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在宅というKEY-WORD

2020年08月11日
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新しい生活様式という言葉を違和感なく使うようになりました。

 

「三密状態を避ける」「ソーシャルディスタンス」

 

でも、実際三密状態になっているところはたくさんあります。

 

電車(公共交通機関)、夜の繁華街(居酒屋等)、通勤ラッシュ時の
駅構内等々・・

 

でも、よくよく考えると病院もそうだと気付きました。

 

筆者の通う東京の病院も、地域の中核病院でもあり、コロナ治療の最前
線。

 

院長先生は、よくテレビにも出ています。

 

院内に隔離されているといっても、コロナ患者が存在していることこそ、
ある意味恐いところもあります。

 

そんな感染の危険性があるところに行くのは、やはりリスクが高い。

 

感染すると重症化しやすい高齢者の皆さんや基礎疾患を持っている方々
からすればできる限りリスクを冒したくない。

 

そんなリスク回避が可能になるKEY-WORDがあります。

 

そのKEY-WORDは、「在宅」

 

今回の記事はこの在宅というKEY-WORDについて、皆さんと一緒に考え
てみたいと思います。

 

 

考えさせられた寄稿文

 

 

先日、日本医師会のCOVIT-19有識者会議のサイトを見ていた時に、大
学の研究所で勉強していた際に大変お世話になった(今でもお世話にな
っているのですが)先生の寄稿文を読ませて頂く機会がありました。

 

そこには筆者が驚くことが書かれていたのです。

 

~以下寄稿文からの引用~

 

現在、新型コロナウイルス感染者は若い世代が中心であり高齢者が外出
を自粛して自衛していることが伺われるが、「三密」を避け「ソーシャ
ルディスタンス」を維持する生活、いわゆる「新しい生活様式」が、
1年半以上も続いたら、高齢者の自立度は全体として悪化する可能性が
ある。

 

私の身近な在宅医の情報からも、新型コロナウイルス感染症流行以降、
高齢者が二階から降りられなくなったので往診に来てほしいといった事
例が出てきたというような話を耳にしており、高齢者の心身の自立度等
に悪い影響が生ずることが懸念される。

 

新型コロナ関連虚弱死の増加を含めて今後の高齢者の心身の状況を注視
し、必要な対応の確立が急がれている。(要点のみ記載)

 

上記の文章を読んで、筆者は少し恐ろしくなりました。

 

新しい生活様式が長引けば長引くほど、高齢者の方々の生活は厳しくな
るということになるのです。

 

自らの自立度を上げるために、様々な努力をしてきた高齢者の皆さんが
家に閉じこもらざるを得ない状況になることで、逆に自立度を下げるこ
とになるのです。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes コロナの時代、まだ先の見通しはつきません

 

 

 

それでも閉じこもらずを得ない

 

 

感染したら重症化する可能性の高い高齢者は閉じこもらざるを得ない。

 

第2波が到来している兆しがある現在、感染することを嫌う高齢者は家
にいるしかないという状況なのです。

 

今の国の仕組みは、高齢者がコロナウイルスに感染したらすぐに入院と
いうことになる為に、在宅療養中等の高齢者は本人の意思にかかわらず
入院を余儀なくされることになるのです。

 

若者等の軽症者は、ホテル等の施設で経過観察という国の政策とは真逆
の対応しかないのが実態なのです。

 

そして、病院に新型コロナウイルス感染患者として入院した場合、家族
との面会もできず、もし亡くなった場合には最後のお別れもできないま
まお骨となって家に帰ってきたといった悲しい話がテレビでも報道され
ていました。

 

高齢で最後を迎えたい場所はどこかというアンケートの結果、自宅とい
う答えが圧倒的に多い中で、家族にも看取られることもなく、最後を迎
えることはとても悲しいことだと思います。

 

それゆえ、高齢者の皆さんはできる限り外出できなくなっているのです。

 

そして、20代、30代の若者中心に感染が急拡大している状況が、も
っと不安感を煽ることにもなっています。

 

今回、国も経済と感染防止の両輪で考えると言い張り、明確な対応がで
きていません。

 

その結果、高齢者の皆さんはさらに窮地に陥ることになるのです。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes  でもその先には希望の光もかすかに見えます

 

 

 

在宅は窮地を救えるのか

 

 

コロナの影響で、家に閉じこもらざるを得ない。

 

でも、家に閉じこもると自立度が下がる。

 

この矛盾した関係をどう解決するのか?

