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EDIBLE WAY 食べられる道プロジェクト 千葉大学の挑戦

2018年12月02日
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コモンスペースの新しい形

 

今回の記事は、前回記事の課題である

「どのように人を集めて、コモンスペースを創っていくのか」

を解決する為の一つの取り組みをご紹介してみたいと思います。

皆さんはコモンスペースと聞いてどんな風景をイメージするでしょうか。

公園、花壇、遊歩道、ベンチ等の空間の共有でしょうか。

地域の狭いエリアの中にそのスペースを見つけるのは一苦労かもしれません。

しかし「花」とか「緑」といった言葉はKEY-WORDになるかもしれません。

英国のトッドモーデンという街には、EDIBLE(食べられる)LANDSCAPE(景観)を活用した「Incredible Edible(驚きの食べられる街)」という活動があります。

町中のちょっとしたスペースを活用して植物を植えて楽しむ。

でも、ただの植物ではなく、食べられる植物を植えるのだそうです。

地域の人々がそこに集まり、植物を育て、働いた人だけでなく誰でも
食べられる仕組みです。

「if you eat  you are in」

という言葉が表すとおり活動に参加して食べたら、みんなが仲間になれるという考え方の活動なのです。

 

 


出典:EDIBLE WAY

 

 

EDIBLE LANDSCAPEの提唱者であるロサリン・クリーシー女史(米国のランドスケープデザイナー)は、「可能な限りの自立した生活を求める
方向と収穫の楽しみと花の時期の美しさなど四季を通じた楽しさを
享受する」ことを目的に始めたようですが、この取り組みは結果として
コモンスペースを生み出したのです。

欧米でこのEDIBLE LANDSCAPEが始まった背景には、産業が衰退した
街の中で孤立する人々が増えていくという地域の問題と環境問題があった
ようです。

日本でもこのEDIBLE LANDSCAPEに取り組んだ先駆者がいます。

それは千葉大学です。

千葉大学では、当初このEDIBLE LANDSCAPEを日本で実現しようと
考えたそうなのですが、日本では公共の場で食べられる木や植物を植える
ことは基本的に許可されないことを知り、ある方法を考え付いたそうです。

それは軒先園芸ともいえる「地先園芸的」取り組みです。

 

 

出典:EDIBLE WAY

 

 

その取り組みの流れは次のとおりです。

①軒先(玄関周辺)での私的な園芸を街の通り全体で行う
(当然了承を得た家だけで行う)

②地先園芸の集まりに公共的な意味合いを持たせる(住民の多くが参加)

③住民一人ひとりの手で地域の景観づくりに取り組む
(住民の手で植物を育てる)

④この取り組みから人が集まり、コミュニケーションが生まれる
(会話の種(共通の話題)ができる)

⑤分断されていた公と私をつなぐ
(コモンスペースが街のそこら中に生まれる)

 

千葉大学は、専用の持ち運び可能な布製のプランターを用意して、一軒一軒住民の家を周り、賛同頂ける住民の家の軒先に植物を置いて回りました。

欧州のEDIBLE LANDSCAPEのように一か所に集まって活動するのでは
なく、住民の家の軒先にある小さなスペースを使ってEDIBLE LANDSCAPEを実践したのです。

結果、EDIBLE LANDSCAPEではなく、EDIBLE WAYとなったわけです。

このEDIBLE WAYのプロセスは、次のとおりです。

①みんなで(食べられる)植物を植える

出典:EDIBLE WAY


②苗や種が増えれば他の場所に運ぶ:おすそ分けをする
(運搬は千葉大学の学生が担当)

③住民一人ひとりの手で育て、植物の世話をする

 

出典:EDIBLE WAY

 


④収穫した野菜は基本的には各家庭の食卓に料理として並ぶことになりますが、年に2回ほどみんなで収穫物を持ち寄り集まって食べる
(お鍋にしたりしてみんなで調理してみんなで食べる)

 

出典:EDIBLE WAY

 


