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UDC 街を変えていく

2018年10月28日
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UDCとは

 

「街づくりをどうデザインしていくのか」という課題に応えるための
新しい取り組みが始まっています。

 

この取り組みは超高齢化を迎えているこの国の課題解決にも有効ではな
いかと考え、今回記事で取り上げることにしてみました。

 

これからの都市のデザインをマネジメントする組織の方向性として、
「エリアマネジメント」「UDC」「オーソリティ」という3つの組織論
が生まれています。

 

筆者も初耳でしたが、特定のエリアを単位に、民間が主体となって、ま
ちづくりや地域経営(マネジメント)を積極的に行おうという取組みを
「エリアマネジメント」と表現しています。

 

そして、行政都市計画や市民まちづくりの枠組みを超え、地域に係る各
主体が連携し、都市デザインの専門家が客観的立場から携わる新たな形
のまちづくり組織や拠点を「UDC」と呼んでいるそうです。

 

UDCとは、アーバンデザインセンターの略で、行政・民間・大学それぞ
れの都市計画の専門家であるアーバニストが公・民・学の共同組織を組
んで活動することを表しています。

 

いわゆる公・民・学の自立組織をいい、もう既に全国で19の組織を数
えるまでに取り組みが進んでいます。

 

今回はUDCの先駆者的な存在である柏市のUDCK(アーバンデザインセン
ター柏の葉)のセミナーが、東京大学柏の葉キャンパスで行われ、筆者も
参加してきましたので、少しご紹介してみたいと思います。

 

 


つくばエクスプレス 柏の葉駅前にある東京大学柏の葉キャンパス
この1階にUDCKがあります 筆者撮影

 

UDCKの取り組み

 

 

千葉県柏市の北部に位置するこの地域の開発は2000年頃から始めら
れ、2005年のつくばエクスプレスの開通を契機に一気に都市開発が
進んでいます。

 

その翌年の2006年にUDCKが設立され、取り組みが開始されました。

 

土地区画整理事業施工者である千葉県、地元自治体である柏市という行
政と、駅周辺を中心に都市開発を進める地権者でもある三井不動産(民
間)、そして駅に隣接する形で立地している2つの大学(千葉大学柏の
葉キャンパスと東京大学柏キャンパス)という3つのアーバニストによ
る取り組みです。

 

このUDCKは今回の都市開発において、街づくりのキープレイヤーとし
て位置づけられ、活動を10年以上も継続しています。

 

筆者が注目したのは、その継続性を持った活動の中身です。

 

事業者が開発した街は開発が終わると後は住民が生活するだけのケース
が多いのです。

 

事業者が管理やメンテナンスの為に街に残るケースもありますが、街が
できた後は地域の自治体の支援をもらいながら住民主体の運営がなされ
るわけです。

 

しかし、その後の街をどうするのかといった計画は殆どの場合存在しま
せん。

 

街は年月の変遷と共に老朽化し、高齢化していきます。

 

当然のごとく外から見た街の魅力は落ちていくことになるので、若い人
は寄ってきてはくれません。

 

今回のセミナーを通して、このUDCの取り組みは街を継続的に、かつ街
の変化や拡充にも対応することが出来るのではないかと考えました。

 

事実、UDCKの変遷を見ると、駅周辺の高層マンションが分譲された初
動期から中心街区の整備に入った拡充期に、UDCKは法人化されていま
す。

 

街を見守り、進化させる為の公・民・学連携による法人が存在するので
す。

 

現在、UDCKは次期エリアの整備計画に入っているようです。

 

この取り組みに対して、

“新しく整備された街だからできるんだよ!”

という声も聞こえてきそうですが、筆者はそうは思いません。

 

UDCKのように地域の公・民・学が連携して推進母体ができれば、街を
常に進化させる取り組みは不可能だとは思えないのです。

 

UDCKの場合、資金面では日本を代表する企業が参画しているメリット
もありますが、このような地域活性化に向けた活動では、今流行りのク
ラウドファンディングのような仕組みも活用できるかもしれません。

 

大事なことは街を継続的に変えていく活動を推進するための推進母体が
あるのかという点です。

 

推進母体ができれば、街を継続的に維持・発展させる為のノウハウを蓄
積することができます。

 

街の高齢化に対しても、この推進母体を元に高齢者のノウハウや高齢者
の持っている資産を有効に使えば街を変えていくことが可能ではないか
と考えます。

 

 

UDCKの活動内容

 

