介護難民にならない為に
独居の高齢者世帯が増え続けているそうです。
以前の記事でもご紹介した時の数よりも更に増え続けています。
少子高齢化なのだから仕方がないという面は確かにありますが、普段目
にする高齢者の皆さんも独りで歩いていることが多くなったと感じてい
ます。
子供たちが巣立って、配偶者との別れがあれば、当然のことなのですが、
独居高齢者の皆さんを見続けている筆者の周りにも気になることが続い
ています。
暑さ寒さも彼岸までと言いますが、今年は猛暑の影響で彼岸花が咲くの
がとても遅かったですね…
認知症のリスク
先日、ある集合住宅でその事件は起きました。
独居高齢者であるSさん(男性)が近隣の住民によって保護されました。
ただの徘徊ではありません。
Sさん、部屋の中で水の流れる音がするのに気が付き、洗面・お風呂・
キッチン・トイレと確認するも原因がわからず、不安になって屋外へと
出たところで歩いていた通行人に助けを求めたのです。
独り暮らしで相談できる人もいない為、集合住宅の横にある国道脇の歩
道を歩いていた人に声をかけたらしいのです。
この通行人、とても親切な方でSさんの頼みを聞き入れ、部屋の中まで
確認に同行してくれました。
結局、部屋の中を確認するも水回りに異常はなく、一旦Sさんも落ち着
いたところでこの問題は終わったのですが、原因は認知症によるもので
ある可能性が高いことがわかりました。
認知症の一つのモデルでもある「レビー小体型認知症」、その初期症状
に幻覚や幻聴があります。
筆者も今迄幻覚が見えるという高齢者を見たことがありましたが、幻聴
は初めてのケースでした。
幻聴は人の声ではなく、水の流れる音になることもあるのだとわかりま
した。
レビー小体というたんぱく質によって脳の細胞が影響を受けることがわ
かっていますが、幻覚や幻聴となって現れるというのはとても厄介だと
感じます。
Sさんも一旦症状は落ち着きましたが、いつまた再発するかわかりませ
ん。
独居の場合、その症状が出た場合に相談するところが少ないのが現状で
す。
やっとススキも咲き始めました ようやく秋といった感じです
セーフティーネットの綻び
こんな時に役に立つのが社会のセーフティーネットです。
直ぐに施設というわけではなく、地域のセーフティーネットを活用する
方法があるわけですが、そのセーフティーネットにも最近綻びが出つつ
あるようです。
Sさんの住む場所の近くにも地域の社会福祉協議会(以降社協)があり
ます。
普通はこの社協と地域の医療や福祉(介護)を提供する団体・組織が協
力して、このような問題に対応しているのですが、最近この社協の中に
活動を停止したり、見直しをしているところが出てきたというのです。
社協は、福祉を中心に幅広い分野で活動をしているところなので、介護
だけに焦点を当てるのは良くないことですが、訪問介護のサービスを中
止したり、廃止するところが急増しているようなのです。
高齢化の進展で業務量が増えていく中で、財源の問題や人手不足の問題
等々厳しい状況から事業やサービスを見直すところが増えているようで
す。
ですからSさんのような独居高齢者をサポートする体制は、充実してい
くどころか、先細っていく可能性すらあります。
今回Sさんを助けてくれた地域住民はたまたま良い人だったのかもしれ
ません。
独居高齢者は、今社会で暗躍している特殊詐欺や犯罪者の格好のターゲ
ットです。
そんな人間の標的にされれば、大変なことにもなりかねません。
これからも増え続ける独居高齢者をどうサポートしていくのか。
ただ、この問題は高齢の親を持つ子供世代だけの問題ではありません。
いずれは誰しもが高齢者の仲間入りをするからです。
そして、いつかは独居高齢者になる可能性は低くはないのです。
誰しもが考えておかなければならない問題なのですが、今お住いの場所
はこれらの問題に対処できるでしょうか…
稲の刈り取りも終わった田んぼも… 風になびくススキが綺麗です
街もいつかは高齢化していく
人間が高齢化するのですから、当然住んでいる街も高齢化していきます。
筆者の住む街も高齢化していて、自治会から脱退していく人も後を絶ち
ません。
高齢者のサポートは、社協を中心とする団体・組織だけでなく、自治会
や民生委員も協力してやっていますが、十分とはいえません。
そんな高齢化していくところから引っ越して、もっと良い所(施設や高
齢者住宅)にいく方法もありますが、住み慣れた地域から離れざるをえ
ません。
そして、これからは日本中どこに行っても、少子高齢化から逃れること
はできないのです。
この国の国難ともいえる少子高齢化、そろそろもっと多くの国民が真剣
に考えていかなければならない時期に差し掛かっています。
食欲の秋です ついつい食べ過ぎてしまいそうです…
難民にならない為に
今、日本にも自国の困難な問題から逃れるために、多くの難民が海外か
ら避難をしてきています。
ただ、日本人もこれから難民になる可能性が高いのです。
前述のように、介護サービスを受けたくても(ヘルパーの)人手不足や
地域のサービスがなくなったり、先細っていくために、
「介護難民」になるかもしれません。
(高齢で)自動車に乗れなくなったり、公共交通機関の撤退や廃業に
よって、
「買い物難民」になるかもしれません。
同様の理由で病院に簡単に行けなくなったり、自治体の財政難で病院が
統廃合されたりすると、
「医療難民」になってしまうかもしれません。
そして、独り暮らしになると、
「独居難民」となってしまうかもしれないのです。
こんなこと今から考えられないと思っているかもしれませんが、誰も
が、いつかは高齢者になることを理解しておく必要があるのです。
本当はこんな問題に対処するところが必要なのですが、今のところは
退職金の運用や老後資金の確保等お金に関する相談を一部金融機関が
実施しているくらいです。
このような問題を真剣に考え、対策を打っていく人間には高度な知識と
経験・努力が必要ですが、まだまだそんな人材が少ないのが実態です。
そんな努力家も、まだまだ社会から認知されていないのかもしれません。
といっても、もう暫く暑い日が続きそうです…アイスもすぐに溶けて
写真は北海道最北端のSAエリアで買ってみたソフトクリーム
例えば、介護一つとっても、質の高い介護をする為には非常に高いスキ
ルが必要ですが、低賃金で雇うのが当たり前の世界になっているために、
介護職の離職率は異常に高いのが実態なのです。
こんな状態では、スキルの高い人材はなかなか育ちません。
早くこんな状態に終止符を打たない限り、介護は崩壊するかもしれませ
ん。
この国の高齢者を様々な難民にしない為にも、もう一度制度の見直しが
必要なのかもしれませんね。
もう5年、10年すれば、Sさんのような独居高齢者の数は飛躍的に増
えていきます。
その時までにセーフティーネットを拡充する必要があるのですが、今は
その流れに逆行しています。
なんとかする為には、もっと多くの(困っている)方々が声を大きくし
て訴え続ける必要がありそうです。
そして、自分に出来る方法を見つけて手を打っていく必要もあるのです。
5年後、10年後にどんなことになるのか考えただけで少し恐ろしくな
りそうです…
でも、この国の文化・体質ではその時になって「おしりに火が付かない」
と動きは出てこないかも…
困った人が社会に蔓延した時に、「もう手遅れです」とならないように
する為に、今「どんな行動」が必要なのか考えることが求められていま
す。
今回の記事は、最近筆者の身近に起きた事件について考えてみました。
今回の記事も最期までお付き合い頂き、感謝申し上げます。