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バージョン2の街・住まい・環境づくり

2020年01月27日
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今回の記事は、昨年12月22日に開催致しました第3回人生100年
時代の人世設計力養成講座の内容(エッセンス)をご紹介する形でまと
めてみたいと思います。

 

講演者は東京大学の大月先生。

 

大月先生、とても熱く語ってくれました。

 

お話の中のポイントのみピックアップする形になりますが、最後まで
楽しんで頂ければ幸いです。

 

 

街をバージョンアップする

 

 

今年も自然災害が多く発生し、多くの方が被災しました。

 

被災された方は住み慣れた家を離れ、仮設住宅や公営住宅、或いは親戚
の家を頼って引っ越しを余儀なくされます。

 

また高齢になって家の中で怪我をした場合、入院をしてリハビリをして
家に戻りますが、今の家は殆どが高齢者向けにはつくられていないため
にまた施設に入ったり、高齢者向けの住宅に移り住むことになります。

 

いつまでも住み慣れた地域と家に住みたいと思ってはいるものの、次に
住む街をそして家をどのようにしていくのか考えなければならなくなっ
たのです。

 

家の購入は、人生の中でも大きなイベントの一つです。

家を購入したら、皆さんその家にずっと住み続けることを前提にしてい
ます。

みんな次の街を、そして家をどのようにするのか考えてこなかったとも
いえるのです。

 

超高齢化を迎えたこの日本という国では、体が弱ってくるといつまでも
今の家には住めなくなってきます。

 

家から遠く離れた施設へと移り住むのか?

 

でも、誰もが住み慣れた地域や家に住み続けたいと願っています。

 

 

画像素材:フォトサリュ

 

 

住み慣れた地域の中で住み続けることを考えることは非常に大事なこと
ですが、どうすれば住み慣れた地域に住み続けることが出来るのでしょ
うか?

 

例えば、施設ではなく家族・親族との互助を考える。

 

・引っ越しする代わりに近所(隣)の空き家を使う

・少し離れているけど近くの空き家(部屋)を使う

・家を(増築を含めて)リノベーションする

 

キッチン

 

家が2つあるから独立しているのではなく、場所は離れていても機能は
一つにできるのではないか。

 

その為には、街の持っている機能を「近接する」という考え方がとても
有効かもしれません。

 

その結果で、家族として機能的に一緒に住める。

 

世帯という考えかたではなく、もう一度家族(親族)として考える

 

家の中に閉じこもらず、街に直接働きかけて自分の街をより住みやすい
ように街を使っていくという考え方ができるのではないでしょうか。

 

一つの家の中に閉じこもらず、街を耕すという新感覚。

 

その結果、「街を住みこなす」ことができるのではないでしょうか。

 

自分の住む町をもう少し住みやすく、ブラッシュアップしていく、バー
ジョンアップしていくことはとても大事なことです。

 

超高齢化を迎えたこの日本で、地域包括ケアシステムも含めて自治体や
地域の団体、そして個人が協力してバージョン2の街づくりをすること
は、とても有意義なことでもあります。

 

 

多様性が大事

 

 

今まで日本の街には多様性がありませんでした。

 

ある街は、全戸が一戸建て。

そして坪単価が高い。

ようするに高級住宅街。

住民は街の中にアパートが建つことに反対します。

アパートが建つと、若い人が住む。

若い人が住むと騒がしい、自治会にも入らない。

そしてゴミ出し等のルールを守らない、
得体の知れない人がウロウロするので、若い人を敬遠する。

実はアパートは嫌われています。

そしてわが街は高級住宅街と自慢する。

 

 

本当に全戸一戸建ての高級住宅街が良い街でしょうか?

 

 

でも、そんな街が高齢化するとどうなるのか?

 

住民に地域の課題を聞くと「高齢化」との回答。

町内会の議論では「若い奴がいないんだよね・・・」という言葉が飛び
交う。

 

多様性のない街は一気に高齢化してしまうのです。

そしていつかは活気を無くし、気が付けばゴーストタウン化する。

 

街が衰退すると、お店もなくなってしまいます。

 

これは、住宅街の中にお店があると環境が悪くなるという考え方がある
為に、住区の中にセンターをおいてお店をつくる。

 

でも、高齢化した上に子供が街から巣立っていくと急速に購買力が低下
し、お店は採算が悪化して撤退する。

そして住区からお店がなくなるわけです。

 

採算ベースで事業をしていくバージョン1のお店ではなく、地域密着型
のバージョン2のお店が街の中にたくさんあれば利便性を少しずつ取り
戻すことが出来ます。

 

街を多様化していくことは、高齢化に対応するためにもとても重要です。

 

若い人は坪単価の高い住宅は購入できません。

賃貸アパートがないと若い人は街には住んでくれないのです。

 

でも最近は高級住宅街に似合うカッコいいアパートもつくっています。

 

地域密着型の店舗をつくっていくためには、建築協定や地域協定を見直
さなければなりません。

 

街に様々な多様性があればこそ、多様な人々が一緒に住むことが可能に
なります。

 

日本人は、もっと自分の住環境に気を付けるべきなのではないでしょう
か。

 

気にしないから自分の住む街がすぐボロになってしまう。

 

