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健康寿命を延ばそう 気になる格差 その2

2022年09月17日
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今回の記事は前回に引き続き、新たな格差である「健康格差」について
勉強をする形で進めてみたいと考えています。

 

前回の記事では、転びやすい街と転びにくい街では4倍の格差があると
お伝えしました。

 

今回はその続きとして、驚きの格差の実態について読者の皆様と共有し
てみたいと思います。

 

 

2倍も鬱や認知症にかかりやすい街がある

 

地域での活動に参加すればするほど認知症になりにくいという結果は、
筆者も納得することができます。

 

筆者も施設で高齢者の皆さんに様々な活性化(認知症・介護予防)策を
打ってきましたが、「何もしない恐ろしさ」をよく理解しています。

 

高齢期になって仕事をしなくなると、体と脳を使う頻度が確実に落ちま
す。

 

脳を含めた人間の部位(特に筋肉)は、使わないと目に見えて衰えてい
きます。

 

体と脳を使わなければ、確実に認知症や要介護状態に近づいていくので
す。

 

そういう意味では、筆者が今取り組んでいる地域のサロン活動の重要性
はこれからも増していきますが、その殆どが地域のボランティアの手で
支えられているということも忘れてはならない事実なのです。

 

個人の努力も大事ですが、生活環境の整備も極めて大事なのです。

 

その環境整備を住民と行政が協力して推進していく必要がありますが、
そのバランスの欠如が地域差を生み出していることは確かです。

 

以前の記事で、超高齢社会を生き抜く為の地域生活環境整備が必要だと
訴えたことがありましたが、その環境整備に「介護予防の為の環境整備
を加える必要性が顕在化してきたということになります。

 

 

以前の記事でも示したことのある地域環境の図です
い・しょく・じゅうのバランスと共に図の左に示した社会参加と一次予
防・健康づくりが重要になってきます
画像素材:東京大学高齢社会総合研究機構 前機構長 大方潤一郎先生
の講義内容を筆者が焼き直したもの

 

 

それは、以前の記事でご説明した「ケア・サポート・コミュニティ環境
整備」を更に進化させたものでなければなりません。

 

そして、その実現には市民と行政の協力が不可欠なのです。

 

国民だけでなく、自治体そのものも貧困化していく中で、それを実現で
きるかどうかがこれからのこの国の将来を決めるといっても過言ではな
いような気がします。

 

 

以前の記事で示した図に新たな環境整備の必要性が加わりました
詳細は本記事と共に以前の記事をご参照ください
・人生100年時代の為の環境整備 い・しょく・じゅうのい
・人生100年時代の為の環境整備 い・しょく・じゅうのしょく
・人生100年時代の為の環境整備 い・しょく・じゅうのじゅう

 

 

 

歩く機会が多い都市部は車依存する地方より健康な人が多い

 

筆者が朝起きて、部屋の窓のカーテンを開けると、家の前の大きな公園
ではたくさんの高齢者の皆さんが散歩(というかウオーキング)をして
います。

 

犬を連れた中年の方も多いのですが、圧倒的に高齢者の皆さんが多いの
です。

 

皆さんとても元気そうですが、いつも決まって同じメンバーです。

 

筆者の住む町は人口が約7000人(約2500戸)

 

高齢化率が38%ほどですので、2700人ほどの高齢者がいる計算に
なります。

 

ただ、毎朝公園に来られる高齢者の皆さんは100人足らずです。

 

ようするに数%の高齢者しか歩いていないということになります。
(朝だけしか確認していませんが…)

 

全戸一戸建てで、割と裕福な家庭が多い為、フィットネスクラブ等に通
っている方もいるかもしれませんが、全高齢者数からすれば普段から街
の中を歩いたりフィットネスクラブで運動する人は少ないと言えます。

 

街の中に小さなスーパーや商店街もあるのですが、殆どの家庭が品数も
豊富で便利な市の中心街にある大型店舗に車で買い物に出かけていきま
す。

 

ようするに車文化が定着しているのです。

 

都市部では公共交通機関が整備されている為、駅やバス停まで歩く機会
も多いようですが、地方に行けば行くほど車に頼ってしまうというわけ
です。

 

筆者もサラリーマン時代に横浜や東京で長く生活をしましたが、車は必
要ありません。

 

車だと渋滞に巻き込まれる為、自転車がとても重宝しました。
(バスも渋滞する道が多いので、時間が計算できません)

 

困るのはゴルフに行くときくらいです。

 

都会では車は要りません。

 

結果、普通に生活していながら歩いていることになります。

 

前回の記事でご紹介したご本の中で紹介されている調査対象地域では、
「1日30分以上歩くか」という問いに対して、街によって68%~
82%と14%も違いがあったそうです。

 

この差は、地域の交通インフラ環境の影響によるものといってもいいの
かもしれません。

 

ようするに都市部では歩く機会が多い為に認知症や要介護のリスクが低
い。

 

地方では車に依存する生活をしている為に歩かず、認知症や要介護のリ
スクが高くなるというわけです。

 

