日本人は幸せになれるのか
ロシアがウクライナにとうとう侵攻し、多くの人が幸せな生活を奪われ
ています。
そんな中、あのForbesがとても興味深い調査結果を掲載していました。
世界全体で進む高齢化にうまく対応できている国は何処かという調査ら
しいのです。
この国でも少子高齢化の影響が多方面で深刻な課題を浮き彫りにしてい
ます。
そんな時に、上述の調査では各国の人口構成について分析をした上で、
人口構造の大きな変化への備えが進んでいる国はどこかという視点で分
析をしているようでした。
世界各国の高齢化への対応状況をランク付けした「長寿管理番付(Lon
gevity Management Scorecard)」というものを公表したのです。
この番付では「寿命」「医療(の質)」「幸福度」という3つの指標を
用いており、それぞれの順位を合算したスコアが小さいほど高齢化への
対応が良い国としているようです。
このランキングで上位の国ほど、老後が暮し易い国ということになりま
す。
画像素材:PIXTA 老後も安心して暮らせることはとても大事
以前の記事でもご紹介したように、医療費は高齢期に一気に高まり70
歳までの70年間の医療費と70歳以降の20年弱の医療費がほぼ同じ
くらいになります。(人によって差異があります)
そういう意味では質の高い医療が提供されているかという視点は、高齢
化に対応していく意味でも非常に重要なものになってきます。
その為に、高齢化をサポートする医療体制の充実度も評価対象になって
いるようです。
記事でも度々ご紹介している生涯医療費の統計グラフです
歳をとれば医療費がかかるんだという心づもりが必要です
また、幸福度は今迄いろいろな指標として世界で公表されてきました。
その順位は国民の日常生活の満足度を示しています。
年齢層別に国単位で特色があり、以前の記事で示したとおり高齢期で幸
福度が高くなる国もあれば、日本のように高齢期で幸福度が低くなる国
もあります。
寿命の高さ、医療の質、幸福度の3つの要素から導き出された2022
年度版の最新番付の上位10カ国は下記のようになっています。
丸かっこ内は左から「寿命」「医療」「幸福度」の各順位とその合計ス
コア、そして一番右の数値は65歳以上の人口比率=高齢化率です。
上述しましたが、合計スコアの低い方が総合順位が高くなる仕組みにな
っています。(スコアは下線で表示)
1位 スイス (7位、16位、3位、26点、19%)
2位 オーストラリア (12位、9位、11位、32点、16%)
3位 ノルウェー (24位、12位、6位、42点、18%)
3位 フランス (18位、3位、21位、42点、20%)
5位 オランダ (27位、11位、5位、43点、20%)
5位 スペイン (10位、6位、27位、43点、20%)
7位 フィンランド (34位、10位、1位、45点、22%)
8位 イスラエル (16位、18位、12位、46点、12%)
9位 デンマーク (46位、5位、2位、53点、20%)
10位 ニュージーランド(26位、19位、9位、54点、16%)
上記のとおり、上位は殆どが欧州で、高齢化率は低くはなく20%を超
えている国もあります。
画像素材:PIXTA ベスト10に北欧の国が4か国も さすが福祉大国
大国といえるのはフランスくらいで、G7ではフランス以外は全てラン
ク外ということになっており、GDP世界1位の米国は、「寿命」が70
位、「医療」が30位、「幸福度」が19位で全体では26位と意外な
結果となっています。
GDP2位の中国も「寿命」が94位、「医療」が意外と低く40位、
「幸福度」が84位で全体では49位と下位に沈んでいます。
ベスト10入りした欧州各国は、幸福度がとても高いのが印象的です。
そして、日本はというと「寿命」と「医療」が各々4位と高いのですが、
これまた「幸福度」が56位と低く全体では15位と残念な結果になっ
ています。
この結果は、高齢化率世界一を誇る日本にとって何が足りないのか示唆
を含んだランキング内容となりました。
これから更に高齢化が深化していくこの国において、幸福感が上がらな
いと高齢期を過ごすことが苦痛になるだけなのです。
画像素材:PIXTA 高齢になってもいつも笑顔でいたいですよね
大事な幸福度
上記のランキングと世界の幸福度ランキングを比較すると面白い事がわ
かります。
注:上記のランキングが2022年の統計に対して幸福度の統計は20
20年が最新で指数の違いで若干の食い違いが発生しています。
世界の幸福度ランキングを下記に示してみます。
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 スイス
4位 アイスランド
5位 ノルウェー
6位 オランダ
7位 スウェーデン
8位 オランダ
9位 オーストラリア
10位 ルクセンブルク
ベスト10には、上記の長寿管理番付とほぼ同じ国が並びます。
長寿管理番付が1位、幸福度3位のスイスですが、よく住みやすい国だ
と聞きます。
高齢化が深化していく日本がこれからどんな国になればいいのかを考え
る意味でここでスイスについて少し調査をしてみたいと思います。
なぜスイスは幸福度が高いのか?
