第3波襲来 介護施設は守れるのか
マスコミが第3波に突入している旨の報道をし始めた11月中旬、筆者
は介護施設の体験学習に参加させて頂きました。
場所は神戸市、日本でも著名な医療グループが病院と共に運営する施設
でした。
午前中はデイサービス、午後は老人ホームと急ぎ足での体験学習でした
が、とても勉強になりました。
今回の記事は、施設の体験学習を通じて感じたことを率直に記事にして
みたいと思います。
元気なうちは介護施設等興味がない方が多いかもしれませんが、いつか
はお世話になる可能性があります。
どんなことをしているのかを知るだけでも、これから高齢期の人生を生
きていく上で大事な知恵の一つになるかもしれません。
読者の皆さんがまだお若い場合は、ご両親がお世話になる可能性大です。
今回は嫌がらずに興味を持ってお付き合いを御願いできればと思ってい
ます。
徹底した感染対策と健康管理
この体験学習の日程が決まったのは、20日程前。
その日から筆者は、朝晩と体温を測定し、日々の体調についてもきちん
と記録する等基本データの測定・体調管理を開始しました。
施設の中に入る為には、それだけ厳しいチェックが必要であることは
言うまでもありません。
コロナの潜伏期間が約2週間であることを考えると理解ができます。
デイサービスの現場では、朝9時過ぎから入所者の皆さんが続々と送迎
のミニバンに乗って到着していました。
デイサービスの利用者さんには、要介護者はいません。
悪くても要支援(要支援1~2)の方ですので比較的元気な方が多く、
杖を使う場合でも自力歩行は問題ありません。
(介護認定は軽症から順に要支援1、2、要介護1~5の7段階に分か
れています)
施設入り口では、感染対策が徹底されていました。
入り口で防寒着を脱ぐと、直ぐに手洗いとうがいを行いますが、持って
きた杖もアルコールで洗浄する徹底ぶりです。
そして利用者さんは、入り口から二手に分かれていました。
認知症の症状が出ている方々は別室でサービスを受けることになって
いたのです。
利用者の皆さんは各々自分の好みの場所があるらしく、職員の方々は
あらかじめその方の好きなドリンク(ウエルカムドリンク)をその場所
に用意していました。
ここでのカリキュラムは大体が決まっていますが、まず健康管理から
始まるようです。
飲み物を飲んで少し落ち着いた後は、徹底した健康管理が行われます。
血圧、体温、脈拍のチェックが全員を対象に行われていました。
この健康チェックが一番大事だといってもいいかもしれません。
自宅で決まった時間にセルフマネジメントをすることは難しいことを
考えると効果は抜群です。
血圧の高い方は繰り返し定期的に血圧チェックをしていることも大事
なことだと感じました。
一番の楽しみは入浴
健康チェックが終ると、いよいよ利用者さんが一番楽しみにしている
入浴です。
なぜ楽しみなのかわかるかというと、皆さんの表情が変わるからです。
男女に分かれて交代で入浴を実施しますが、入浴をしない方はその時間
を使って軽い運動を行います。
運動といっても椅子に座ってボールを使った簡単な運動です。
目的は、「転倒予防」「膝痛予防」「円背予防」「五十肩予防」です。
画像素材:PIXTA 座ったままでも結構な運動はできるんですね
でもやっぱり日本人、お風呂は皆さん大好きなようで、運動していても
待ちきれない様子でした。
]
入浴後職員の皆さんにドライヤーで頭を乾かしてもらっている間は笑顔
がこぼれます。
心身が少し弱ってくると、浴室への入り口が狭かったり、浴槽を跨ぐ
高さが高かったりするとなかなか介助なしに安心して自宅のお風呂に
入ることができない場合があります。
そういう意味では、触れ合いやコミュニケーションも大事ですが、安心
して大好きなお風呂に入れる喜びは利用者さんにとってとても大きいの
かもしれませんね。
お昼ご飯を食べた後も、リクレーションや軽い運動があり、おやつを
食べてから帰宅の運びになりますが、ここでは詳細に記すのは控えさせ
て頂きます。
施設利用中は、個人が自由に過ごせる時間もあり、読書や工作、塗り絵
や気に入ったメンバーとおしゃべりや碁を打ったりと自分の好きなこと
に時間が使えます。
このような触れ合いが認知症予防に一番効果があることは言うまでもあ
りません。
コロナの影響で感染を恐れてサービスを諦めざるを得ない方々が多くい
ることはとても残念なことです。
このサービス、身体的にも精神的にもとても大事だと感じました。
究極のサービス業
でもよくよく考えてみると、このデイサービスは究極のサービス業と
いえるかもしれません。
なにせ利用者の皆さんが来てくれないと、介護報酬という収入が施設に
は入ってきません。
ですから、利用者の皆さんがまた行きたいと思わなければ事業は成り立
たないのです。
そういう意味では、飲食業やサービス業と同じ性質のものだともいえま
す。
だからこそ職員の皆さんは、笑顔を絶やさないのです。
利用者さんが幸せを感じるサービスを提供する必要があるからです。