⑤種を収穫して、土を入れ替え、次の季節の野菜を植える
(一度だけで終るのではなく、学生と住民の手で管理する)

 

出典:EDIBLE WAY

 

このEDIBLE WAYの取り組みをきっかけに、コミュニケーションが生まれ、人と人、人と緑がつながることで、豊かに安心して暮らせる住環境
づくりに貢献することを目標としていると千葉大学の担当者は話をして
くれました。

このEDIBLE WAYの舞台は千葉県松戸市、松戸駅から千葉大学のキャンパスまでの戸定地区で実施されています。

この取り組みは2017年度GOOD DESIGN賞を受賞していることからも中途半端な取り組みではないのです。

先日、筆者もこの松戸市戸定地区に行ってきました。

残暑が厳しく、日差しが痛いくらいでしたが、各住戸の軒先には多くの黒い布製プランターが並んでいました。

 

 

 

 

軒先のスペースを利用して置いてある黒いプランターにはEDIBLE WAYと表記されていました

 

 

 

 

軒先園芸というよりは、もう街の景観といってもいいかもしれません。

 

                    

 

唐辛子、ピーマン、ミニトマト 全て食べられます

 

 

 

筆者が見た中では、オクラが一番多かったです。他の植栽と同じように置かれていて違和感はありません。

このオクラ、昨年の夏プランターから採取した種をシェアした関係で増えたのだそうです。

 

 

このお宅は何も植えていないのかと思いましたが、よくみると小さなパセリがありました。

この後パセリの横には小松菜が姿を現す予定だとか・・・

このEDIBLE WAY、コモンスペースの目的でもある公と私を結びつけることに成功しています。

地域のつながりが強くなったのです。

単なるコミュニケーションの機会が増えただけではなく、その質が変化しているそうです。

それもそのはず、挨拶だけでなく、植物栽培という共通の会話の種があるのですから。

そして、地域を歩く楽しみが増えたことで、地域への愛着・帰属意識も高まったという感想もあったそうです。

また、住民間の助け合い等協同作業も増えています。

地域のつながりだけでなく、副次的な効果も出ています。

地域で、新鮮で、目に見えて安全な野菜が育てられていることだけでなく、その野菜を地元のパン屋さんが商品の中に活用して販売している等、
地域ビジネスにも貢献する可能性も秘めています。

筆者がこの地区を歩く中で、出会った人々はその殆どが後期高齢者でした。

ここでも確実に高齢化は進んでいるようです。

高齢の女性が二人で千葉大学のキャンパスに向かって散歩をしていましたが、暑さと坂道の関係で何度も休憩をとりながら道を上がっていくのが
とても印象に残っています。

この地域でも高齢化が進んでいることを考えれば、高齢期を迎えた人々が
植物栽培という形で労働(社会貢献)することで、生きがいと健康促進
にも貢献していることは間違いありません。

そして、もう一つこの活動が地域社会に及ぼす効果があります。

今年も水害や巨大台風といった災害で多くの方が犠牲になりました。

今回取り上げた活動によるネットワークはいざという時に助け合える
予防的セーフティネットになりえる可能性があるのです。

この活動が大学と地域によるただの活動といえるでしょうか。

災害が増えるこの国で今一番必要な活動といえるのではないかと筆者は
感じました。

また、会社を定年する方々にアンケートをとると、定年後は地域活動や
社会貢献に時間を使いたいという答えが多いそうです。

このコモンスペース創りは、まさに定年後の活動にピッタリかもしれま
せん。

その活動は地域貢献にとどまらず、企業に勤めてきたノウハウを使って
地域経済に貢献できる可能性をも秘めています。

この千葉大学の取り組みは、東京の郊外である一戸建て中心の住宅地だけでなく、いろいろなところで活用できるのではないでしょうか。

高齢化する団地でも、少しのスペースで取り組めるものだということは
今回の取り組みで実証済みです。

このEDIBLE WAY、街そのものをコモンスペースにできる可能性を秘めています。

今後も千葉大学の取り組みを応援していきたいと思います。

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。