筆者が調査したところいくつかの大事な要素が見つかりました。
(ネットで色々と調べた結果を纏めただけなのでこれが本当に正しいの
かはわかりませんが)
◆健康意識がとても高い
スイス人はとても健康に対する意識が高いようです。
年齢層に関係なく、体を動かすことが好きな文化のようなものが存在し
ています。
画像素材:PIXTA 高齢期の方でも体を動かすのが好きな方は多いです
そして、スイス人は薬嫌いなようです。
子供が熱を出すと氷の入ったお風呂に入れる国があると聞き驚いたこと
があるのですが、スイスでは解熱剤や風邪薬を飲むことが殆どなく、薬
代わりにハーブティーを活用するそうです。
日本のように薬漬けにするのではなく、人間本来備わっている免疫力を
上げることを重要視しているようです。
◆自然災害が少ない
スイスでも地球温暖化による影響はあるようですが、日本のように地震
や台風等の自然災害で苦しめられることがありません。
日本では毎年のように大きな自然災害が起き、大規模な地震では数千人
が命を落とす大惨事が十数年に一度の頻度で起きています。
日本のように悲しみや苦しみに耐えながら生きるということがスイスに
はない事が幸福感を上げている要因なのかもしれません。
◆不(不満・不信・不安)が少ない
上記のように自然災害がなく、不安が少ないということに加えて、政治
(国)への不信感も少ないようです。
日本では政治や政治家に対する不満や不信感が渦巻いていますが、スイ
スでは根本的に政治の仕組みが違うようです。
日本のように同じ政党によって独占政治にならないような仕組みもある
のです。
独占政治になると国民の声は無視されてしまいます。
今の独占政党は自分達の好き勝手をし放題で、とても残念な政治です。
そしてスイスでは、国のトップである大統領の任期はなんと一年。
日本のように政治家が蓄財できないようになっているのです。
国民の政治参加が盛んなスイスでは国民主権が死んではいません。
最終的に決断するのが国民であるなら政治家の説明等必要がありません。
直接民主制という民意が国の判断になる制度が存在しているのです。
直接民主制の大きな特色である「国民発議」「国民投票」という二つの
仕組みで、国民は国の大切な決断を直接委ねられているのです。
日本とは全く逆です。
筆者はスイスの調査からこの日本の政治の仕組みを根本的に変えるべき
だと痛感しました。
スイスでは、小学校から政治の勉強は始めるそうです。
スイスがEUに入らなかったのは、国民投票で民意として反対派が勝利を
収めたからです。
政治家が勝手なことはできないのです。
こんなシステムであれば、コロナをもっと早く収束できたかもしれませ
んね。
◆安定した経済
100年以上安定を続けているスイスの経済、決してGDPは大きくはあ
りませんがジェットコースターにように浮き沈みする日本とは大違いで
す。
日本のGDPの成長率を表したグラフです。ジェットコースターの様です
スイスの一人当たりの名目GDPは40年以上右肩上がりを続けています。
GDPの推移グラフを見ると世界経済の影響をも受けていないように見え
ます。
上記の政治の仕組みにも関係しているのかもしれませんが、安定感抜群
な経済なのです。
驚いたのですが、スイスでは最低賃金も国民投票で決められています。
その額は日本円に換算すると月37〜45万円もあります。
(職種によって差異があるようです)
日本のように働いても食べていけないということが無いのです。
経済が安定している為、賃金も右肩上がりで上がり続けています。
日本のように政治家が企業にお願いをしなくても上がるのです。
◆平均寿命が長い(高い)
男女の平均寿命、日本は世界第一位ですが、スイスは世界第二位です。
