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エイジングインプレイスの具体的な取り組み 泉北ニュータウン

2018年10月28日
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泉北ニュータウンの取り組み

 

今回はエイジングインプレイスの具体的な取り組み事例をご紹介してみたいと思います。

エイジングインプレイスの取り組みは、全国で様々な取り組みが始まって
います。

今回ご紹介する取り組みは、その中でも大規模であり、なおかつ地域の
住民が中心となった取り組みです。

従来の産官学連携に地域のNPOや高齢者施設、医療施設とその地域に住む
住民が参画したものとなっているところに特徴があります。

そして、街自身が高度経済成長の時期に開発された大規模住宅地であり、
高齢化の影響を大きく受けている街で実施されているところに大きな意義があると感じました。

この取り組みはエイジングインプレイスの全体像を把握して頂く上で、
とても参考になるのではないかと筆者は考えました。

場所は大阪府の南部に位置する「泉北ニュータウン」、
大都市大阪圏内にあって千里ニュータウンと共にその規模は全国でも有数
のものであることは間違いありません。

今回ご紹介する取り組みプロジェクト名は、
「泉北ほっとけないネットワーク・プロジェクト」。

このプロジェクトの取り組みには、
“地域の「空き」を共有し、コミュニティサービスを展開する”
という副題がついています。

この副題のとおり、このプロジェクトの取り組みポイントは、下記の4点にまとめることができます。

 

①域住み続けるために生活エリアを分けて、地域を機能的に展開し再構築
していること

②取り組みの中で、高齢者や障害者と子供を対象に多くの助け合いが存在
していること

③当時者である地域住民が守られるべき対象というだけではなく、取り組
みの主役であること

④そして1から3を地域の課題でもある「地域の空き家・空き店舗」を活用
して実施していること

 

高度経済成長期に開発された街では、高齢化だけだはなく、少子化に伴う
人口減少や住宅設備・インフラの老朽化や空き家問題等様々な課題を抱え
ています。

そんな中で、泉北ニュウータウンの一角に位置する槇塚台地区(2010年統計で人口約7000人)を舞台に今回のプロジェクトが発足しています。

空き家と空き店舗を福祉サービス拠点に転用し、高齢者だけでなく、障害者や子供を含めた地域住民生活を包括的に支援するための安心居住・食健康のコミュニティサービスを提供することがプロジェクトの取り組み内容です。

感心させられるのは、ただ空き家を活用しているだけでなく、空き家を高齢者向けに住みやすく改造しているところです。

どのように改造しているのかというと、ヒートショックを気にせず入れる
団地内共同浴場がある。
(小さな銭湯の機能をもった元団地の一室は、ふれあいの場としても機能
しています)

 

①住戸内ではベットから数歩で行ける位置にトイレを設置している
(身体機能が少し弱っても自立した生活が可能)

②キッチン・トイレ・寝室は独立しているものの、共用のダイニングが
存在している
(プライバシーを守りながら最低限のふれあいの場があり、相互扶助が
可能な住戸形態で、まさに高齢者版シェアハウスといった感じです)

③住戸内にシャワールーム等の自立度を上げ、介護にも適した設備を完備
している部屋もある

 

昔の団地の内部を大規模に改造して、高齢者に優しい構造で、かつ自然な
形で交流できる仕組みが考慮されていました。

ここには大阪市立大学をはじめとする大学の研究者や介護・医療事業者の
経験とノウハウが凝縮されています。

地域の組織と大学がしっかり連携できていることで可能になった良い例でもあります。

また、街の中をいくつかのエリアに分けることにより、引きこもりにならない仕組みも施されています。

そのエリア分けとは下の図を参照して頂くとわかるように、

 

  1. ①住むところ(住戸エリア)
  2. ②お風呂に入るところ
  3. ③ごはんを食べるところ(買い物ができる)
  4. ④散歩するとこ
  5. ⑤病院や高齢者施設

 

資料提供:大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部

 

 

といった具合にエリアが分かれ、その中で様々なサービスが実施されているのです。

とても機能的であり、高齢者にとっての問題点である引きこもりや運動
不足、生活する上でのリスクを解決できる仕組みが考慮されていることが
わかります。

次に提供されているサービスをご紹介すると、

 

