国の勢い
読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。
年末からの寒波の影響で日本各地で大雪による被害が報告されています。
読者の皆様のところに被害が及ばないように祈るばかりです。
さて、agefriendlyブログも足掛け5年目に突入致しました。
ここまで続けてこれましたのも読者の皆様のお蔭です。
心より感謝申し上げます。
最近は海外の読者も増え、お便りを頂けるようにもなりました。
今年も頑張って課題山積の高齢大国日本の問題を皆様と一緒に考えてい
きたいと思っています。
その中にこの国の進むべき方向性と共に「今何をすべきか」のヒントが
必ずあると考えています。
新政権になってからは、少子高齢化の問題が大きく取り上げられるよう
になりました。
ようやく諸悪の根源がこの少子高齢化にあることが多くの方々にも理解
頂けたようです。
今日元旦の早朝から識者の皆さんがこの国をどのように変えていかなけ
ればならないのかを真剣に議論していました。
識者の皆さんの表情にも衰退が止まらないこの国の現状が焦りとともに
浮き彫りになっていました。
この数時間に及ぶ議論は、元旦のバラエティ番組放送の都合で途中で打
ち消されてしまいましたが、今回の記事はこの国の衰退ぶりを象徴する
データを元に進めて参りたいと存じます。
5年に1度行われる国勢調査の結果が、先日まとめられ公表されました。
総務省が公表した昨年(2020)年に行われた国勢調査の確定値では、
外国人を含む総人口は1億2614万6000人でした。
前回調査(2015年)の数値から94万9000人も減り、2008
年のピークからみても約193万人も減少をしています。
読者の皆様が住んでいる街の人口はご存知でしょうか?
比較的大きな市でも、30~40万人です。
筆者の住んでいる地方の町は、人口10万人を少し超える規模ですが、
5年間でその町が10近くも消えてしまうような規模です。
ピンとこない方は、4年後の大阪万博が行われる2025年に行われる
国勢調査の調査結果が今回と同じ規模で減少した場合、2010年から
15年間で巨大都市である大阪市が丸ごと消えることになるのです。
驚くべきスピードで人口が減少していると言えるのです。
人口が減ると、いろいろなところに影響が出てきます。
今、働き手が不足しており、国は外国人労働者に期待をしていますが、
上記の人口減少で働き手が更に減少していくのです。
以前の記事でもご紹介しているように、経済活動の担い手となる生産年
齢人口(15~64歳)は3%も減少して7508万8000人と、こ
の5年でなんと227万人近くも減少してしまいました。
以前の記事でも度々ご紹介した日本の人口推移図です。
棒グラフは、黄緑色が子供、水色が生産年齢人口、ピンクが高齢者
赤の折れ線グラフが、生産年齢人口(社会を支える)の割合を示します
生産年齢人口割合は、2010年に64%近くあったものが、とうとう
60%を割り込んで、社会を支える働き手がドンドン減っている状況な
のです。
加えて少子化も更に進行していて、この国の将来を担う14歳以下の子
どもの人口(上記棒グラフの黄緑色)は6%も減少してしまいました。
その一方で65歳以上の高齢者人口(上記棒グラフのピンク色)は7%
も増加して少子高齢化の進行が止まりません。
このままでは、国の勢い、国の力が衰えていくばかりです。
下図は以前の記事でご紹介した国力の計算式(概略)です。
以前の記事でもご紹介した数式です。人口減少・少子高齢化で生み出す
力は低下する一方です。新総理が掲げる成長性が高まらなければ厳しい
のです。とにかく凄まじい速さで国力が弱まっています。
ものすごい勢いの人口減少と
少子高齢化による労働力の減少と
生産性の高い製造業が衰退し、生産性の低いサービス業が産業の中心に
なったことによる経済力の衰退
ここに及んで政府は生産性を上げるべくデジタル化を声高に謳い始めま
たのです。
この国は完全にマイナス(負)のスパイラルに落ち込んでいます。
もう一つの気になる数字
今回の国勢調査の公表数値の中に、もう一つ気になる数字があります。
以前の記事でもご紹介した高齢者の単身世帯の数値です。
日本の世帯数は、人口減少にも拘わらず増加しています。
その理由は、単身高齢者世帯と結婚できない若者の単身世帯の増加です。
世帯数は、この一人暮らしが増えたことで過去最高を更新したのです。
この単身世帯は、世帯数全体の38%を占めるまでになっており、若者
