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リノベーションの神髄

2020年02月10日
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リノベーションとは

 

リノベーションという言葉を最近よく耳にするようになりました。
今までは住宅にしても、施設にしても、リデザインとかリフォームと
いう言葉を使っていたのですが、リノベーションという言葉を聞くように
なったのはこの10~20年くらい前からかもしれません。

厳密な定義はないものの、どうやら「大がかりなリフォーム」のことを
指すそうです。

ただ設備が古くなったから取り替えようとか、壁が汚れたから綺麗に
しようとかいう単なるリフォームというのではなく、そこに住む人の
生活スタイルや心身状態に合わせた新しい住まいづくりを指している
といえます。

建築家の中谷ノボル氏の著書「みんなのリノベーション」では、

「今住んでいる家を劇的にリフォーム」するとき、

「業者が中古を改修してデザイン住宅」とするとき、

「これから住まいを手に入れる人が、中古住宅をリノベーションして
暮らす」とき

の3つを定義していました。

今回の記事では、

「心身が少し弱っても自宅で自立した生活が可能になるように
自宅をリフォームする」

と位置付けてみたいと思います。

 

前述の中谷氏の著書の中に、なぜこのようなリノベーションが必要なのか
が説明されていました。

高度経済成長期に供給された住宅は、戸建てにしてもマンションにしても
メーカの標準仕様を完成品として提供しているために、基本は「既製品」
なのだそうです。

ライフスタイルや好みがこんなにも多様化する中で、自分の暮らしを
既製品に合わせることに不自由を感じている人が増えてきているそう
です。

ライフスタイルといえば、高齢期に入る間際にそれは大きく変ります。

子供たちが巣立ち、体も少しずつ衰えてくるこの頃は、多様性が無くても
自宅に対する要望も変わってきます。

また、長寿化の影響は介護も含めた家のしつらえの変更を必要として
いるのです。

 

住宅双六 価値観の変化

 

最近は、住宅に対する価値観も大きく変ってきたといえます。

1970年代初めに、都市部を中心にして生まれた住宅双六という考え方が
あります。

昔はお正月になると子供達が遊んでいた双六に見立てて住まいを
表現したものです。

この住宅双六、建築家の上田 篤先生が描いたものです。

 

現代住宅双六(上田篤)1973年 朝日新聞

 

双六の振り出しは、「都会の単身アパート暮らし」からスタート。

つぎに結婚して「ファミリータイプの賃貸マンション」を経て、
「分譲マンション購入」。

そして、「マンションを転売して郊外に庭付き一戸建て住宅」を所有して、上がりとなる人生模様を描いたものです。

 

高度経済成長期にはこのようなコースを理想とする意識が生まれ、
定着しました。
現在は社会情勢が激変し、少子高齢社会の広がりとともに不安定な
雇用実態を反映して、住まいに対する意識は大きく変わりつつあります。

そんな社会情勢の変化を反映して、上田先生は住宅双六をリニューアル
しました。

なんと2007年に34年ぶりに発表された新・住宅双六では一つだった
上がりが6つもあるのです。

 

「都会(超)高層マンション余生」
「海外定住」
「農家町屋回帰」
「老人介護ホーム安楽」
「親子マンション互助」
そして、「自宅生涯現役」

 

新・住宅双六(上田篤)2007年 日本経済新聞

 

この自宅生涯現役を支えるのが、自宅のリノベーションということに
なります。

そして何も自宅内での事故防止や介護の為の高齢対策だけで、自宅を
リノベーションしなくてもいいのです。

子供や孫が遊びに来てくれた時に便利なしつらえ、
子供の世代が親の家を引き継ぐためのしつらえでも、
リノベーションは効果を発揮します。

多くの子供世代が、親が亡くなっても親の家に住みたがりません。

なぜならば、家のしつらえが自分たちの理想とは違うからです。
時代の流れは大きく人の価値観を変えてしまいました。

そしてその家は、今大きな社会問題になろうとしている空き家になって
しまいます。

 

