生活力は必要か?
先日仕事で、ある高齢女性のお宅にお邪魔させて頂く機会がありました。
この女性、ご自身で「年金生活者です」とおっしゃるものの、高級賃貸
マンションで一人住まいと、とても優雅な生活を送っておられます。
声の張りもあって、とてもお元気そうなので、60代後半と思いきや、
実は今年で85歳なのだそうです。
ビックリしていると、なんと生涯独身とのこと…
大手銀行で重職に就いていた、れっきとしたキャリアウーマンだったそ
うです。
阪神淡路大震災で、神戸市内のご自宅が倒壊してご苦労された後も、
お母様の介護を最後までやり遂げる立派な女性でもありました。
でも、どう見ても85歳とは思えません。
どうしてこんなに元気で、健康な状態を保てるのでしょうか。
筆者の経験からして、そこには何か条件のようなものがありそうな気が
するのです。
それは遺伝による疾患がないとか、生活様式や生活環境が恵まれている
とか、という条件とは少し違う、そうもっと次元の高いもののような気
がしたのです。
女性の住む街は大阪と神戸の中間地点 文化レベルがとても高い所です
写真は、芸術文化ホールのエントランス とても豪華な造りです
自分で決めることができるか
バブル崩壊後、日本人の給与は全く上がらなくなってしまいました。
ウクライナ問題等の影響で物価が一気に上昇して、ようやくここにきて
少し(給与が)上昇したといっても、物価上昇のペースには全く追い付
いてはいません。
今迄企業で働く人たちも、雇用を守る為に収入(が上がるの)を諦めて
きたわけですが、お金以外にも諦めてしまったものがありそうなのです。
事業の成長が止まってしまった企業では、新しい事業も生まれなかった
ことによって、組織としての新しいポストも創り出すことができません
でした。
ポスト不足で、責任ある立場で仕事ができなくなる人が増えてしまった
わけです。
以前の記事で、地位の高い人の方が低い人よりも病気による死亡率が低
いという研究成果についてご紹介したことがありましたね。
地位が高ければ責任も重く、ストレスも溜まります。
でもその反面で、「自分で決めることができる仕事」の方が、健康状態
を維持できるとした研究内容でした。
この研究成果では、地位の階層が上がっていくほど平均寿命が延びると
いうのですが、
その理由はというと、
「選択の自由度に対する認識が健康に大きな影響を及ぼす」
からだそうです。
つまり、自分で物事を判断できる権限が大きければ大きいほど健康に良
い影響を与えるということが書いてあるわけです。
地元の海側には六甲山系からたくさんの川が海へと流れ込んでいます
その川の周辺には公園が整備されていて市民の憩いの場になっています
でもその公園で散策するのは、なぜか圧倒的に女性が多いのです
上述の女性も、大手企業で重職に就いていたこともあり、この条件に当
てはまるのかもしれません。
この女性だけでなく、筆者が見てきた元気な高齢者の皆さんは、この傾
向は確かにありそうだと感じています。
地位が高かった関係で自慢話(ようするに武勇伝)が多い人が殆どなの
ですが、歳を重ねてもなぜかとても元気です。
地位の高い人の下で苦労した人が健康を害しやすいなんてとても理不尽
なことなのですが…(困)
中間管理職で上下の板挟みになるのは、健康状態を維持するのが難しそ
うですが、ある程度の地位になって、自分で判断して決めることができ
る仕事の方がよさそうな気もします。
でも上述の女性がとても元気なのはそれだけではなさそうです。
男性と女性の違い
女性の方が男性よりも平均寿命が長いのは、日本だけでなく万国共通で
す。
平均寿命が長いだけでなく、高齢期の健康状態(自立度)の変化を見て
もそれがよくわかります。
以前の記事で何度かご紹介してきた男女の健康状態のグラフをまた見て
みましょう。
東京大学高齢社会総合研究機構が長期間追跡調査を実施した結果です
女性と男性の自立度の変化を比べてみても、女性が元気なことが良く
わかります
明かに男性は弱く、女性が元気であることがこの図からもわかります。