職員さんもそういう意味では真剣そのものです。(顔は笑顔ですが)
言葉が適切かどうかはわかりませんが、デイサービスは究極のサービス
業といえます。
だからこそ、薄給であってはいけないのではないでしょうか。
しかし、介護報酬は国の制度によって決まっています。
社会保障費の膨張とともにそれは増えることはなく、むしろ下がってい
くことが容易に予想できます。
ここに介護事業の構造的な問題が存在し、どこかで見直しが必要なので
す。
画像素材:Jim Mayes
体験させて頂いた医療グループのシンボルにもなっている花です
老人ホームはまさに戦場
デイサービスとは全く違う雰囲気を持っていたのが老人ホームです。
デイサービスとは違って、入所者さんは全てが要介護対象者です。
訪問した施設は「特別養護老人ホーム」ですので、基本は要介護3以上
の認定を受けた方が入所されています。
その為に、全ての利用者さんが車椅子で生活をしていました。
お風呂もデイサービスのようなほのぼのした雰囲気とは全く違います。
まさに戦場でした。
(言葉が適切ではないのですが、とにかく大変です)
職員さんたちの苦労がこの記事では書けそうにないのがとても残念です。
職員さんたちが懸命に頑張る現場の中で、筆者が強く思ったのは、でき
れば施設ではなく、住み慣れた自宅で介護を受けることができる方が
本人にとっても社会にとっても幸せなのかもしれないということでした。
施設であれば職員もいて、確かに安心です。
でもできるのであれば、車椅子であっても施設ではなく、できる限り
住み慣れた自宅で少しでも多くの時間を過ごせる方が良いのではないか
と感じたのです。
(確かに要介護度が高い皆さんには無理がありますが)
以前の記事でも少しご紹介した在宅看護・介護・医療制度の普及が待ち
望まれます。
少なくとも2025年問題が爆発するまでには目途を付けなくてはならない
のではないかと強く感じてしまいました。
そして、高齢者の単身世帯が爆発的に増加するまでに目途をつけないと、
介護施設は戦場を超えた状態になるかもしれません。
2つの施設を体験させて頂いた後、もう一つ筆者が気になった点を最後
に記しておきたいと思います。
デイサービスでは、職員も利用者さんもマスク着用である程度は感染防
止が徹底できていました。
ただ老人ホームでは、入所者さんはマスクを着用してはいませんでした。
外部との接点がないということもありますが、重度の介護者さんには
マスクの着用は難しいのが実情です。
でも一旦ウイルスが入り込めば防ぐ手立てはありません。
ここに難しさがあると感じました。
目に見えないウイルスをどのように防ぐのか?
基本の徹底だけでは無理があることに筆者は気付いてしまいました。
何か方策を考えなければならないと強く感じてしまったのです。
まだ高齢者施設では面会は禁止されています。
来所者には筆者のような徹底した健康管理が義務付けされます。
でもそれだけでは不十分なのです。
受け身ではなく、全ての人が高齢者の皆さんのことを考えて自ら実践
する。
この前向きな考え方と行動がない限り、高齢者の皆さんを守ることが
できません。
残念なことに公共交通でもマスクをしない人間が散見され、夜の街で
クラスターが多発しています。
一人ひとりが社会の一員であることをもう一度自覚する必要があります。
高齢期の方々の殆どが持病を持っており、感染すれば重症化するリスク
が高いことはほぼ全ての人が認識しています。
しかしながら、今感染拡大を抑え込むことはできていません。
第3波の襲来で大きなリスクに晒されている高齢者の皆さんをどう救う
のか?
今回の記事は、読者の皆様にも真剣に考えて頂きたいと思い投稿させて
頂きました。
繰り返しになりますが、全ての人が社会の一員です。
その自覚を持って感染防止に取り組めば、感染拡大は防げるはずだと
筆者は考えています。
ただ悲しいかな、その自覚がない人、著しく欠如している人は、残念な
がらまだ多いのが実態です。
世界の中で高齢化のトップランナーとして走るこの日本が、高齢者を
どう守るのかを世界は注目しています。
皆様のご協力を切に願い、今回の記事を終わらせて頂きます。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。
次回の記事は、12月18日頃投稿予定です。
今回の記事は介護の仕事についてご紹介しましたが、この介護の仕事は、
実は多くの高齢者の皆さんの手によって支えられています。
元気な高齢者の手によって、心身が弱った高齢者を支えるということが
できているのですが、今回の感染拡大で介護現場で働く高齢者の皆さん
の離職が続いています。
感染すると重症化するリスクが高い高齢者の職員さんにとってはある
意味仕方がない事かもしれませんが、人手不足に悩む介護現場にとって
は厳しい状況が広がっています。
次回の記事では、このような現状についてご紹介してみようと思って
います。
是非お付き合いください。