2025年問題を考える リノベーション編 その2
今回の記事は前回の記事の続編として家のリノベーションについて皆さ
んと一緒に考えてみたいと思います。
前回の記事では家のリノベーションで重要なことは「家のエイジング・
イン・プレイス化」だと申し上げました。
具体的には家の中には様々なリスクが存在していました。
それもそのはず、誰も自分が高齢化することを前提に家を建てていない
からです。
自分だけでなく、住宅販売会社もしかりです。
最近になって住宅販売会社も高齢者住宅をたくさん建て始めていますが、
今まで建ててきた住宅は高齢期対応にはなっていません。
そんな家では何が心配なのでしょうか。
ヒートショックもそうですが、特に気になるのが住宅内での怪我の心配
です。
家の中で転倒して骨折し、入院した後から急に心身が衰弱していく方が
後を絶ちません。
その転倒事故は、家の中のどこで起きているのでしょうか。
実はとても意外なところで起きているのです。
転倒事故が起きている意外な場所
そう事故が起きているところは階段や段差のあるところではありません。
「居間」や「寝室」等段差もなく、モノも比較的少ないところで起きて
いるのです。
それもカーペットの端に躓くとか信じられないところで転倒事故が起き
ています。
信じられないでしょう?
高齢期になると足が上がらないのです。
だから躓く。
どうすればこのような転倒事故を防げるのでしょうか?
ここでもKEY-WORDをご紹介しましょう。
それは「糠漬け」と「良い住宅」です。
「ぬかづけ」と「よいじゅうたく」を知ったうえで対処できればリスク
を低減できますが、そのポイントは「動線(スペース)の確保」と「安
定姿勢」です。
日本の住宅の悪いところは機能や区画を分ける為にやたらと壁や柱等の
障害物が多いことです。
一つのところ(例えばトイレ)に行くために、扉を開けて廊下を歩いて
遠回りをしていかなければならないところが多いのです。
これでは動線が複雑になってしまいます。
もっと動線がシンプルになるようにしなければなりません。
動線がシンプルになること=スペースが生まれます。
スペースが確保されれば、転倒したとしても大きな怪我をする可能性は
低くなります。
日本の家のもう一つの問題点は収納が高所にあることが多い点です。
読者の皆様、お住まいの収納はどこにありますか?
台所にしても居間や寝室にしても収納場所は高い所にあります。
高所作業では不安定な姿勢にならざるをえない為に転倒等のリスクが
増えます。
高所収納から安定姿勢で対応できる低所収納への切り替えは重要です。
そして常に安定姿勢でいることは大きなリスク低減となります。
だからキッチンや洗面所等は座ってできるようにすることをお勧めした
いのです。
機能の近接化
もう一つお勧めしたいのが、機能の近接化です。
心身が弱ってくるとどうしても動くことが億劫になってしまいます。
そんな中でも、寝室とトイレと浴室が近くにあれば、そしてそこまでの
スペースが確保されていて安全なしつらえがなされていれば、動く意欲
も出てくるというものです。
残念ながら筆者の自宅も夜間にトイレにいくのに自室のドアを開けて
廊下を歩き、階段を下がって再び廊下を歩き、ドアを開けないとトイレ
には辿りつきません。
その距離なんと20m以上。
元気なうちは大丈夫ですが、心身が弱ってくると難しくなるだけでなく、
怪我のリスクを伴うようになるのです。
こう考えると、生活するうえで必要な機能(寝る・食べる・排泄・入浴
等)の近接化はとても大事なことだと思いませんか。
でも今の住宅はそうはなっていません。
そしてほぼ全ての機能に扉までついているのです。
それも車いす生活になった場合、とても不便な扉(開き戸)ばかりです。
子供が巣立ち、家の中には高齢のご夫婦のみ、そんなところで壁や扉は
必要でしょうか。
それよりは、エイジング・イン・プレイスの為に、
施設に行かなくてもいい為に、
子供たちに心配をかけないために、
家のリノベーションは必要なのではないでしょうか。
同時に怪我への対処だけでなく、被害が増えつつあるヒートショックへ
の対応等も考えておく必要があります。
ここまでは家のエイジング・イン・プレイス化について述べてみました
が、次は家のスマート化について少しご紹介してみたいと思います。
家のスマート化
これまでは、家のリノベーション化では怪我の予防に重点を置いてきま
した。
2020年、予想もしなかった新型コロナウイルスの出現で我々は別の
リスクにも対処することを余儀なくされました。
高齢でも社会への接点を絶やすことがないように活動してきた高齢期の