① 地域レストラン(2店舗)
地場産の食材を使った栄養バランスのとれた食事ができます。

 

ここでは高齢者を含めた地域住民の働く場にもなっており、レストランで
つくった食事を配食もしています。

配食サービスの担い手も地域住民ということになります。

そして、地域配食ということもあって温かい配食が可能で、このサービスは高齢者の見守りも兼ねて実施されています。

 

 


資料提供:大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部

 

② 朝市

 

ニュータウン周辺の農家から直接地場産の安全で新鮮な食材が届けられて
いて、食材が全て揃うわけではありませんが高齢者にとって買い物の手間が省けます。

朝市はレストランに併設されており、食事の際に買い物を済ませることも
可能です。

 


資料提供:大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部

 

③ 槇塚台助け合いネットワーク 働く場の斡旋

 

地域住民として地域の小学校や大学への管理業務等の就職の斡旋も行って
います。

高齢者を対象にまずできることから始めていますが、地域住民の持っている知見を知ることにより就職先はもっと拡大していける可能性を持っていると考えられます。

 

④ 健康相談・栄養相談

 

体の具合が悪くなったらすぐに医者に行くのではなく、まず相談できる
地域のホームドクター的な役割りを担っています。

ここでは理学療法士や管理栄養士の資格を持った大学の先生が活躍して
います。

これらの大学の取り組みからは研究成果というノウハウを社会に提供する
だけでなく、大学にはこのような活躍の方法があるのだということを教えて頂くことができました。

大学の先生からすれば生きた現場の研究成果を得られるチャンスでもあり
ます。

他にも高齢者を対象に大学の先生方が、健康体操や健康散歩等のアドバイスを実施しています。

このサービス、大阪府内の3つの大学(大阪市立大学、大阪府立大学、大阪物療大学)が提供しています。

研究の場を生活の場に移した素晴らしい取り組みだと思いました。

その他にも高齢者を対象にしたよろず代行等が実施されています。

これは元気な高齢者が身体機能が少し弱った高齢者に対して電球交換等
「チョイ働き」を提供することによって困りごとを解消しています。

当然僅かながらも収入もあります。

その他にも在宅介護、見守りサービスといった地域住民からすれば、
“どこに相談したらいいのかわからない” といった声の相談先としての
サービスもあります。

また、高齢者向けの住戸を提供するだけではなく、空き家を改造した施設でロングスティ・ショートステイ・デイユースといった介護サービスを受けることも可能です。

空き家のリノベーションを単なる住戸改造と考えずに、さらに視野を広げ
た観点で地域住民のためのエイジングインプレイスを実現している良い例
といってもいいと思います。

 


資料提供:大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部

 

 

加えて団地だけでなく、周辺の戸建て住宅に住んでいる住民に対して身体
機能が弱っても自宅で住み続けることができるように自宅のリノベーションについての相談ができるところまであるのです。

 

 


資料提供:大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部

 

 

まさにサスティナブルタウン

 

まさにこれらの取り組みは高齢化する街を後ろ向きに捉えるのではなく、
高齢化しても持続可能な街にしていく前向きな取り組みといえるのでは
ないでしょうか。

この泉北ニュータウンの取り組みは、大学の役割がとても大きいと感じました。

今回の取り組みの組織図を拝見すると産官学といいながら大企業や国の機関は存在していないようにみえます。

全てが地域の組織や団体で構成されているようです。

地域の持っているポテンシャルを大学がうまくコーディネイトしていると
いえるのです。

そのコーディネイト役の一人である大阪市立大学の森 一彦教授にはこの
ブログ記事の作成でもご協力を頂きました。

森先生はエイジングインプレイスの第一人者ともいえる存在です。

先生の著書について下記にご紹介しておきます。

とてもエイジングインプレイスの考え方がよくわかります。是非手に取って頂ければ幸いです。

この泉北ニュータウンの取り組み、超高齢化に対応する為のお手本では
ないでしょうか。

筆者もとても勉強になりました。

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。

 

 

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