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ヤングケアラーをどう救うのか

2021年05月02日
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高齢化の進展が暗い影を落とす出来事はたくさんあります。

 

どう考えてもいつまでも成り立たない「老々介護」

安定した生活を破綻に追い込む「介護離職」

これから急増するであろう「買い物難民」や「医療難民」

そして「単身高齢者世帯」も凄い勢いで増えています。

 

以前の記事でもご紹介したように介護の7割が家族や親族が担っている
という実態を知るだけでも深刻なものばかりです。

 

それに加えて最近さらに新たな課題が加わろうとしています。

 

それは「ヤングケアラー」の問題です。

 

親・兄弟や祖父母等の家族の介護をしている18歳以下の子供達のこと
をヤングケアラーと呼んでいます。

 

ヤングケアラーの子供たちが支えているのは、高齢化した祖父母だけで
はなく、うつ病等の精神障害や不慮の事故等で身体障碍を持つ親や親族
も含まれています。

 

2012年の統計で、ヤングケアラーの数が17万人を突破したという
情報がありましたが、最近のニュースでは、その数が中学生の17人に
1人に上り、高校生を含めると1日7時間以上家族のケアに携わる子供
たちが1割もいるという情報を耳にすると少し驚きです。

 

一学級40名弱であることを考えると、一つの教室の中に2人はヤングケ
アラーが存在するということになります。

 

日本ケアラー連盟の「高校生ヤングケアラー調査報告」によると、調査
対象の約半数がほぼ毎日家族や親族の介護があると回答しているそうで
す。

 

介護の度合いまではわからないまでも、中学や高校では受験も控えてい
るために本来の学業に対する影響も少なくないことが容易に推察するこ
とができます。

 

実際、欠席や遅刻が増える影響もあってか学力低下が顕著になっている
という報告もなされていました。

 

今後ますます高齢化が進展すること、そしてストレス社会や格差が広が
っていくことを考えると、ヤングケアラーの数は今後も増えていく可能
性があります。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes 北の大地にもようやく桜の便りが

 

 

 

自治体も動き出した

 

 

厚生労働省と文部科学省が連携してWebを使って調査した結果では、ヤ
ングケアラーの約6割はこの過酷な状況を誰にも相談したことがないと
話しているそうです。

 

誰にも相談できず、悩んでいる子供たちが多くいるということです。

 

そう、家族の中だけで対応するのは限界があります。

 

でも、なかなか家族の介護を周りに相談することは難しい事なのかもし
れません。

 

そんな中、対策に乗り出した自治体があります。

 

それは埼玉県です。

 

令和2年3月31日、県の条例第11号として「埼玉県ケアラー支援条
例」を施行しています。

 

全14条からなるこの条例の中に、ヤングケアラーに特化した条項があ
ります。

 

その内容は下記のとおりです。
(下記、埼玉県ケアラー支援条例から抜粋)

 

第8条 ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関の役割

 

1.ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、その業
務を通じて日常的にヤングケアラーに関わる可能性がある立場にあるこ
とを認識し、関わりのある者がヤングケアラーであると認められるとき
は、ヤングケアラーの意向を尊重しつつ、ヤングケアラーの教育の機会
の確保の状況、健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援
の必要性の把握に努めるものとする。

 

2.ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、支援を
必要とするヤングケアラーからの教育及び福祉に関する相談に応じると
ともに、ヤングケアラーに対し、適切な支援機関への案内又は取次ぎそ
の他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

 

 

要するに、学校をはじめとする関係機関はヤングケアラーの把握に努め、
把握ができた後は適切な対応やフォローを実施してほしいということな
のです。

 

NPO等の地域の支援団体に任せきるのではなく、自治体が、それも県単
位でこの活動を実施する意思を強く示すことが出来ていることはとても
すばらしいことだと感じました。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes 今こそ必死に頑張る若者を救う時かもしれません

 

 

 

コロナ対策で日々奔走している大野知事も頑張っているなと感心させら
れました。

 

この「把握する」という行為は、超高齢化と格差による貧困に苦しむ日
本社会において極めて大事なことであると筆者は考えています。

 

前述の日本ケアラー連盟さんでは、自治体(市町村レベル)でのヤング
ケアラーの実態調査を進めているようですが、まだまだ調査数は少ない
というのが実態のようです。

 

「把握する」という行為は、とても手間と時間を要する作業です。

 

でも、前々回の記事で読者の皆様と考えた「孤独」の問題も含めてどの
ように把握していくのかがとても大事になりました。

 

今コロナの影響もあり、民生委員(児童委員)等の地域の福祉活動は難
しい状況にあります。

 

こんな時期だからこそ、地域での絆を取り戻す活動が必要なのかもしれ
ません。

 

これからこの国を支えていく子供達には、しっかり勉強をしてもらわな
ければなりません。

 

 

学ぶことも諦めない

 

働くことも諦めない

 

 

そんな社会を築くことは我々大人の大事な仕事だと思うのです。

 

 

 

画像素材:Jim Mayes
若者に青い空(希望)を見せてあげるのは大人の使命かもしれません

 

 

 

政治に任せきるのではなく、地域の活動に任せきるのではなく、自分に
何ができるのかを真剣に考える時代になったのではないでしょうか。

 

まずは身近に困っている人がいれば、救いの手を差し伸べる。
自分にできる範囲でいいのです。

 

今回の記事は貧困だけでなく、家族の介護に苦しむ子供たちのことを考
えてみました。

 

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。