方々が大きな影響を受けています。
多くの高齢者施設でクラスターが発生し、人が集まるところでのリスク
が高まりました。
感染を恐れて病院にも行けず健康状態が悪化する事例も紹介されていま
す。
こんな時代だからこそ、高齢期でも新しい生活様式を導入すべきなのか
もしれません。
会社ではオンライン業務が導入され、人との接触を避けて仕事ができる
ようになりました。
高齢期の生活も同じように、オンラインを使って在宅で医療や看護、そ
して介護が受けられる時代になりつつあります。
今までも訪問介護や一部の訪問医療は存在していましたが、もっと質の
面でも量の面でも進歩していくのではないかと考えています。
ただ、まだ高齢者の皆さんのご自宅にはオンラインが活用できる環境は
普及していないのが実態です。
今後どのように進化していくかは、まずオンラインを導入していく方々
が増えていかないと見えてはきません。
そのためにも、オンライン医療や看護、介護等の新しいサービスをどん
どん使っていく必要性があります。
まだまだサポート体制は十分ではありませんが、このブログや2025
年問題研究所で様々新サービスをご紹介していくつもりです。
このオンラインを使いこなすことができれば、「脱 施設」が実現でき
るかもしれません。
筆者はオンラインが普及すれば、今の施設のサービスを大部分代行でき
るのではないかと考えています。
ここでデイサービスのサービスを事例にとって考えてみたいと思います。
下記にデイサービスのサービス内容を簡単に取り上げてオンラインで
代行した場合、どうなるのかを記述してみます。
①送迎 オンラインを使うので送迎は不必要となります
②利用時のバイタルチェック
検温・血中酸素濃度・血圧は自宅でも測定機器が揃えば自分でも測定は
可能です。
当然オンラインでデータも送信できますので、集中管理も可能です。
異常なデータを確認した場合の対処さえしっかりできていれば対応は
可能かもしれません。
③運動・脳トレーニング
実はユーチューブの動画等で施設に行かなくても殆どがサポート可能で
す。
カメラを使って適切な運動ができているのか確認できればオンラインで
も運動や脳トレーニングは可能なのです。
④昼食
配食サービスを使えば対応は不可能ではありません。
温かい食事を提供できるのかという課題はありますが、給食施設を持た
ない施設では殆どが冷凍食品を加熱処理している程度なのであまり変わ
らないかもしれません。
⑤入浴
入浴や排泄対応については訪問介護が必要です。
安全を確保しながらの対応になる為ここでは課題が残ります。
介護レベルによって対応は変わってきますが、重度でなければ施設対応
以外でもある程度対応できるかもしれません。
どのような問題点があるのかも含めて、高齢者宅にオンラインを導入し
て試行錯誤していく必要性があるのではないかと感じます。
新型コロナウイルスは突然消えてなくなることはなさそうです。
ワクチンが接種されても、また別のウイルスが出現するかもしれません。
この家のスマート化、エイジング・イン・プレイス化とともにこれから
の普及が望まれます。
施設に行きたくない人は意外と多いのです。
死ぬ迄住み慣れた自宅と地域で暮らすためには、家のリノベーションが
必須となりますが、施設を利用した場合は介護保険を使ってもそれなり
の費用は掛かります。
この自宅のリノベーション、どのように考えていくのかは難しいところ
がありますが、心身が弱ってしまってからでは遅いのです。
弱る前から知識を付けて、先手先手で対応していくことが重要です。
リノベーションで安全・安心を確保しながら、自分の健康を維持していく。
健康年齢を少しでも上げていく。
ここに高齢期での家のリノベーションの本当の効果がありそうです。
多元論
最後にもう一つの考え方を述べておきたいと思います。
今まで自宅か施設かという考え方を述べてきましたが、多様性の時代で
もあります。
二者択一の考え方ではなく、高齢期に入って自分の健康状態を考えなが
ら多元的な考え方もできるのかもしれません。
自宅のリノベーションを実施しておいた上で、それでも自宅での生活が
厳しくなった場合に施設を活用し、改善されればリノベーションされた
自宅に戻る。
そんな考え方もこれからはできるのではないでしょうか。
今後もこの自宅のリノベーション、情報を発信し続けていきたいと思い
ます。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
とても寒い日が続きます。
読者の皆様もどうかお体を大切にしてください。