 

次にUDCKの活動内容について簡単にご紹介した上で、この取り組みが
街の高齢化にも対応できることを筆者のコメントを通して示してみたい
と思います。

(筆者のコメントは➡で表現)

 

1.まず計画をつくり、戦略を立てる

 

街の資源や資産を徹底的に分析して、どのように住みやすく、魅力的な
街にしていくのかを検討し、戦略をつくる。整備していく場所や仕組み、
整備する順番も考えています。

 

➡高齢化に対応するための計画や戦略を街づくりに組み込んでいく、
高齢になっても長く元気で社会に貢献できる街を地域ぐるみで考えてい
くことは、結果的にはサスティナブルタウンを目指すことにつながりま
す。

 

また、街を魅力的にしていくことは、結果的には人を集め、触れ合いの
場所をつくっていくことにつながるのではないでしょうか。

 

 

柏の葉計画イメージ  出典:UDCK

 

 

 

2.空間をデザインする

 

街を魅力的に見せるための街区整備や(外部の人も含めた)人が集まる
イベント等を開催しています。

 

下の写真のように、区画整理事業で整備される治水用の調整池を、まち
なかの水辺空間として高質化整備を行い、アクアテラスとして開放した
りしています。

 

➡高齢化する街をどのようにデザインしていくのか。そのヒントは、他
の記事でもご紹介した泉北ニュータウンのような取り組みが有効である
と考えます。

 

「街をどのように住みやすくするのか」という課題の次には、

「街をどのように魅力的に見せるのか」という課題にたどり着きます。

 

この2つの課題を市民を加えた地域のアーバニストによって考えること
はとても有意義です。

 

UDCKの取り組みを見ても、世代を超えて人が集まる仕組みを構築する
ことは、街の高齢化に対応する為の有効な手段だと考えます。

 

 

出典:UDCK

 

 

3.仕組みを構築する

 

計画を遂行するための関連組織間の協定を締結しています
(道路維持管理・資金面等)

 

➡継続した活動には、各種法令対応や資金確保はどうしても必要です。

 

スポーツ競技等も同じですが、地域の中で活動に参加頂けるスポンサー
の確保はとても重要になってきます。

 

別の視点でいえば活動を通じて、地域にお金が落ちる仕組みを考えてお
くことも忘れてはならないでしょう。

 

この「地域にお金を落とす仕組み」は、推進母体が無ければできません。

 

 

4.コミュニティを育てる

 

街の主体者は住民。

住民主体のクラブ活動、まちづくりスクール・セミナー、プロジェクト
活動を実施しています。
(筆者が参加したのもこのセミナーです。地元の方を中心に約30名の
方が参加されていました)

 

➡住民が自分たちの街を好きになる。街づくりに参画する。

主体的に動ける住民が多くなれば街は強くなるのではないでしょうか。

 

子供たちもその街に住み続ける。

 

これが親の介護も含めた究極の福祉につながると考えます。

 

筆者が参加したセミナーは延べ4日間、土日を使って地域の方が参加し
やすい形になっていました。

 

セミナーでは地域活性化の鍵となる知識を身につける為の講義を聴くだ
けではなく、参加者全員で地域の課題を炙り出し、どのように解決して
いくのかをディスカッションすることに主題が置かれていました。

 

このような地域の住民とアーバニストとの協働作業の中から、地域の課
題解決に向けたヒントが出てくるような気がしました。

 

初日と最終日には講師を交えた懇親会もあり、とても有意義なセミナー
でした。

 

 

筆者も参画したUDCKのセミナー  出典:UDCK
地元の方が多く参加してディスカッションも盛り上がりました

 

 

この4つの取り組みは、UDCKのような推進母体があって初めて実現で
きるものだと考えます。

 

既に国内では多くのUDCが存在していますが、この取り組みが広がって
いけば高齢化に悩む地域も活性化できるのではないでしょうか。

 

今後もこのUDCの取り組みに注目していきたいと思います。

 

 

全国で進むUDCの取り組み

 

 

UDCの取り組みは、全国で進んでいます。

 

参考に、UDCの全国マップを示しておきます。

 

現在、UDCKを含めて全国で、19か所の取り組みが進んでいるようで
す。

皆さんの地元のお近くにあれば、一度セミナーにでも出かけてみてはい
かがでしょうか。

 

地域社会に貢献できるヒントが掴めるかもしれません。

 

 

出典:UDCイニシアチブ

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

 

特P