の単身世帯の増加は少子化を加速させかねません。
最近は未婚率が上り、中高年での単身世帯も増えていることが、単身世
帯数の増加を助けています。
そして、高齢者の単身世帯は、孤独死などの社会問題の増加と社会保障
費の更なる増加につながることになりかねないのです。
単身高齢者を助けるセーフティネットの構築が急務の状況ですが、対応
が全く追いついていないのが現状なのです。
この単身世帯の増加は、この国の経済にも重大な影響を及ぼす可能性が
あるのです。
既にその兆候は出つつあります。
例えば食品について分析すると、興味深いデータが出てきます。
レトルトや冷凍食品といったお一人様向けの需要が増え、通常家族向け
だった食品の消費が大きく落ち込む傾向にあります。
そして、消費量そのものが落ち込んでいくことが問題なのです。
この単身世帯の増加に加えて、未婚化や晩婚化も直接人口減少につなが
り、更に消費は落ち込んでいきます。
とにかく、国難ともいえる少子高齢化を解決しなければ、この国の成長
はあり得ない状況ですが、現状は悪い数値ばかりが並んでいます。
今回の国勢調査の数値を見ても、良いデータは一つもありませんでした。
以前の記事でご紹介した図では、高齢者の単身世帯の増加を問題視しま
したが、単身世帯の増加は高齢者以外でも広がっていたのです。
この貧困が起因する広がりはいずれ高齢者単身世帯へと変化するのです。
地方の衰退
国勢調査の人口数値を都道府県別でみると地方の衰退が鮮明となってい
ることがわかります。
47都道府県の中でなんと39もの道府県の人口規模が縮小しました。
大都市への人口集中が際立っています。
地方から大都市への人の流入が止まっていない為、地方の人口減少が深
刻な状態です。
減少率が一番高かったのは秋田県では6.2%の減少、青森県は5.4%
で過去最高の減少率を記録し、地方の人口減少が異常なレベルで進んで
います。
政府が進める地方創生とは全く裏腹な結果となっているのです。
驚くべきことに、人口が100万人を割り込む県も現れ、福井や和歌山
など10県が大台を割り込んだのです。
県でありながら、市町村人口ランキングでトップの横浜市(約378万
人)の1/4にも満たないところも出てきたということになります。
地方では高齢化率が高止まっている上に人口も減少して、県として力を
発揮するのは難しくなっているのです。
人口 = 税金収入(自治体が使えるお金)と考えると、力の差は歴然
です。
画像素材:いらすとやさんの都道府県地図を使い筆者が追記
今回は比較の為に、1㎢の中に何人住んでいるかを示した人口密度を使
って比較してみました。人がたくさんいればたくさんお金が動きます。
横浜市は、人口密度が和歌山県や福井県の約45倍。この差は大きい!
地方が生き残る道は、人口減少に負けないように一人ひとりの能力を高
め、生産性を上げていくしかありません。
最近地方の自治体は、地域の活性化を促すために、都市圏にいる人材を
引き抜こうとしたり、IターンやUターン、そして移住促進等様々な手段
を講じていますが、効果は出ていません。
筆者が勉強していた高齢者施設のある北海道の自治体の移住促進部署の
移住実績は、年間2組(4人)だったそうです。
翌年その部署は発展的解消されていました。
国が首都圏の一極集中を避けるために始めた地方創生。
担当大臣まで設けた上で、数々の施策を打ち出して早や7年が経とうと
していますが、いまだ実質的な効果は出ていません。
コロナで多様な働き方が進みつつありますが、地方の人口減少を止める
勢いはなさそうです。
どうすれば、都市圏から地方へと人が流れていくのか?
答えはすぐに見つかりそうにもありませんが、筆者は2025年~20
35年にかけて都市圏に住む団塊の世代が後期高齢者に突入し、自立し
た生活ができなくなった時に大きな動きが出ると思っています。
(2025年問題の事です。以前の記事を参照ください)
しかし、対応が後手後手に回れば、更にこの国の勢いは削がれていくか
もしれません。
今回の国勢調査の結果を国が、自治体がどう受け止めるか?
どう動くのか?
国や自治体だけでなく、我々市民が考えて動く時代なのかもしれません。
今回の記事は、先日公表された2020年実施の国勢調査の結果につい
て考えてみました。
読者の皆様も、是非地方創生について良い考えがあれば教えてください。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。