少子化の罠から抜け出す方法 その2
前回の記事では、少子化対策は「子供を育てる為の環境整備」より「結
婚ができる・家庭が持てる為の環境整備」の方が重要ではないかと書い
てみました。
今回の記事も、前回に続けて少子化という問題にどう対応していけばい
いのか読者の皆様と一緒に考えてみたいと思います。
都会では見ることがない風景
筆者は、北海道の高齢者施設でも勉強をしています。
施設は、札幌市の北、石狩川を越えた小さな町にある大規模施設です。
札幌から電車に乗っているとよくわかるのですが、石狩川を渡ると家の
姿が消えて、田園風景が広がります。
北海道で仕事をするのは初めてなのですが、大自然を満喫できます
とにかく広い平原とまっすぐな道には驚かされます(春に撮影)
とても良い所なのですが、冬は豪雪地帯で大変です。
石狩地方特有の強風にも悩まされ、雪が降っても傘は全く役に立ちませ
ん。
筆者も生まれて初めて「ブリザード」や「ホワイトアウト」というモノ
を経験して本当に驚きました。(笑)
駅前のバスロータリーはとても大きくて綺麗なのですが、冬はその景色
が一転します。まるで雪のトンネルで人が歩くのは困難を極めます
そんなところにあるからなのか、施設に入所されている方は近隣に住ん
でいた方が多いのです。
地元の人が多いからこそ、この施設ではご家族の面会がとても多いので
す。
平日でも1日2~3件、休日だと1日5件以上の面会があることもあり
ます。
コロナの影響もありガラス越しの面会になりますが、ご家族がたくさん
おみえになります。
殆どのご家族が子供さんだけでなく、お孫さん(ひ孫さんまで)を連れ
ておられて面会も長時間になることもあります。
(感染防止の為、短時間にして頂いているのですが)
いつもお土産(入所者(親)の好きな食べ物等)を一杯持って来られま
す。
傍から見ていると、ほほえましいというより、親子の絆というか、家族
の絆みたいなものを強く感じてしまいます。
“本当は施設なんかに入れたくない!”
“でも24時間介護・看護体制が整っているところの方が安心だから”
そんなご家族の心の内が伝わってきます。
早くコロナが終息して、スキンシップができるようにしてあげたいとい
つも思っています。
筆者は長く大学の高齢社会研究所で勉強をしていたので、多くの施設を
見てきましたが、こんな施設は初めてです。
都会の施設ではこんな所はありませんでした。
首都圏にある施設で勉強をしている時は、ご家族が面会に来られること
は殆どありませんでした。(コロナの影響もあるかもしれませんが)
たまに来られるご家族は、おむつを届けた後にそそくさと帰っていきま
す。(筆者の見ている範囲内のことです)
施設の職員に聞くと、そのご家族の家は施設から車で10分ほどの距離
にあるそうです。
「せっかく来たのに顔くらい見ていけばいいのに」と思ってしまうのは
いけないことなのでしょうか。
“施設に入れておけばとりあえず安心”
“こっちはこっちの生活があるのよ”
・・・・・・・・・・
筆者は思うのです。
この違いはどこから生まれるのだろう・・・と
家族と家族の距離
そんなものを強く感じてしまいます。
画像素材:PIXTA
一昔前には「家族の団欒」という言葉がよく使われていましたが、
今はどうなのでしょうか・・・
家族の絆とは
先日、入所者の高齢の女性からプレゼントを頂きました。
いつも筆者がやっている高齢大学の講義や脳トレーニング等のレクに参
加してくれている女性からです。
プレゼントの中身は、手縫いのパッチワークの座布団でした。
お礼に部屋に伺うと、ご家族にも一生懸命丁寧に手縫いされていました。
施設に入っても、家族のことを想っているその姿に少し感動すらしてし
まいます。
家と施設、離れていても心は繋がっている。
それが、家族というものかもしれませんね。
でも、こんな想いは子供を持たないと経験できないのです。
そう、家族を持たないと実感できないのです。
筆者はこの片田舎の施設に来て、家族というものの大切さを再認識して
しまいました。
この北海道で勉強を始めてからは、家族に度々贈り物をしています。
毛蟹、ROYCE’の生チョコレート、でっかい蛸の足(都会では売ってい
ません)等々
北海道の美味しいものを食べて喜んでいる家族の顔を浮かべながら・・
そんな家族がいることの素晴らしさを若い人にももっと知って欲しいと
思います。
関西人なので、毛蟹は初めて食べましたが絶品でした
すぐに地元関西と東京に住む家族に送りました
首都圏で勉強している時も、地方にいった時も家族に贈り物をしたこと
は今までありませんでしたが、今回は何かを勉強できたようです
家族っていいもんだよ!
