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認知症とどう向き合う

2020年01月22日
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今回の記事は、高齢化とともに急速に大きな問題に発展しつつある
認知症について取り上げてみたいと思います。

 

都市部で急増する認知症患者

 

厚生労働省の調査では、2015年の時点で525万人の認知症患者がいる
ことがわかっているようです。

特に都市部で急増する認知症は2025年には730万人に達するという
推計まであります。
統計をとるたびに増えていくのではないかと心配です。
実際には、予備軍と呼ばれる方をいれるともっと多くなることは確実です。

この認知症、なぜ都市部で急増しているのでしょうか。

当然のごとく、高度経済成長期に地方から都市部に出てきた方々が
高齢化しており、高齢者の母数が大きいということもいえるかも
しれません。

最近イギリスの公衆衛生学専門誌に掲載された研究による成果発表を
見ると、

「清潔で所得が高い国の都市部ではアルツハイマー病の発症率が高い」

ということが書かれていたそうです。

え~ぇ そうなのかと、筆者も少し驚いてしまいました。

その内容をみると、衛生的な都会では微生物が少ないため免疫が衰えて
しまい、免疫に重要な「T細胞(Treg細胞)」ができなくなるといった
原因が考えられるらしいのです。

実際に研究報告では、T細胞が欠けた状態はアルツハイマー病患者の
脳でよくみられる炎症反応と関連性があると報告書で指摘されていました。

OECDの資料を見ると、先進国の中では認知症発症率は日本が一番高い
のですが、意外にもフランスは低いという結果も現れています。

この結果には、食生活も少なからず影響しているのかもしれません。

以前に投稿させて頂いた記事(ヘルシーエイジング)では、赤ワインが
認知症の発生抑制に効果がありそうだと書きました。
もしかすると、フランス人はワインが大好きだからなのかもしれません。

同じ記事で、日本の発酵食品も認知症抑制に効果がありそうだと書いた
のですが、日本人の食生活が大きく欧米化してしまった影響もあるのかも
しれません。

認知症を考える時、環境や食べ物に関することは大事ですが、ここで
少し、おさらいの意味で、認知症になりやすい人の特徴をもう一度整理
してみると下記の4つがあげられます。

 

①遺伝子的な要因・・・家族で認知症に発症した人が多い

②社会・経済的な要因・・・社会的に孤立している人/経済的に困窮している人

③生活習慣的な要因・・・高血圧症/糖質異常症/糖尿病等の持病を持っている人

④老年性疾患等による要因・・・うつ傾向の人/転倒による頭部外傷を受けた人/引きこもり等対人交流の場が減少した人

 

筆者は上記の要因の中で、②の項目が非常に気になりました。

高齢期の一人暮らしが急速に増えています。
加えて、長くサラリーマンをして定年後に地縁を持たない人が社会の中で
孤立する傾向にあります。

日本の都会において認知症を発症する方が急増しているのは、上記に
挙げた「医学的要因」や「社会的な要因」が複雑に絡み合っているのかも
しれません。

©tsukamoto hajime
イラスト「認知症とどう向き合う」

 

上記の反対に認知症になりにくい人の特徴は下記の3つがあげられる
そうです。

 

①継続して学習をしている人・・・生涯学習等の学習を続けている(頭(脳)を使い続けている)人

②食事と運動に配慮している人・・・有酸素運動を定期的に実施している人
野菜等抗酸化作用の高い食物摂取を常に心掛けて実践している人/過度な飲酒を避けている人(やはり適量がいいのですね)

③活動的な生活習慣を持っている人・・・身体活動/社会参加/対人交流の多い人

 

認知症にかかる人の中で最も多い傾向は、身体的不活動であるそうです。
体を動かさないことが、一番認知症になる危険性が高くなることを意味
しているのかもしれません。

この結果は動物実験でも実証済みで、運動できない環境にある動物と
運動できる環境にある動物を比較すると顕著な違いがあらわれるそうです。

都市部で住んでいても、運動ができる環境が近くにあることは、とても
大事なことなのですね。

 

認知症による事故も増えている

 

読者の皆さんも記憶にある方がおられるかもしれません。
2007年に愛知県で起きた、認知症の方が電車にはねられ死亡した事故は、
いろいろな面で考えさせられた事件でした。

認知症の男性が、家族の目を掻い潜り、独りで外出した際に事故は起き
ました。

男性は重い認知症。

男性の妻が同居していましたが、双方とも高齢の為に、長男の妻が
横浜市から愛知県の男性宅の近くに転居して世話をしていたようです。

事故で列車が遅れたため、電鉄会社は男性の家族に対して、振り替え
輸送などにかかった費用(高額)を支払うように訴えました。

一審の地裁は、妻と長男に責任があるとして、2人に全額の支払いを命令。

二審の高裁は「妻にだけ責任がある」として、半額を支払うように
命じました。

判決に対しては、「介護の実情をわかっていない」などの批判が
相次いだ中、

最高裁は、妻にも長男にも監督義務はなく、賠償金を支払う責任は
ないとの判決を出したのです。

最終的には家族は裁判で勝利しましたが、認知症の方が起こした事故でも
ここまで大きな問題になるのだと教訓を残した事例になりました。

認知症の家族をサポートする方々に、これだけのリスクがあることは
事実なのです。

 

そんな中で、筆者の自宅の隣町である神戸市が素晴らしい取り組みを
始めたようです。

認知症の人にやさしい「神戸モデル」と銘打ち、
平成31年(令和元年)4月から認知症事故救済制度を始めたのです。

この制度の内容をみると、4つの制度(サービス)があることが
分かります。

それも無料(一部のみ有料)です。

 

