健康寿命を伸ばそう 気になる格差 その1
この国では非正規で働く人がまだ増え続けています。
非正規が要因となって、貧困が広がり、格差が拡大しているのです。
この格差、様々な悪影響を生みだしています。
以前の記事でも取り上げたように、子どもや高齢者にも貧困が広がって
います。
この格差の影響はある意味深刻で、健康にも大きな影響が出ているので
す。
そう、健康にまで格差が広がっています。
今の現状は、何とも言えない不安が空から覆いかぶさる感じがします
増え続ける国の借金の主要な要因にもなっている社会保障費を押し上げ
ているのは、高齢化だけではありません。
実はこの格差を放置したことによって増えている可能性があるのです。
先進国の中にも、この格差による貧困等の悪影響にいち早く着目し、格
差を是正する為の政策を打って成功している国があるようです。
それは英国です※。
英国では、ブレア政権時代にこの格差の問題に真っ向から取り組み是正
に向けた足がかりを構築しているのです。
この日本でも、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指して、様々な対
策が開始されているようですが、まだ大きな成果を見る迄には至ってい
ないようです。(この対策については、今回の記事(前編・後編)でご
紹介するご本を読んで頂ければ、詳細が把握できます)
国のこのような格差対策よりも、後期高齢者医療保険費の自己負担増や、
高額医療費の負担見直し等、国民への負担増の検討ばかりが国民には目
立ってしまっていることは残念なことかもしれません。
これでは健康を害しても、病院にも行かない人が増えていくのではない
かと危惧しています。
せっかく人生100年時代を迎えているのに、長生きしても不健康で苦
しむ時間が長くなるだけなのです。
経済格差と健康格差の関係を我々国民も正しく認識する必要がありそう
です。
OECD(経済協力開発機構)から、「日本のように格差が広がっている
国では経済成長率も低い」と馬鹿にされていることはとても悲しいこと
です※。
格差がこれ以上広がれば、国民生活は本当にピンチを迎えます。
そして、この格差は新たな格差を生み続けているのです。
もう一つの格差
このブログも気が付けばいつの間にやら200記事を大きく超えてしま
いました。
長くなった人生をどのように生きていくのか…
その為にはいろいろなことを知った上で、具体的な行動を起こしていく
必要があります。
そんな時に役に立てるようにと始めたのがこのブログです。
今回は長くなった人生を少しでも楽しく生きるために重要な健康格差に
ついて読者の皆様と一緒に勉強をしてみたいと思っています。
筆者は昨年度の北海道の施設に続いて、地元地域の高齢者の皆さんを対
象に「高齢大学」と称して勉強をしてもらっていました。
20を超えるメニューからなるカリキュラムの中で、高齢者の皆さんが
最も興味を示すのが「健康」についてです。
寿命は確かに延びました。
でも、以前の記事でもご紹介したように健康寿命は延びていないという
事実に勉強をしている高齢者の皆さんは敏感に反応していました。
高齢者の皆さんもちゃんとPPK(ピンピンコロリ)という言葉は知って
いて、寝たきりにならないで死にたいと強く希望しています。
でも、PPKで逝けるのは5%にも満たないとわかると複雑な表情を見せ
ます。
健康寿命を延ばすにはどうしたらいいのかという話を食い入るように皆
さん真剣に聞いています。
筆者の参加している地域活動は、最初は高齢者の皆さんが集う「ふれあ
い喫茶(サロン)」的な活動からスタートしています。
筆者の参加している街のサロンの看板です
500円でヘルシーランチとコーヒーが2杯(AM/PM)が付いて
なおかつ体操や脳トレ・レク・介護予防が受けられます
お茶を飲みながら仲良く会話をして、一緒に楽しく食事をする。
それに健康体操が加わり(地域では100歳体操と称しています)、様
々なレクレーションが加わったものなのです。
そこに筆者が参加してからは、セラバンドや器具を使った筋力体操や脳
トレーニング、そして前述のお勉強を付け加えています。
脳トレーニングや学習は認知症予防(進行予防)や介護予防が目的にな
りますが、この介護予防は過去に国が力を入れて進めたにも拘わらず大
失敗した経緯があります。
国が自治体と協力してしっかりと準備したのに、参加する人が極めて少
なかったのです※。
数年間の実証実験の最終年度でも、実証実験対象地域内の高齢者数の僅
か1%に満たない高齢者の皆さんしか参加していなかったようです※。