 

対策としては、自立度を下げない為の在宅対策と自立度が下がってしま
った時の対策に分かれます。

 

前者には、自宅内での運動、

そしてオンラインでの社会参加等があります。

 

後者は、在宅医療、在宅看護、在宅介護等の在宅サービスです。

これらのサービスを総称して在宅ケアとも呼ばれています。

 

双方ともIT(ICT)の活用が不可欠です。

 

在宅医療は終末期(end of life)の一つの医療の形として始まったようで
す。

 

しかし、これから都市部で後期高齢者の数が爆発することを考えると、
終末期だけをターゲットにしたものでは数的にも質的にも不十分です。

 

ましてや、コロナの時代に疾病弱者を救済する為には考え方を大きく変
える必要性があるのではないかと筆者は考えています。

 

前述のお世話になった先生の寄稿文の中にはこんな表現が使われていま
した。

 

治す医療(病院)」 ⇒ 「支える医療(在宅医療)

 

コロナの時代には、この在宅医療が非常に重要になってきます。

 

そして治す医療と支える医療の連携も必要になってきます。

 

この日本でも地域包括ケアの体制整備がかなり進んできました。

 

この在宅という考え方が進めば、住んでいる地域を病棟や介護施設と
捉えることもできます。

 

住み慣れた地域で、そして自宅で必要なサービスを受けながら、少し弱
っても自立した生活ができることは素晴らしいことです。

 

在宅 = 支える

 

という考え方に立てば、医療も介護も違ったものになるかもしれません。

 

そういう意味では、これから仕組みや基準、体制といったものの整備を
進めることがとても重要になります。

 

そして、筆者が常々訴えている在宅で医療や介護を受けられる家の中の
しつらえを整えることも、とても大事なことになってきます。

 

 

画像素材:Jim Mayes  衆知を集めれば、希望の光は大きくなります

 

 

 

24時間365日

 

 

以前の記事でご紹介した北欧デンマークの高齢者介護システムでは、医
療も介護も24時間365日普通に提供されていることをご紹介しまし
た。

 

日本でも緊急医療体制は構築されていますが、一般の医療や介護が24
時間365日で提供されているケースはまだまだ少ないのが実態です。

 

最近地域でも高齢化に対応して、在宅サービスを受けられるものが増え
ています。

 

在宅介護は言うまでもなく、歯医者さんを含む医療、散髪や理容、そし
て様々な生活支援サービス。

 

でも、その殆どが24時間365日ではありません。

 

この在宅というKEY-WORDを考える時、24時間365日という仕組み
をセットで考えなければならない時がもうすぐに訪れると思います。

 

2025年問題、地域から都会へと移り住んだ団塊の世代が後期高齢者
となる頃。

 

そして、団塊の世代が85歳を超える2035年には更に難しい状況に
なることが予想されています。

 

これは、団塊の世代だけでなく、団塊の世代を親に持つ団塊ジュニア世
代にも襲い掛かる大きな課題です。

 

今回の記事では、在宅というKEY-WORDで皆さんと考えてみました。

 

コロナの時代、経済との両立が難しく、更に消費が落ち込む厳しい状況
です。

 

しかしながら冷静に考えると、我々がやれること、やらなければならな
いことは山ほどあるのだと痛感させられました。

 

もしかすると、「在宅」という言葉の中には、大きな需要とともに新し
い雇用と市場が生まれる可能性が秘められているかもしれません。

 

コロナの時代、そんな前向きな考え方が大事なのかもしれないですね。

 

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

 

<引用文(先生の寄稿文)のご紹介>

日本医師会 COVID-19有識者会議 サイト

寄稿文テーマ:COVID-19の高齢社会への影響について

(投稿者)

辻 哲夫先生 東京大学高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究セン
ター 客員研究員
(2019年度まで東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授)

 

筆者が2年間お世話になった志の高い素晴らしい方(先生)です。
今でも年に2回情報交換(単に説教を食らっているだけかも(笑))を
させて頂いています。

ご興味がある読者の皆様も、是非読んでみてください。

 

 

次回の投稿は、8月16日頃を予定しています。

次回の記事は、この国に巣食う「先送り」のシステムについて取り上げ
る予定です。

コロナの問題だけでなく、災害対策や社会保障に至るまで、この国には
先送り、先延ばしの体質が染みついています。

なぜそうなるのか、どうすれば良いのかを読者の皆様と一緒に考えて
参りたいと考えています。

どうぞよろしくお願い致します。