①賠償責任保険制度(事前登録が必要)

 

認知症と診断された方が事故を起こし賠償責任を負わされた場合に備え、
神戸市が保険料を負担して賠償責任保険に加入できる制度。
保険に加入された方が交通事故等でお亡くなりになった場合等の保険も
含むそうです。

 

②認知症事故救済制度専用コールセンターの設置

 

事故があれば、24時間365日対応の専用コールセンターが事故対応等の
相談に応じると書かれていました。

 

③GPS安心かけつけサービス (事前登録必要)

 

認知症の方が行方不明になった場合に、GPSの位置情報を頼りに、早期
発見し、事故を未然に防ぐことを目的にしているそうです。

※月2000円の(GPS)利用料金のみ負担

また、家族等からの依頼で事業者が居場所にかけつけ、捜索を支援して
くれるそうです。
(1回の捜索時間3時間まで)

 

④見舞金(給付金)制度

 

認知症の方が起こした事故で被害に遭われた市民の方へ、市から
最高3,000万円の見舞金(給付金)が支給されるそうです。
※自動車事故など対象外となる場合があると書かれていました。

 

神戸市が、ここまで手厚い制度を導入するのは、どのような背景が
あるのでしょうか。

筆者が、神戸市に問い合わせしてみたところ、下記のような回答が
返ってきました。

 

筆者の勘違いを無くすために、全文そのとおり記載してみます。

 

回答文

平成28年9月に、神戸市で、G7保健大臣会合が開催され、認知症対策を
より推進していくことを盛り込んだ神戸宣言が採択されました。

神戸宣言を受けて、事故救済制度の検討など、認知症の人にやさしい
まちづくりを推進していくこととなりました。
平成28年12月、事故救済制度について、国では、制度創設を見送る方針が
発表されましたが、本市として、平成29年1月、事故救済制度を含む条例
制定を検討していくことを表明しました。
平成30年4月1日に認知症の人にやさしいまちづくり条例を施行。

その後も、事故救済制度、診断助成制度について検討を進めてきました。
これらを踏まえ、認知症になっても安心して暮らしていけるまちづくりを
より推進するため、診断助成制度と事故救済制度を組み合わせて実施し、
その財源は、超過課税の導入により、市民の皆様から広くご負担いただく
こととする全国初の取組み(神戸モデル)を行うことになりました。

 

以上が回答文でした。

 

ある機会を捉えて自治体として真摯にできることを実行したという内容
でしたが、制度導入までには多くの課題を乗り越えてこられたのでしょう。

神戸市に敬意を表したいと思います。

また、この神戸市の取り組みの背景には、下記の考え方があるようです。

 

・認知症は、加齢によって多くの人がなりえる病気であること

・認知症の方が事故を起こした場合に、ご本人やご家族のみに負担を
強いるのではなく、社会全体で支えることが必要だという認識があること

・一般的な賠償責任保険が機能しない、誰もが責任を負わない事故も有る
ことから、その場合の被害に遭われた方を救済できる仕組みが求められて
いると認識していたこと

 

認知症の方とその家族の不安を軽減するため、できる限り対応できる制度を考えた結果が今回の制度なのかもしれません。

 

凄い商品を見つけました

 

確かに神戸市の取り組みは素晴らしいものですが、筆者には一つひっかかるところが。

「GPS機能は、スマホを携帯していないと活用できないよね。」

「スマホを持ち出しても、どこかに忘れたらどうなるの?」

上記の鉄道事故では、家族が少しの間、目を離した隙に認知症患者が
外出していました。
出かける準備をしてから、出かけるのではないということです。

そんな疑問がある中で、筆者は先日とても面白いものを見つけました。

「QRコード付きのボタン」です。

最近よく目にするこのQRコード。

サイトへの誘導や電子決済用として広く普及しているQRコードが
衣服につけるボタンに印刷されているのです。

 

このQRコード付きのボタンにスマホをかざすと、認知症患者をサポート
する方(家族や施設)の連絡先が表示され、タップするだけですぐに
電話がかけられるようになっていました。

このボタンを衣服に縫い付けるだけなので、手間暇はかかりません。

そして、服を着ないで出かけることはないために、どこかに置き忘れると
いうこともありません。

あとは地域の中で、認知症患者をサポートする仕組みと組み合わせるだけ
です。
自治体だけでなく、地域住民の協力も必要です。

最近、児童見守りのステッカーやポスターをよく見かけます。
交番だけでなく街中の店舗や公共施設にもよく貼ってあります。
「子供110番」として、一般の民家も協力しています。

このように、地域で助けが必要な児童を救済する仕組みが認知症の方々を
救うためにもあればいいのです。

この衣服に着けるQRコード付きのボタンと組み合わせれば、認知症の
方々を救うことができます。

GPSのような最先端のシステムや設備を使わなくても、
安価で、そして簡単にセーフティネットが構築できます。
(多くの自治体が安価でGPS機材を貸し出しています)

ただ、セーフティネットの構築には自治体だけでなく、地域住民の理解と
協力が必要です。

素晴らしい技術を駆使したシステムを導入しても、そのシステムを
活用しなければセーフティネットは構築できません。

このQRコード付きのボタン、どのように運用すれば地域のセーフティネットが構築できるのか。

読者の皆さんも一緒に考えて頂けないでしょうか。

使ってみたいという方は、ブログの「問い合わせ」に
ご連絡を御願い致します。

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。