なぜこんなことになったのでしょうか。
それは対象者を(認知症や要介護が)ハイリスクの方々に限定して声を
かけたかららしいのです※。
その後、各地域でボランティアの皆さんが努力して運営するサロン的な
活動が参考になり、国は方針を転換することになったようです。
今度は、誰でもが参加や利用できる「通いの場」的な場所を推進した結
果、実証実験エリアの高齢者数の4%近い方々が参加し始めたそうです。
ようするに、
「あなたは危ないから介護予防に勤しみなさい」
と言っても、誰も興味を示さなかったのか、或いは行きたくても行けな
い理由が別にあったのか、どちらかです。
筆者の参加する複数の集いの場には、皆さん仲良しメンバーで参加され
ています。
いくら介護予防や認知症予防になるといったとしても、行きたいと思わ
なければ誰も行かないのかもしれません。
この国の実証実験は、2010年代に実施されたものなので、コロナの
影響はありません。
健康意識の高い高齢者の皆さんが、通うハードルが低いと判断してまず
サロン的な集まりに集うということなのです。
筆者に地域活動を依頼した社会福祉協議会に介護予防活動について問い
合わせてみたところ、
「過去にやってみたが、まったく人が集まらなかった」
と聞きました。
国の活動と同じ失敗をしていたわけです。
筆者が、これからもやる計画は無いのかとお聞きしてみたところ、
「ない」
「認知症カフェならやってみたい」
と回答がありました。
筆者は頭の中で、
「認知症になってからケアをしても、なかなか社会保障費は下がりませ
んよ…」
と呟てしまいました。
少し話しは脱線してしまいましたが、健康寿命を延ばす為に注意しなけ
ればならないことは確かにあります。
寿命は確かに延びました でも健康寿命はあまり延びていないのです
この期間苦しまなくてはならないと考えるとショックですよね
そして、このサロン的な活動に参加しているか、いないかで健康寿命に
大きな格差が生じているのです。
健康格差
この健康格差について書かれたとても良い本があります。
筆者が大学の高齢社会研究所で学んでいる時に、この本に出合いました。
前述の様々な事項(※マークを表記)についてもこのご本に詳しく説明
がしてあります。(筆者も参考にさせて頂きました)
是非、読者の皆様にも読んで頂きたい一冊です。
<お勧めの本>
転びやすい街と転びにくい街では4倍の格差がある
この本には、調査した地域によって転びやすい街と転びにくい街とでは
なんと4倍もの格差があると記されているのです。
転びにくい街は、14人に1人しか転んでいないのに、転びやすい街は
3人に1人が転んでいるということになります。
悪魔のパターンに陥らない為にも転倒は阻止しなければなりません
確かに街の地形や環境に影響は受けるとはいえ、少し格差が大きすぎる
と感じませんか?
この差は、町の中で体や頭を動かせる場所があるか、ないかで生じてい
るようなのです。
筆者の参加する集いの場では、体も頭(脳)も動かせて、楽しい時間を
過ごせます。
ただ、そんな場が自分の住む街にない街もあるのです。
高齢になると、自動車免許を返納する人も増えます。
地域では公共交通機関が整備されていないケースもあります。
自宅から徒歩圏にこんなサロン的な場がないと行きたくても行けないこ
ともあるのです。
或いはあったとしても、自分の都合とは合わないといったケースもあり
ます。
筆者の住む街では、週3回から4回このような場がありますが、趣味や
運動のサークルを入れればもっと参加の機会は増えます。
開催頻度も重要です。
多い所はほぼ毎日のようにメニューが変わりながらイベントを開催して
いる街もあります。
そのメニューの多くは、介護予防を目的としていました。
転倒はフレイル状態の入り口と考えてもいいのかもしれません。
特に女性は要注意です。
転倒で大腿骨を骨折して入院し、その影響で筋力が低下してフレイル状
態になるケースも少なくありません。
街の中でサロン的な通いの場があって、そこで運動ができるだけでこの
格差が生まれているのであれば驚きです。
逆に言うと、「たかがサロンというべからず」ということでしょうか。
日本列島の中に住んでいて、そこで同じように生活をしているだけなの
にこんなに格差が生じる。
まずはこの事実を知っておくことから始めるべきだと思いました。
今回の記事は、既に長くなり過ぎましたので、続きは続編に委ねること
にさせて頂きます。
続編では、この健康格差と貧困との関係にスポットを当ててみたいと思
います。
続編も是非お付き合い頂きますれば幸いです。