女性の場合は、後期高齢期を迎えても多くの方が自立度を維持している
反面、男性は後期高齢期を超えると約90%の方々が一気に自立度を落
していきます。
このように男性が一気に弱っていくのは、現役時代の働き方にも要因が
あるのかもしれませんね。
なぜなら…
大部分の人が「我慢しながら」会社生活を送っていた筈だからです。
自分で決めることができないことと、我慢することが普通であった男性
は現役時代にボディブローのようにダメージを蓄積していたのかもしれ
ないのです。
昭和の時代から平成にかけて企業で働いてきた男性の大部分は、このダ
メージによる影響を抱えているのかもしれませんね。
筆者も思い当たることがあります。
筆者が長年勤めた会社のOBも、退職直後に体調を崩す方が結構いました。
家族の為に懸命に働いたお父さん方を蝕んでいたものの正体は意外なモ
ノかもしれないのです。
銀杏の木の葉は、落葉する前に見事に、綺麗に、咲き誇ります
「まだまだ俺は元気だぞ」と言わんばかりです
写真は、東京大学本郷キャンパス工学部1号館前の銀杏の巨木です
また、男女別で罹る疾患の種類を見ても、男性と女性とは明らかに違い
ます。
男性は、心筋梗塞や脳梗塞等の血管障害による疾患の影響で死亡したり、
弱ったりすることが多いのですが、女性はその影響がとても少ないので
す。
それはなぜかというと、
女性の場合、女性ホルモンの働きで血圧を下げたり、悪玉コレステロー
ルの血中濃度を下げたりすることができることは昔から知られていまし
た。
また男性よりも女性の方が、基礎代謝が少なくて、より少ないエネルギ
ーで生きていけることも影響しているという説もあります。
(身体の大きさが違うので、当たり前だと思うのですが…)
ただ、筆者はここでも、それだけではないと感じています。
上述のように自分で決めることができる範囲が男性よりも女性の方が多
い(広い)と感じているからです。
女性の社会進出は随分と進みましたが、まだ男性の比ではありません。
会社勤めで、自分で決められない男性の数がとても多い反面で、子育て
を含めて家庭を切り盛りしてきた女性は、普段から自分で決めることが
多かった筈です。
企業の中で上司や会社の指示に従わざるを得ない男性と、家庭という職
場で柔軟に運営を行ってきた女性、
生きていく上での知恵も、女性の方が上なのかもしれませんね。
日が暮れるのが早くなりましたがイルミネーションが始まり華やかです
何か「ひらめけば」いいのですが…
こういう力を「生活力」というのかもしれないと筆者は思いました。
言われたことに従うのではなく、どうすれば解決するのか、どうすれば
良い道を選択できるのか…
どうすれば、豊かに暮らせるのか…
そんな「生活力」ゆえの地域でのコミュニティ構築なのかも…
女性は子供のつながりもあって、すぐに地縁を創れますが、男性は社縁
ばかり(ようするに会社人間)で、地縁づくりはとても下手くそな人が
多いようです。
筆者がボランティアで地域活動をしている時、イベントに集まってくる
のは殆どが女性で、その中で仲良しがグループを創って楽しんでいまし
た。
(数少ない)男性はというと、グループも創らずに隅っこで独り寂しく
しているイメージが強いのです。
女性にはコミュニティの中で生きていく力(生活力)が、生まれながら
備わっているのかもしれませんね。
(男性には「生活力がない」とは言えませんが…)
男性が女性並みに元気になる為には、この「生活力」の養成と、自分で
決める人生を早くスタートさせることが必要なのではないでしょうか。
会社勤めでは、なかなか自分で決めることはできないのかもしれません
が…
今回の記事は、高齢にも拘わらずとても元気な女性に会って考えさせら
れたことを記事にしてみました。
誰もがいつまでも元気でいたいと願います。
願うことだけでなく、何かを変えていくことも大事なのだということで
しょうか…
今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。