オンラインを使いこなす
先日新聞に、高齢者施設での面会に関する基準が設けられることが報じ
られていました。
コロナの感染拡大で厳戒態勢を敷いてきた高齢者施設。
筆者も仕事柄いくつかの施設を訪問する機会がありましたが、本当に
厳重な管理体制が敷かれていることが多く、中には2週間前から体温を
測定して健康状態とともに報告しなければならないところもありました。
コロナに感染すると重症化しやすい高齢者が集まるところなので、ある
意味仕方がありません。
そんな施設に入る高齢者の皆さんの楽しみは、なんといっても家族との
面会でした。
子供や孫の笑顔を見ることを楽しみにしている方が多いのです。
しかし、今回のコロナ禍で全く会えなくなってしまいました。
上記の基準検討は、面会部屋の設置や施設入場の為の面会基準を定める
ものですが、もっと簡単に家族との面会ができる方法があります。
そうオンラインです。
今回の記事は、このオンラインの活用について取り上げてみたいと思い
ます。
オンラインには課題解決の為のヒントが隠されている
筆者も最近オンラインでの会議やセミナーの数が激増しています。
直接会って話すことに重要性を見出してきたこの国の人にはまだまだ
馴染めない面はあることは事実です。
でもオンラインで済ませられることも多いのではないでしょうか。
逆に簡単には会えないけれど、オンラインなら頻繁に会えるという嬉し
い面もあるかもしれません。
上述の基準をつくることも感染を防止する為には大事なことかと思いま
すが、オンライン用の部屋があり、パソコンとオンライン回線、そして
大画面テレビがあれば、施設であってもいつでも面会は可能です。
そして家族から高齢者の方々に感染することもありません。
家族との面会ができず寂しい想いをしている方々に、もっと生きがいを
感じてもらうことも可能になります。
高齢者であっても、もっとITを活用する。
最近は、認知症予防のためにいろいろなゲームがあるそうです。
パソコンを使ってバーチャルリアリティーゲームを楽しみながら認知症
予防をする高齢者も増えていることを考えれば、パソコンを楽しく活用
することは有意義なのかもしれません。
医療も変わる
政府もこれからオンライン診療に力を入れていくそうです。
でもまだまだオンライン診療を実施している医療機関は少ないのが現状
です。
これからさらに高齢化が進んだ場合、都市圏を中心に病院に行けない
高齢者が増えていきます。
在宅診療ができる体制を構築するまでにはまだまだ時間がかかる中、
今注目されているシステムがあります。
それはオンライン看護です。
テレナーシングというカッコいい名前を付けているところもあります。
コロナの影響もあり、病院に足を運ぶことをためらう高齢者が増えて
いるそうです。
早めに病院に行かないことで、症状が悪化するケースが多いことを専門
家が指摘しており、深刻な事態になる可能性すらあります。
今ネット上では、医師がオンラインで医療相談を実施する仕組みが広が
っていますが、多くは顔が見えない文面によるやりとりです。
やはり医療関係者が対面で相談にのってくれるから安心感があるのでは
ないでしょうか。
まだまだオンライン診療を実施している医療機関が少ない中で、オンラ
イン看護はその補填機能を有するものだといえます。
経験を積んだ看護師が、管理者(医師やベテランの看護師)の指導の下
でオンラインによって相談者に応じる仕組みです。
感染を心配することなく、医療の専門家に相談をする。
その相談相手がいつも同じであれば、かかりつけの医師の元にいくのと
遜色がありません。
このオンライン看護の仕組みは始まったばかりですが、高齢化が進む
この国にはとても必要なものだということは間違いありません。
今、あらゆる業界が参入して高齢者の見守り事業が実施されています。
でも、その中身は安否確認が殆どで、日常の健康管理まで実施している
ものは殆どありません。
このオンライン看護は、体調を気にする時に相談するだけでなく、日常
の健康管理を含めた安否確認をも兼ねています。
遠方に住む家族や地域の医療機関、地域の福祉関連機関とこのシステム
を連携させれば、高齢者を守ることが可能となります。
これからも独居の高齢者が増えていくことを考えると、このオンライン
看護システムの早期普及が望まれます。
コロナの影響で感染を恐れて病院に行けない高齢者や高齢の親を気遣う
方々がオンラインで気軽に看護師さんに相談できる時代がきました
上の画像は、オンライン看護(テレナーシング)の様子です。
素材提供:一般社団法人ライフコネクト
今迄の医療は、各臓器別の専門医による「治す医療」が中心でした。
かかりつけ医である開業医もある程度専門分野に分かれており、紹介状
を持って行く地域医療支援病院や特定機能病院も治す部位に合わせて
専門分野が決まっていました。
ようするに病気を治すことに重点が置かれてきたのです。
この病気を治すことに重きを置いた医療の問題点は明確です。
急速に高齢化するこの国で、高齢者の皆さんが使う医療費(社会保障費)
が大きな問題になっています。
以前の記事でも、高齢期での医療費はそれまでの若・中高年期で使う
医療費に匹敵する額であることをご紹介しました。
高齢化の進展は、医療費が重くのしかかる構造的な問題を抱えます
これからも介護を含めた社会保障費は右肩上がりで増えていきます。
ただ冷静に考えると、全ての高齢者が病気になったり、介護を受ける
わけではありません。
介護だけをみても、介護を必要としている高齢者は全体の2割なので
す。
これを踏まえた上で社会保障費を考えると、いかに高齢者の健康を
管理し、健康状態を長く維持することが重要であることがわかります。
社会保障費が公費だけでなく、自己負担や個人が払う保険料によって
支えられていることを考えると、この健康維持はとても大事なことで
すね。
高齢者自身にとっても、いつまでも元気で、生きがいや遣り甲斐を持っ
て社会に貢献できる日々を過ごせるほうがいいに決まっています。
そう考えると、これからの医療の姿は変わってくるのではないでしょう
か。
これからは医療の考え方を大きく変えていく必要があります
「治す医療」から「生活を支える医療」へ
生活習慣病の予防や介護予防等の保健分野の役割が増す中で、この生活
を支える医療が今必要になってきているのです。
それを支えるのが、オンラインによる診療や看護、介護です。
このオンラインシステムと在宅のシステムが組み合わさり、それが24
時間365日で提供されれば、高齢者にとっても家族にとっても安心で
す。
結果的には、社会保障費の上昇に歯止めをかけられる可能性すらありま
す。
このオンラインシステム、普及までにはまだまだ時間はかかるかもしれ
ません。
コロナ禍の影響で、医療従事者の数が足りなくなる事態も考えられます。
筆者は、ここでも高齢者の活躍の場所があるのではないかと考えていま
す。
サラリーマンと同様に医療従事者の皆さんにも「定年」という言葉が
あるそうです。
定年後のサラリーマンが活躍の場所を探しているのと同じで、医療従事
者の皆さんも定年後の活躍の場所を探しておられます。
このリタイヤされた医療従事者の皆さんの活躍の場所が、オンライン
システムにあるのではないでしょうか。
長年積み上げてきた経験が、この少子高齢化に悩む社会を助ける力に
なる。
地域社会にも、高齢期を迎えた医療従事者の皆さんにも、大きく貢献で
きる医療オンラインシステム、これからの普及に期待してみたいと思い
ます。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。
次回の記事投稿は、11月18日頃を予定しています。
11月最初の日曜日、大阪都構想の是非をめぐって選挙が行われました。
大阪で将来起こるであろう問題を市長も知事も心配していましたが、
次回の記事では大阪を含めて大都市でこれから起こるであろう問題に
ついて考えてみたいと考えています。
是非お付き合いください。