そんな気持ちをどうやって伝えればいいのかはよくわかりませんが、
北海道と首都圏の施設の違いを見ていると、まず家族をもったなら、
その家族をトコトン大事にするという心を持ち続けることから全てが
始まるような気がします。
東京にある大病院、聖路加国際病院名誉院長であった日野原 重明先生
は、家族についてとても貴重な明言を残されています。
“家族とは、「ある」ものではなく、手をかけて「育む」もの” だと
日野原先生は、長い間病院で患者とその家族を見続けてきたから、こう
思われるようになったのかもしれませんね。
今は、この「育む」というところがとても疎かになってしまったのでは
ないかと感じます。
家族を育む環境整備
家族とは何でしょうか?
人間が生きていくための最小単位?
その家族を「育む」為の政策があってもいいのではないでしょうか。
もしかすると、子育て支援環境の整備政策より遥かに効果が期待できる
かもしれません。
もっと家族というものを見直すことが出来る政策
もっと家族を大事にすることが出来る政策
お役人から、そんな抽象的でよくわからないことはできませんという言
葉が聞こえてきそうです。
ただ、よくよく考えるといろんな施策が打てます。
コロナで在宅勤務が広まりました。
でも、おそらく今はまだ上っ面だけだと思いますが、少し違う動きも出
つつあります。
大手企業で働く人の中から、テレワークできるなら
“もう首都圏に住む必要なんてないじゃないか”
と地元の親が住む街に帰る人が出始めました。
親と一緒の街に住めば、親が年老いた時にも助けることが出来ます。
当然同居すれば家族としてもっと機能することが出来ます。
子供の面倒は祖父母に任せることも可能です。
保育園の試験を受ける必要もありません。
そして、祖父母はこの世界の中で最高の先生ともいえるのです。
以前の記事でもご紹介した近居や二世帯に手当を出せば、社会保障費や
少子化対策費を削減することが出来るかもしれないのです。
もう二世帯住宅のリフォームに対する補助金が付く施策も存在しますが、
それは空き家対策等が目的で、家族を見直すという目的ではありません。
Uターンが活性化すれば、地域活性化にも一役買えます。
コロナで弱点が露呈した「東京一極集中」も是正することもできるので
す。
そう考えると、少子化の対策として新たな施策が浮かんできます。
そう、それは「家族を育む環境整備」。
親と同居するか、近居すれば、子育ての心配は大幅に軽減されます。
保育園の心配だけではなく、経済的にも楽になります。
そして孤立を防ぐこともできます。
ある意味孤立するから貧困になるともいえるのです。
家族で助け合って生きることの大切さを学べば、子供を生み育てる負担
は軽減されます。
そして、この家族を育むという行為は、高齢化にも対応ができるのです。
この日本は、一昔前は家族や親族が力を合わせて生活をする生活共同体
を構成していました。
高度経済成長が、都会へと人を運び、核家族化が進行しました。
しかしバブルが崩壊して以降、もう右肩上がりの経済成長は見込めませ
ん。
そして、コロナ禍は都会の脆さ、東京一極集中の危険性をハッキリとさ
せたのです。
高齢化の進展と共に社会保障費の上昇に歯止めがかかりません。
子どもたちの世代の為にも、本質を突いた対策が必要です。
これを契機に生き方も、政策も大きく見直す時期にきているのかもしれ
ないのです。
自民党の総裁選が始まりましたが、一人の候補者から「少子高齢化」の
取り組みを強化したいという話が出ました。
この国を良くしていく為に、本質を突いた政策を期待するばかりです。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。