街が高齢化する、ボロになるのを防ぐのは街の多様性。

 

ちょっとした気付きから多様性も含めて、地域をもっと住みやすいもの
にする活動をやっていくことが、街を持続可能にする秘訣かもしれませ
ん。

 

今のこの国の国力を考えると、次から次へと新しい街をつくることには
限界を感じます。

 

今住んでいる街をいかにつくりかえていくのか・・・・

 

それにはちょっとした気付きが必要なのかもしれません。

 

まずは、地域の建築協定を変えて、地域住民の為の居場所をつくる。

 

自分の街の住環境をもっと気にすることから、地域のコミュニティが
生まれるかもしれません。

 

 

画像素材:PIXTA  住み慣れた自宅と街が一番

 

 

地域で幸せをつくる

 

 

今までの社会は、高齢者の皆さんがたくさんいなかった。

社会の中にこんなにたくさんの高齢者の皆さんがいる今の社会では、今
までと違う考え方をしていかないといけなくなったわけです。

 

今までの社会がバージョン1だとすれば、バージョン2の社会を創り出
さなければならなくなったといえます。

 

昨今、自然災害が猛威を振るっています。

 

阪神大震災が起きた時の高齢化率は、まだ20%を下回っていました。

 

でも、東日本大震災の時には、高齢化率は20%を大きく上回っていて、
街全体が被災するとせっかく生き残っても、弱い立場のご老人から亡く
なっていくそうです。

 

仮設住宅を建てただけではだめで、買い物が近くでできたり、医療や介
護を近くで受けることが出来ないと困る。

 

街がちゃんとしていないと弱い立場である高齢者から弱っていく。

 

こんな自然災害で苦しむ地域で活躍したのは、コミュニティでした。

 

コミュニティとは、地域で困ったことが起きた時にそれを助ける動きが
できること。

 

被災して初めて会った方々が、少しずつ自分でできることをやること。

 

それがコミュニティの始まりだったようです。

 

コミュニティとは、一言でいうと可能性

 

 

地域にコミュニテイ施設はあるものの活用する人は限られています

 

 

何かあるとみんなで助け合って、問題を解決する。

 

また、コミュニティは地域の楽しみをつくることもできます。

 

例えばお祭り。

 

この国のお祭りは神様のために集まることから始まり、いろいろな形で
広まりました。

 

仮設住宅では、コミュニティ(広場)でお茶を飲んで楽しむ女性の姿が
よくみられるそうです。

 

コミュニティが居場所をつくり、居場所がコミュニティをつくる。

 

コミュニティや居場所は、家の中に人を籠城させない仕組みとなります。

 

家の中と外とをつなぐ仕組みともいえるのです。

 

そう、孤立させないための仕組みともいえます。

 

地域にとっての「地域のリビング」のような存在があることで、この孤
立は防げます。

 

東日本大震災の仮設住宅では、住宅の合間につくった広場が、女性の高
齢者にとっての「地域のリビング」になっているそうです。

そこで皆さんお茶を飲みながら歓談する。

 

高齢の男性はというと、意外にも仮設住宅内にあるコインランドリー。

洗濯や衣服を乾かす間にちょっとした話が始まる。

そんな中で、お互いの存在を知り、能力を知る。

 

案外この能力が地域やコミュニティの役に立ったりするそうです。

 

・あの人は昔、英語の先生だったそうよ

・あの人は、日曜大工がとても得意らしい

 

これも一つの可能性です。

空間ができるとコミュニティができる場合もあります。

 

ある適性のある人たちが考えるとコミュニティの為の空間ができる場合
もあります。

 

その空間でできるコミュニティは地域の問題を解決できる力を秘めてい
ます。

 

実はコミュニティは、国がお金をかけてやっている福祉政策を代替えで
きる力を持っています。

 

地域のコミュニティは、生活支援や介護支援そして見守り等の福祉活動
の代替え機能も持っています。

 

国が中心になって進める施策もあります。

自治体が支援する仕組みもあります。

でも、地域のコミュニティでもできることもありますし、個人でできる
こともあるのです。

 

自覚を持った人が地域を支える人になれるのです

 

だからこそ、少子高齢化への対応のステージを見直すべきかもしれませ
ん。

 

・国や自治体がやるべきことのステージ

・コミュニティが取り組めるステージ

この国の現状を自覚した個人が取り組めるステージ

 

このような多様性をもった動きが出来なければ、この国を救うことはで
きないのではないでしょうか。

 

国や自治体に任せきるのではなく、コミュニティや自覚をもった個人の
力を使う。

 

その中から、地域を作り直すコーディネータが生まれるかもしれません。

 

これこそが、この国を救う原動力になるような気がします。

 

今までの「公共」ではなく、多くの新しい「公」が地域で活躍する。

 

そんな時代を期待せずにはおられません。

 

今回の記事も最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

 

 

セミナー風景

 

 

セミナー会場は、いつもの多摩センターにあるショッピングモールの
中で実施しました。

 

大月先生、とても熱く語って頂きました。

持ち時間を1時間近くもオーバー。

何が先生をこんなにも熱くしたのかはわかりませんが・・・

 

 

最後に大月先生のご本をご紹介しておきます。

記事にご興味を持たれた方は、是非手に取ってみてください。