雨にぬれても
2月(2023年)9日の朝、ある作曲家の訃報が目に留まりました。
その著名な作曲家の名前はバート・バカラック(Burt Bacharach)さん
です。
2月8日にロサンゼルスにある自宅で老衰の為に死去したと、広報担当
者がAP通信に対して連絡したそうだと記事にはありました。
享年94歳。
米国の男性としては、長寿を全うしたといえるのかもしれません。
映画音楽を中心にたくさんのヒット曲を世に送り出した偉人でもありま
す。
その数あるヒット曲の中で、筆者のお気に入りは何と言っても「雨に
ぬれても」でしょう。
一種独特な曲のテンポも、その歌詞もすごく気に入って、まだ10代だ
った筆者はお金を貯めてレコード(当然シングル)を買ったことがあり
ます。
作詞は、バカラックさんと良きコンビであったハル・デヴィッド(正式
名はハロルド・レーン・デヴィッド(Harold Lane David))さんです。
この素晴らしいコンビは、1960年代から1980年代にわたり、あ
のディオンヌ・ワーウィックさんや筆者も大好きだった兄妹シンガーの
カーペンターズ等の著名な歌手に多数のヒット曲を提供しています。
その曲は「バカラック・サウンド」と特別な呼び名で呼ばれているくら
いです。
訃報に驚いた筆者は、久しぶりに「雨にぬれても」にしばらく耳を傾け
たのでした。
画像素材:Jim Mayes
水上で生活する水鳥にとっては雨なんて気にならないんでしょうね
今聞いても素晴らしい曲と詩
アカデミー作曲賞と歌曲賞も受賞した「雨にぬれても」は、映画音楽と
して制作されたものなのですが、この映画もとても面白い作品なのです。
1969年に米国で公開された「明日に向かって撃て」は、翌年の19
70年2月に日本でも公開されています。
主演には、当時売れに売れていたポールニューマンとロバートレッド
フォードという2大超イケメン俳優を擁して日本でも大ヒットしていま
す。
日本での公開は1970年2月21日だったようですが、丁度同じ年の
3月中旬から始まった大阪万博の開催直前に公開された映画でした。
筆者はまだ小学校で、映画館での鑑賞はありませんが、この曲の軽快な
テンポは今でも耳に焼き付いています。
日本の音楽家の皆さんにも大きな影響を与えたバカラック・サウンドを
読者の皆様とも少し共有をしてみたいと思い、下記に曲の雰囲気と歌詞
がわかるように記述してみたいと思います。
※引用先は文末注記に記載
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Raindrops keep falling on my head
雨粒が降り続く 僕の頭上に
And just like the guy whose feet are too big for his bed
そして足が長すぎてベッドからはみ出てる奴みたいに
Nothing seems to fit
なにもかもがしっくりこない
Those raindrops are falling on my head, they keep falling…
雨粒が降り続く 僕の頭上に
So I just did me some talking to the sun
だから僕は太陽にちょっと話しかけてみたんだ
画像素材:Jim Mayes
誰にでもお日様に尋ねてみたくなる時がありますよね
And I said I didn’t like the way he got things done
そのやり方は好きじゃないって
sleeping on the job
仕事中に居眠りするようなもんだって
Those raindrops are falling on my head, they keep falling…
雨粒が降り続く 僕の頭上に
But there’s one thing I know
けど分かってる事が一つあるんだ
The blues they send to meet me
憂鬱なことがあっても
Won’t defeat me
僕は決して負けないって事を
It won’t be long till happiness steps up to greet me
もうすぐ幸せがやってくるって事を
曲の二番も同じフレーズですが、歌詞が若干変わります。
(二番は歌詞のみ記載)
雨粒が降り続く 僕の頭上に
でも僕はすぐに怒ったりしない
泣き言もためにならない
文句を言っても雨は止まないから
そして最後に大事な言葉があります。
Because I’m free
Nothing’s worrying me
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画像素材:Jim Mayes
大空を悠然と翔ける鳥のように自由になりたいと願うのは当然のこと
映画「明日に向って撃て」は、19世紀後半に米国で実在した銀行強盗
ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドを題材とした西部劇です。
既に西部開拓時代は終結し、社会と経済が激変した時代だったのです。
丁度、日本の明治維新のような時期なのかもしれませんね。
時代の変化に取り残された主人公たちが、社会に対して違和感を感じな
がらも懸命に生きたことをバカラックさんたちは、この歌を通して伝え
たかったのかもしれないと感じました。
超高齢化社会の中で
若い頃は、この曲のテンポの良さに惹かれてよく聞いていましたが、歌
詞に込められた意味までは考えたことはありませんでした。
今、この歌詞に改めて触れてみると、(高齢期に至ってしまった)自分
の事のように感じてしまいました。
高齢期になると、
なにか“しっくり”こない
(社会の中で)活躍したいのに、思うように活躍できていない自分があ
る
“もうお前なんかいらないんだよ”と冷たい仕打ちを受けることもある
そうかといっても、冷たい社会を恨んでみても何も変わらない
でも、そんな中でも、幸せになる為に努力しなければならないことは
わかっているんだ…と
心配なんかしていないぞ…と
強がりをする自分を見ながら…
そんな歌詞に聞こえてきたのです。
バカラックさんたちが、この曲に込めた想いを感じながら、また曲を聞
いて見たいと思いました。
そして、いつかこの偉人たちのようになってみたいと思いました。
いつか、きっと
まだこの曲を聞いたことがないという方は、是非ネットで聞いてみて
下さい。
きっと気に入ります。
今回の記事も最期まで読んでくださり、ありがとうございました。
【注記】文中で使用した歌詞とその和訳について
引用先:世界の民謡・童謡 worldfolksongs.com
https://www.worldfolksong.com/songbook/usa/raindrops-keep-fallin.html
[lyrics © Warner Chappell Music, Inc,BMG Rights Management]