上げることになるのです。

スキルアップやスキルチェンジを通して企業への貢献度を上げれば、雇用延長における条件を良くしたり、別の企業から好条件でオファーを頂く可能性も上がります。

但し、スキルアップやスキルチェンジにはそれなりの時間がかかることは認識しておく必要性はあります。

そういう意味では高齢期に入る前の準備が重要になりますが、高齢期に入った後でも挑戦する意欲が高ければ遅くはないと思います。

60歳になったとしてもできることはたくさんありますが、日本の社会が持つ特徴と背景をしっかりと認識したうえで、少しでも早い段階でセカンドライフの準備をすることが大切だと筆者は考えています。

セカンドライフの就業の為には、個人の努力が重要なのです。

なぜならば、企業に対してスキルアップやスキルチェンジの為の期待をするのは難しいといえるからです。

高齢期に入った社員に教育を実施する企業は殆どありません。

自分の市場価値を上げるのは、自身の努力にかかっているのです。

ただ、高年齢者には長年培ってきた知識とノウハウがあります。

これは単に個人の保有資産ではなく、この国が持つ社会資産・資源ともいえるものです。

この資産と資源を捨てることなく活かせるかどうかでこの国の行き先が決まると筆者は思うのです。

この高年齢者が持つ社会的な資産・資源をどう活かすのか、今後もこのブログで論議していきたいと思っています。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。