これは衣食住が安定している証拠であり、社会基盤が強固である証拠で
もあります。
◆家族の絆をとても大事にしている
給料が高いのでよく働くのかと思いきや、隣国のフランス同様余暇をと
ても楽しみにしている民族のようです。
要するに家族との時間をとても大事にしているということになります。
驚いたことにスイスでは、日曜日はどこのスーパーも店舗も休業らしい
のです。
国民全員、日曜日はお休みで、家族で過ごす。
日本人にとっては驚きの民族です。
それでも収入が安定しているのは、一人一人の生産性が高いからなので
しょうね。
長々と書いてしまいましたが、端的に言うとスイスはとても住みやすい
国ということになりそうです。
日本もスイスに倣っていろいろな仕組みや制度を変えてみるべきです。
特に政治の仕組みは大きく変えていかないと幸福度は絶対に上がりませ
ん。
金の為に政治家になるような輩を排除しなければ日本は良くなりません。
画像素材:いらすとや 家族の絆が解決できる課題は沢山あります
高齢期の幸せがとても大事
以前の記事で、幸せとは何かという題でハーバード大学のグラント研究
を取り上げた事がありました。
そのグラント研究を30年以上指揮していたGeorge Vaillant先生が主張
する言葉をもう一度くりかえすと、
幸せとは、
「老年における健康と幸福、温かな人間関係の3つだ」
と先生は言っていました。
George Vaillant先生の言葉を抜粋してみました
筆者は、このコメントの中にある「老年における(in old age)」という
ところがとても気になったのです。
長い人生の中で、高齢期になってからの幸福感がとても大事なのだと。
人生は晩年での幸せで、全てが決まるのかもしれません。
ところが以前の記事でもご紹介したように、この国では下図のように高
齢になればなるほど幸福度は落ちていきます。
米国と日本の幸福度の比較です。横軸が年齢になります
日本と米国では対照的な結果となっています
今、高齢期の貧困が問題になっています。
貧困でなくても、それなりの貯えが無ければ年金支給額が細っていくと
いう漠然とした不安を抱えながら生きていくことになります。
経済が上手くいかなくなったから福祉が切り捨てられるのか?
それとも格差や貧困を許し続けた政治が悪いのか?
いろいろと要因はあるにせよ、そろそろ泣き寝入りは止めて、この国の
行く末を良い方向に変えていこうと考えて実行する人が増えない限り、
この国は良くはなりません。
今の政治家に任せて良くなるのであれば、とっくに良くなっています。
いきなりスイスのようにするのは無理がありますが、まずどのような国
にしていくのかビジョンが必要です。
そのビジョンを実現する為に国民は何をすべきなのか。
今の政治にはそれがありません。
あるのはお願い事(選挙に勝たせてください=私たちに高額の給料をく
ださい)だけです。
先日、ついにというか、痺れを切らせてというか、令和臨調(臨時行政
調査会)が立ち上がりました。
この国の諸課題に取り組むそうです。
著名な経営者や識者で構成されていて、様々な方策を政府に提言してい
くことになります。
ただ、国民はこのような組織に任せきりになってはいけないのです。
せっかくこんな組織が久しぶりに立ち上がったのですから、現場の声を
上げていく組織も必要です。
是非、令和臨調の皆様は現場の声を吸い上げて、絶壁の淵に追いやられ
たこの国を救う活動をお願いしたいと思っています。
微力ながら我々国民も力を合わせていきたいと思います。
今回の記事は、最近発表された興味深いランキングを題材に考えてみま
した。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。