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人生100年時代の才覚を身に着ける(2/2)

2019年11月02日
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今回の記事では、前回に引き続き東京大学の大月先生に登場して頂きます。
超高齢化を迎えたこの国で、どのような考え方やリテラシーが必要なのかを大月先生とともに考えていきたいと思います。

 

日本人は幸せの定義を変更しなければならないのではないか?

 

【大月】

そういう意味では日本人の幸せの定義を変えなければならないのではないかと感じています。

今、親の介護が大きな問題になっています。

生産年齢人口が減少している中で、介護離職する人も増えている。

人生の中で親の介護が重要なウェイトを占めるようになったともいえます。

そういう意味では親の介護を考えた人生設計が必要になってきたのではないかと思います。

これからは家を買う時にも作戦(戦略)が必要になったといえるのではないかと思うのです。

要するに家を購入するときにも、人生100年の長期ビジョンに立った作戦(戦略)が必要になったということになります。

そして転勤が否定される時代にやっとなってきました。

日本の転勤制度は、欧米ではとても考えられない。

【星田】

単身赴任で会社が払う経費はとてつもなく大きいですよね。

私も単身赴任が長いのでよくわかります。

金曜日の夜の下りの新幹線は単身赴任のおやじばかりです。
私もですが(笑)。
鉄道会社は儲かりますけどね。

また、高齢化に伴って、企業の中では単身赴任中の中高年男性の病気や事故死も問題になり始めています。

転勤や単身赴任は誰が得をするのでしょうか。
企業はもっとお金を有効に使うことができればいいのですが。

【大月】

最近は若い人が、転勤がいやだといって、会社を辞める人も少なくないようです。

価値観が変わってきたんですね。

我々が学んできた幸せとは、

敷地があって、家があって、「さあ、この中に幸せを築け!」

そこにしか幸せがないかのような考え方だったのかもしれません。

 

 

 

 

家族の幸せ ➡ 家が必要 ➡ 家の購入にはお金が必要 ➡ だから大企業に就職 ➡ だったらやっぱり大学は東大でしょう(笑)

これは昭和の時代の図式ですよね。

実は今もあまり変わってないのかもしれませんが、これからは、幸せの定義を変えていく時代なのかもしれません。

 

 

人生の才覚

 

【大月】

幸せの定義を変えていくことと共に重要になるのが、人生100年時代の才覚を身に着けるということではないかと思うんです。

それはまさに新しい時代に必要なリテラシーともいえるかもしれません。

「仕事のことも、家のことも、お金のことも人生100年で考えているか?」

「子供のことだけでなく、親の介護や配偶者の介護のことまで考えているか?」

今までのようにお決まりの定型パターンではなく、いろいろなオプションが頭に浮かぶことが大事だと思います。

そういう意味では居住地の選択はとても大事なことではないかと考えます。

そんな中で「近居」という選択もあるよね! という話しなんです。

空き家を使って(親と、子と)近居できれば問題が解決できるかもしれない。

【星田】

近居の仕組みができれば、介護離職を無くせるかもしれませんね。

【大月】

近居は、空き家を持っている方にも有効な利活用かもしれません。

親が死んで家をほったらかしにしているのは、まだ幸せだからです。

困っていない。

家を貸すのも面倒。

貸すためにリフォームが必要だけど投資を回収するのが大変そう。

貸しても儲からないかもしれない。

売ったら売ったで、含み損が発生するかもしれない。

家を取り壊して、更地にしたら税金(固定資産税)が高くなる。

面倒なことばかりです。

でも近居の為に家をうまく貸すという方法はありかもしれません。

【星田】

でもなぜ日本の家は20年以上経つと資産価値がなくなるのでしょうか?

アメリカ人なんかは家を大事にしていて、キャリアを上げていくたびに
引っ越しがある。

【大月】

キャリアアップの為に住むところを頻繁に変えていくアメリカ人にとって
引越し自体がとても大事であって、その時に家が適正な値段で売れることはとても大事なことです。

日本のように、どんなに追加投資しても資産価値として反映されないのでは、引っ越しすらもできない。

つまり、キャリアを上げていけないのです。

そのために家を高く売る努力と工夫をしている。

逆に、日本では買ってしまった家は安くしか売れないので、単身赴任の
正当性が高まるわけです。

アメリカでは住宅のインスペクション(住宅の査定)のシステムが発達していて、綺麗な家と汚い家、どちらが高いかという基準がはっきりしている。

日本の場合はそんな判断はせずに「築何年」査定システムがあるか、ないかの違いです。

日本はバブル崩壊以降、家を売ったら損、
引っ越したら損、
会社を途中で辞めたら損

そういう社会システムが出来上がってしまっているんです。

こういう社会システムの背景があるから、おいそれと空き家対策や近居は
進まない。

貸す側も売る側も(法務や税務が)面倒くさいから進まない。

近居の一番の理想は「親を(あるいは子供を)近くに呼ぶこと」

親(あるいは子供)には仕事も家庭もある。

親(あるいは子供)は生活を大きく変えなくて済む。

とはいえ最近は、そんなアメリカでも少しずつ、事情が変わってきたよう
です。

2008年のリーマンショック以降、戸建て住宅の敷地内に家族の誰かが戻ってきた時に使えるアネックスをつくるという動きもあるようです。

アメリカ版二世帯住宅が流行っているらしいです。

敷地内といえども別宅なので、嫁姑がもめるというケースは少ないのかもしれません。

【星田】

日本の二世帯住宅はよくもめるみたいです。(笑)

アメリカですら大きく変っていく。
もっと日本も住み方を変えてもいいのかもしれませんね。

以前の記事でもご紹介した大阪の泉北NTでは、リニューアルした団地の
一室を団地内に住む親の様子を見に来た家族がテンポラリーに活用する
近居のスペースにしていました。

常時使わなくてもこのような使い方もあるんですよね。

【大月】

今、同じような考え方で子供が親の家との中間点にアパートを借りて、親をサポートしている事例もあります。

【星田】

とても苦労していますね。

【大月】

もっと(親の住んでいる)地域の空き家が活用できるようになればいいですね。

今は、貸す方もリニューアル等で面倒なことが多く儲からない。

そして借りたい人も予算や相場が合わない等の様々な壁があります。

でも、もっと時間が進んで空き家の数が今よりももっと増えてきたら、
きっと事情は大きく変わるのではないかと考えています。

どちらにしても貸す側のハードルを下げてあげる施策が必要ですね。

 

 

今回のインタビューで学んだこと

 

【星田】

大月先生、ありがとうございました。

今回の大月先生とのインタビューで学んだことを少し整理すると、

・日本人の幸福感を(もっと多様性のあるものに)変える

・人生100年時代の「才覚」を身に着ける

・「近居」が日本の超高齢社会を救うかもしれない

いずれも、超高齢社会を迎えたこの国にこれから必要になってくるものばかりだと感じました。

今回の対談記事も、最後まで読んでくださりありがとうございました。
感謝申し上げます。

 

 

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さすが東大の先生、とても面白かったです。
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