納得ができても、なかなかこの慣習を変えるわけにはいかないことが理
解できそうです。

 

 

都会に住んでいると買いものに行くにも、レジャーに行くにも渋滞が
当たり前になっています 筆者は渋滞が大嫌いです

 

 

そして前回の記事でご紹介したご本の中で、最も格差の影響を顕著に表
していたのが、

低学歴・低所得ほど死亡・介護リスクが高い

という気になるデータでした。

 

本の中では、キチンとデータに基づいてそれをグラフにして説明がなさ
れているのですが、筆者は今まで多くの高齢者の皆さんを見てきて頷け
るところがあります。

 

施設でも学歴までは正確に把握することは難しいのですが、生活保護者
については管理上把握をしていました。

 

低所得(貧困)と介護リスクの関係は、ハッキリしているような気がし
ます。

 

また、知識の不足もありますが、食べるものにも影響されているように
も感じています。

 

筆者が高齢者の皆さんを対象にして実施している高齢大学の講義では、
口にする食品に対する知識にも重点を置いています。

 

講義では、認知症やフレイルになりにくい(推奨)食品を紹介していま
す。(気になる方はこちらのヘルシーエイジングの記事(3部構成)を
ご参照ください)

 

 

画像素材:PIXTA 日本人の長寿の秘訣 日本食 でも今、健康的な食
ができない人が確実に増え続けているのです

 

 

生活に余裕のない低所得者の皆さんは、食べるものを選択できにくいの
です。

 

親を子供の頃に亡くし、生活が厳しかった筆者の主食はご飯ではなく、
即席ラーメンでした。

 

体にいい筈はないですよね(笑)

 

ようするに格差によって進学できない人や生活が苦しい人ほど歳を重ね
ると健康リスクが増していくのです。

 

認めたくはないものの、現実はしっかり把握する必要があります。

 

ご紹介した本の指摘をそのまま引用すると、少し暗い気分になってしま
いそうです。

 

「高学歴で高所得の人たちに比べると、教育を受ける機会もなく、所得
も低くとどまり
最も苦労してきた人は1.8倍程度、健康を損ないやす
い」

 

この指摘を筆者は国(政府)にしっかりと受け止めて頂きたいと思って
います。

 

度々記事でもご紹介しているとおり、非正規の拡大を主要因とする貧困
の広がりは、国民の健康にも大きく影響するのです。

 

その影響は大人だけでなく、この国の将来を担う子供にも及びます。

 

読者の皆様にご紹介したこのご本、政治家の皆さんには是非全員読んで
欲しいと思いました。

 

この国で広がってしまった格差を容認すべきではないと確信しています。

 

そうでないと、1億総活躍ではなく、1億総不健康になってしまいそう
だからです。

 

膨張を続ける社会保障費にストップをかける有効策は、健康寿命を延ば
すことです。

 

筆者は施設で、高齢者の皆さんにこんな言葉を繰り返してきました。

 

「皆さんがいつまでも健康で元気に暮らせることが、皆さんの子供さん
やお孫さん、ひいては国の為になるんですよ」…と。

 

 

健康寿命を延ばす方法

 

 

健康寿命を延ばす方法はいろいろとあります。

 

 

筆者が高齢者の皆さんに教えている講義の中で使用しているシートです
この個人の努力に加えて環境整備によるフォローが重要になります
ようするに、生活習慣を良くするだけでは健康にはなれないのです

 

 

これ以外にも、ご紹介した本の中には、とても気になるKEY-WORDが
たくさん示されています。

 

・最も大事なことは(公園やサロン等の)環境整備

・運動は一人よりグループで

・笑うと吉

・孤食はNG、共食はGOOD

・つながり(家族/友人/地域/就労等)を大切に

 

詳しくは、ご紹介したご本で是非ご確認頂ければ幸いです。

 

前回と今回は、とても気になる本を通して健康格差について考えてみま
した。

 

健康格差を無くし健康寿命を延ばしていくことはとても大事なことです。

 

国や自治体は社会保障費の上昇を何とか食い止めたいと考えています。

 

その為には、今迄のような対策だけでは駄目で、環境整備も大事な要素
として付け加える必要があります。

 

ただ、地域のサロン的な活動はその殆どがボランティアによって細々と
支えられています。

 

国も自治体もどこにお金を使うべきなのかをもう一度再考すべきではな
いかと筆者は考えています。

 

この環境整備、また記事で取り上げてみたいと思います。

 

今回の記事も最期までお付き合い頂き、感謝申し上げます。

 

最期にもう一冊、追加でご本をご紹介させて頂きます。

 

今回ご紹介した本の続編が、今年6月に新著として出版されています。

 

この2冊のご本を世に訴えておられるのは、千葉大学の近藤 克則先生
です。

 

筆者も、先生の視点がとても素晴らしいと思いました。

 

読者の皆様、こちらも併せて是非読んでみてください。

 

<お勧めの本>

 

 

 

 

最期に、前回・今回の記事投稿にあたり、千葉大学の近藤先生には大変
お世話になりました。

感謝申し上げます。