衝撃的なニュース
今回の記事は、筆者を驚かせたある記事について書いてみたいと思いま
す。
決して今回の記事の対象となる団体を批判するものではありません。
ただ、高齢化にひた走るこの国のセーフティネットに大きな影響を及ぼ
すものであることは間違いがありません。
セーフティネットの危機
昨年、台風21号が近づく大雨の中、筆者はネットニュースで衝撃的な
記事(2019年10月25日付)を見つけ、しばしその記事に目が釘
付けになってしまいました。
スマホに見入るという癖がない筆者にとっては珍しいことだったのかも
しれません。
その記事は超高齢化社会を迎えているこの国のセーフティネットそのも
のを揺るがしかねない事件だったからです。
その記事の見出しはこんな内容で始まっていました。
「人の命ですよ!」特養が突然閉鎖
“終のすみか” 追われ問われる法人の責任
その記事は、要介護レベルが中度から重度の患者を受け入れる特別養護
老人施設(以下特養)が突然閉鎖されるという内容だったのです。
それも3施設同時に閉鎖というから驚きです。
日本の介護システムにおける最後の砦といっても過言ではない施設が
簡単に閉鎖されてしまうということに筆者は信じられないという感情を
持ちました。
特養はその重要性の為、社会福祉法人が運営しています。
比較的重い症状を持ち、一人では生活が困難な方々を受け入れる特養は、
入所時にお金が必要ではありません。
入所時に高額なお金が必要な施設が増えていく中で、お金にあまり余裕の
ない方々の受け皿にもなっているために、入所待ち(待機)している人が
大勢います。
長いところでは、なんと10年待ちというところもあるようです。
待機という言葉は、保育園の待機児童だけではないのです。
特養での介護を心待ちにしながら、家族や親族が懸命の介護を続けてい
ます。
だからこそ、簡単に閉鎖されたり、なくなったりしていいものではあり
ません。
街中の高齢者施設は目に見えて増え続けています。
しかしながら、この国の介護の実態は、実際には家族や親族がその殆ど
を担っているのです。
上のグラフを見て頂ければわかるように、70%は事業者ではなく、
家族や親族の手によって(自宅を中心に)介護は実施されています。
ただ、長期化する介護は介護する側にも大きな負担になることも分かっ
ています。
もう既に介護離職者は、年間10万人を超えており、これからも増え続
けると言われています。
そんな中での今回の介護施設の破綻は、非常に問題の根が深いといえる
のです。
救いの手は地域から
今回の事件、突然に起きたのではなく、伏線があったようです。
介護施設の基本の一つである「食事」の提供も滞ることがあった上で、
職員の給与も期限内に支払われないことがあったそうです。
今回の問題に対する対応はというと、保育園の場合と同じで他の受け入
れ先を確保することになったそうですが、自治体も事態を深刻に受け止
めて全面的に協力を実施したと記事には記されていました。
施設の利用者の家族は、今回の事態を受けて記事の中で次のようにコメ
ントしていました。
ちょっと信じられない。
特養でこういうことがあるのかと思って…
まさか自分の身にこういうことが起こると思わなかった。
まさに想定外の事態といえます。
このご家族は入所するまで、どれくらいの期間待ったのでしょうか。
セーフティネットと思っていたものが、突然セーフティネットではなく
なる。
これは異常な事態です。
結局救いの手を差し伸べたのは、周辺の施設でした。
どこも定員一杯の状況でありながら、破綻した施設の入居者を少しずつ
受け入れてくれたそうです。
困っている人に救いの手を差し伸べる。
簡単なようで難しいことです。
この問題の社会福祉法人は3施設を閉鎖しました。
入居者は3施設で100人を軽く超えていますが、入居者全てが転居先
を見つけることができたそうです。
地域がこの問題をなんとか解決してくれました。
ただこの施設の破綻の要因は記事をみてもよくわかりません。
推察でしかありませんが、経営難の背景には介護職員の不足があると専
門家は指摘していました。
筆者が記事の中で、よく懸念を示している2025年問題。
都市圏での施設の不足が指摘される中で、その既存施設の存続を危ぶむ
今回の事件は、本当に他人事ではありませんでした。
国民がこの国で安心して暮らしていくために必要なセーフティネットで
ある社会保障。
その社会保障を基盤に運営される高齢者施設。
そのセーフティネットがこうも簡単に崩れ去るのをみると筆者は非常に
心配になりました。
©tsukamoto hajime
イラスト「地域の輪」
筆者は、今回の施設が破綻した原因をきっちりと検証する必要があると
思うのです。
今回は、衝撃的な記事についてご紹介してみました。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。