もし、今住んでいる家がリノベーションに適合しなければ、逆に中古物件を見つけてきてリノベーションする方法もあります。

海外と比較すると、日本では中古物件を比較的安くで手に入れることが
可能です。

日本の住宅は築30年経てば、住宅としての資産価値はゼロになってしまい、土地の評価額だけになってしまいます。
住宅を売る方にとっては厳しい条件でも、買う方にとっては有利な条件で
あるともいえます。

自宅を売却して新規物件を買うのが難しければ、中古物件を購入して
リノベーションするという手もあるのです。

最近若い世代の間では、家の購入に対する意識が大きく変ってきて
います。
長期間のローン返済に苦しむ親の苦労を見てきた多くの子供世代は、
稼いだお金を親世代のように全て住宅取得の為につぎ込もうとは
考えてはいません。

価値観そのものも変わろうとしています。

若い世代の多くは車も持とうと考えていないそうです。
そもそも都会に住めば車が無くても生活は十分にできます。
必要な時にはシェアリングで車を使うこともできます。
持つことよりもシェアすることを選択する人が確実に増えています。

この価値観が大きく変わった時代にも自宅のリノベーションや中古物件を
活用したリノベーションは高齢化に悩む社会や地域の活性化に役に立つ
のではないでしょうか。

住まいに関するコストも大幅に削減することも可能です。

 

少し違う観点で考えると、この自宅のリノベーション、地域に住む
高齢者の方々にとっても役に立つのですが、地域の建築(設計)事務所や
工務店、ハウスメーカや建材メーカ、不動産関連事業者の仕事を
増やす機会になることは間違いありません。

高齢期に対応する為の自宅のリノベーションは、高齢期の生活の質を
向上させるだけではありません。

在宅における怪我の予防や介護予防等、医療や介護といった社会保障
コストを軽減させる可能性もあるのです。

当然のごとく、前述のように地域経済の活性化につながる可能性もあると
いえます。

そして一般の家屋だけでなく、地域にあるそれなり規模を持つ建物や施設
にもこの考え方を当てはめることが可能です。

自治体の財政は一部の自治体を除いて、依然厳しいものがあります。

住民の為の地域センターや図書館等の公共の施設の建て替えには多額の
コストが必要です。
しかし、リノベーションならコストを大幅に削減できる可能性があります。

今、まさに地域の家屋や建物・施設をリノベーションして福祉転用しようという動きが出始めています。

地域の行政やNPO法人等の組織だけではなく、ここでも大学の研究者の
皆さんが必死に知恵を絞っています。

 

リビングラボ

 

このリノベーション、地域の住民・組織や住宅・不動産関連の事業者に
役立つものだけではありません。

多様性の時代にあって、真の顧客ニーズを知る機会にもなります。

このリノベーションは、家屋や建物の中に使う設備や照明・電気製品等に
ついても、少子高齢化と多様性がマッチングした時代の顧客ニーズを知る為の実験場になる可能性を秘めています。

北欧を中心に欧州では「リビングラボ」という活動が盛んです。

この社会実験場なる活動は、これから日本でも増えていくと考えられ
ます。
地域のリノベーションは社会実験場としての機能も有しながら、
超高齢化が更に進展するこの国において新たな消費を生み出す
可能性すらあるのではないでしょうか。

商品とサービスが溢れる時代になりましたが、最近の革新的なヒット商品は、マーケティングや市場調査からは生まれていません。

高齢化社会対応のヒット商品は、このリノベーションの動きから生まれてくるような気がするのは筆者だけでしょうか。

 

お勧めの書籍

 

記事の最後に、前述の中谷 ノボルさんの書籍とともに、研究者の皆様が
施設のリノベーションについての研究成果をまとめた書籍をご紹介して
おきます。

以前の記事でご紹介した大阪市立大学の森先生はじめ多くの大学の
研究者たちによって書かれたとても参考になる本ですので、是非手に
とってみてください。