見捨てられる国
静かに海外移住が進んでいるそうです。
その要因は、どうもコロナの影響ではなさそうです。
筆者が毎朝目を通す朝日新聞(デジタル版)には、海外移住についての
特集が組まれています。
その特集のお題は「わたしが日本を出た理由」です。
とても意味深なキャッチフレーズに誘われて毎回読んでしまいます。
もう10回を超えているこの特集記事の文中にはいくつかのKEY-WOR
Dが隠されています。
そのKEY-WORDを紐解くと、この国の深刻な課題が見えてくるのです。
そのいくつかを書き上げてみます。
1.理不尽で閉塞的、そして人を活かせない社会性
2.激務なのに薄給(一生懸命働いてもまっとうな生活ができない)
3.自分の時間(余暇)が持てない/余裕のない生活
4.少子高齢化でこの国が将来どうなるのかを予測できる
(ようするにお先真っ暗ということを理解している)
5.閉塞的な日本の教育と社会制度に絶望感を抱いている
6.女性が活躍できない
これらを纏めてみると「この国では夢が持てない」ということになって
しまうのかもしれません。
今、国会では少子化対策が真剣に議論されていますが、子供手当や教育
支援といった対策の前に将来への不安を払拭することの方がもっと大事
だと感じてしまいます。
この国はいつの間にか、人を大事に活かすことが出来なくなってしまっ
たかのようです。
いつの間にか、(お金の為に)人を使い捨ての道具としてみるようにな
ってしまった。
筆者のように子供の頃から素晴らしい教育をしてもらった人間には、本
当に信じられない想いで一杯です。
空から見ると本当に美しい国です
でも、こんな景色を見ながらこの国にサヨナラをする人が増えて行くの
かと思うと不安になってしまいます
静かなストライキ
先日、テレビの特番でもこの海外移住を取り上げていました。
その特番では、海外移住ではなく海外出稼ぎというタイトルでしたが、
中身は前述の新聞記事と同じです。
解説の為に来ていた識者の方が、この現象を「(若者の)静かなストラ
イキ」であると説明をしていました。
このテレビの特番の中で紹介されていた女性(看護師)は、日本から海
外に渡り高齢者施設で介護士として働いているらしいのですが、その待
遇には驚かされました。
日本の病院で激務をしている時は、月収25万円程度。
ところが海外の介護施設では、週給で22万円、月収にして90万円ら
しいのです。
おまけに残業はなく、自分の時間が持てるとこの女性は語っていました。
月に50万円も貯金ができ、そのお金を使って大学院で勉強をして、将
来は日本で訪問介護の事業を起こしたいと夢を語っていました。
そう、海外移住で夢を持つ事ができたのです。
それに対して、この日本では激務で薄給は当たり前の上に、手当なしの
サービス残業も当たり前、生活に余裕がなく仕事と寝ることの繰り返し
の毎日という生活を余儀なくされる。
なぜ日本では、これが当たり前になってしまったのでしょうか。
そのことに疑問を持ち始めた方々が海外移住という選択肢を選び始めた
ようです。
この動きが加速していけば、事態は深刻な方向に向かいます。
そうでなくても不足している介護職員が、大挙して海外に行ってしまっ
たらいったいどうなるのか。
上記の報酬差はとてつもなく大きいと思います。
最近は、薄給の上に円安も影響してか、海外からの技能実習生も激減し
ているそうです。
それにしても、なぜこの国の賃金はこんなにも安いのでしょうか。
富は何処に吸い上げられているのでしょうか。
国もいい加減真剣に考えないと大変なことになってしまいそうです。
海外移住の際、「日本を捨てるのか」といった否定的な反応を心配して
移住する本当の理由を黙ったまま出て行く人が多いのかもしれませんね
日本を後にする時、どんな気分で富士山を見るんでしょうか…
この賃金差はなぜ起きる
上記でご紹介した女性の移住先は豪州でした。
豪州には、日本のような介護保険制度がありません。
民間の介護保険が発達しているわけでもなく、介護保険の代わりになる
老齢年金という年金制度があります。
豪州の老齢年金は税方式で、全額政府の財源から支給されているような
のです。
日本の介護保険制度のように加入者が保険料を納めるものではない為、
介護サービスの利用者に金銭的な負担は掛かりません。
ようするに国が施設の介護士の賃金を支払っているともいえます。
豪州の高齢化率は現在16.57%
徐々に高齢化していますが、日本のように高くはありません。
まだ他の世代で高齢者を支える余力があるといえます。
それに比べて、この日本の高齢化率は30%に近づいています。
暴騰する社会保障費を止められず、介護報酬はこれから上がることはあ
りません。
当然のごとく、介護報酬は逆に下がっていくので、介護職員の賃金を上
げることは至難の業です。
今は、介護職が確保できていない為に、施設の運営元は利益を削って賃
金を微増させたりしていますが、その結果施設の利益が下がり続けてい
ます。
完璧に「構造的な問題」の罠にハマり込んでしまっているのです。
このままいけば、施設の経営破綻は増え続けるかもしれません。
この日本は構造的な「負のスパイラル」に完全に落ち込んでいます。
そんな状態を見抜いた方々が、海外に移住を始めているのは仕方がない
ことなのかもしれませんね。
以前の記事でもご紹介した「高齢者1人を何人で支えるのか」の図
豪州はまだ「胴上げ型」ですが、日本はもう「おんぶ型」に近いです
どうしてここ迄放置したのでしょうか
今頃になって「次元の違う少子化対策」では遅すぎます!
海外移住は若者だけか?
今、海外移住を進めているのは比較的若い世代が中心です。
ただ高齢の世代に目を移すと、雇用延長で年収は激減し、転職しても年
収は殆どの場合以前より大幅に下がってしまいます。
加えて60歳を過ぎると「年齢差別」を受けて、なかなか働くところが
見つかりません。
そう考えると、これからは高齢期の方々の海外移住も増えていくのかも
しれませんね。
そうなると、この国は、多くの世代から見放される可能性があるのです。
問題は、海外移住の理由なのです。
結果的にはこの国は、国民から見捨てられてしまうのかもしれません。
これがどういうことを意味するのか。
国はそろそろ真剣に考える必要があります。
マスコミも警鐘を鳴らすがごとく、この海外移住の問題を取り上げ始め
ました。
今、国会で討議されている少子化問題とも大きく関連付けができる課題
です。
この国には魅力がない。
この国では夢が描けない。
だから、この国では子ももうけず、海外に移住する。
ここにこの国が抱える課題の本質があります。
子供手当や保育園の問題ではないのです。
政治家はいつそれに気づくのでしょうか?
気付いた時には、もう手遅れかもしれませんね。
なんとかしなければいけないのですが…
なんとか………
今回の記事は、最近気になっている海外への移住(出稼ぎ)について
取り上げてみました。
今回の記事も最期まで読んでくださり、ありがとうございました。