NNKよりも恐ろしい言葉
先日、新聞でとても悲しい記事を読みました。
高齢化が進むこの国で、とうとうこんな言葉を聞くことになるとは。
以前の記事でNNK(認知症・寝たきり・孤独死)というショッキングな
悲しい言葉をご紹介したことがありましたが、それ以上のショックを受
けました。
紙面にはとても悲しい言葉が躍っていたのです。
その言葉は、「同居孤独死」
記事によると、家族等の同居者がいるにもかかわらず死亡後すぐに発見
されない「同居孤独死」が、2017~2019年に東京23区と大阪
市、神戸市で計552人確認されていたことがわかったそうです。
同居者が認知症や寝たきりの為、同居人が死亡したことを周囲に伝えら
れない例がある他、介護していた人に先立たれ介護されていた人が衰弱
したケースもあると記事には書かれていました。
老々介護の末、共倒れした可能性があることを考えると、事態は深刻で
す。
記事を見ると、この「同居孤独死」の全国規模での調査はなされていな
いようで、全国規模で調査したらいったいどんな恐ろしい数字が出てく
るのだろうかと少し心配になりました。
なぜこれほどの方々が自宅で悲しい最後を迎えるのでしょうか?
そこには施設に入りたくても入れない実態があるのです。
画像素材:フォトサリュ 日本の経済成長を象徴する団地も老朽化
こんな古びた団地の中にも老々介護で苦労している方々がいるのかも
今、施設で起きていること
筆者が勉強している施設でも、高齢化の進展で平均年齢が上がり、入所
者の皆さんがバタバタと倒れ、緊急入院やご逝去が続いています。
そんなことが日常茶飯事のように起きる施設ですが、入りたい方が殺到
しているかというと実はそうでもないのです。
実は、ある研究機関の報告によると、介護付き有料老人ホームの入居率
は全国平均で87%である一方、約4分の1の施設が入居率80%未満
なのだそうです。
え! 一杯じゃないの?
と思うかもしれませんが、常に満床で待機者が大勢いるのは、入居一時
金が不要で低価格で利用ができる特養(特別養護老人ホーム)くらいで
す。
ようするに先日の記事でも書いたように施設に入るのもお金次第という
ことです。
筆者が勉強している施設でもこんな問い合わせが増えています。
「生活保護(者)でもいいか?」
その言葉の裏には、入りたくても入れない実態が隠れています。
そして、施設に入れない結果が、老々介護の末の同居孤独死につながっ
ている可能性があるのです。
これが事実だとすれば、これはこの国が抱える構造的な課題であり、
高齢化の進展とともにこの課題は大きくなるということです。
画像素材:フォトサリュ
公園からは子供たちに姿が消え、そして高齢者の姿も消えていきます
老々介護は日常の散歩という楽しみさえも奪っていくのです
この国が抱える構造的な課題
お金がなければ施設に入れない状況はこれから改善されるのでしょうか?
国は全世代型社会保障へと大きく舵を切り、方向の転換を図っています。
高齢者が負担する医療費や介護費はこれから上がっていくことが容易に
予測することができます。
ようするに高齢者の皆さんの生活は、改善されるどころか悪化していく
可能性すらあるのです。
それだけではありません。
うなぎ登りで上昇していく社会保障費に歯止めをかける為に、介護報酬
は上がるどころか下がっていきます。
そうなれば、介護現場で懸命に頑張っている職員たちの給料は上がるど
ころか下がる可能性すらあるのです。
そして、施設は経営を維持する為に施設利用料を上げざるを得ません。
施設に入ることは、今以上に狭き門になってしまうかもしれないのです。
国はコロナ収束とともに、低賃金でも働いてくれる外国人実習生の受け
入れを強化しようとしているようですが、今起きている外国人実習生た
ちの問題をみれば、施設は新たな火種を抱えることになりかねません。
お金がない事によって全てが負のスパイラルに落ち込んでいくのです。
この構造的な問題をどのように解決して行くのか?
もう国のエリートたちが密室で対応を考える次元ではありません。
まず、現場で起きていることを正確に、ありのままに把握した上で、多
くの知見をもった人間が協同で考え、対策を打つ必要があると感じてい
ます。
同居孤独死の発生が、日常茶飯事になる前に。
今回の記事は、筆者が衝撃を受けた新聞記事をテーマにこの国の抱える
課題について考えてみました。
今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。