幸福を考える
3月20日は、世界幸福Dayでした。
毎年、この日に国連の関連組織等が中心となって調査した結果を、「世
界幸福度報告書」として公表しているようです。
世界の国や地域の「幸福度」をランキングとして公表しているのです。
画像素材:Jim Mayes
四つ葉のクローバーを見つけると幸せになれると言いますが本当でしょ
うか?
その内容は、過去の記事でもご紹介したことがあるので、ご興味がある
方はご参照ください。
最新のデータでは、日本の幸福度は世界143国中51位だったそうで
す。
昨年が47位でしたので、4ランク下がったわけです。
どちらにしても、日本の幸福度は(世界と比べると)高くないことがわ
かります。
上位は、相変わらず北欧の福祉国家が独占していますが、アジアの中で
も日本は決して(幸福度が)高くはありません。
日本と同じようにランキングを下げている国を見ると、若者の幸福度が
低下していることがわかったそうです。
日本も同じように、30歳以下の若者の幸福度が大幅に下がっている実
態が徐々にわかってきているようなのです。
非正規の拡大と賃金の低迷、この国から希望が消えていきそうな勢いで
す。
岸田総理が自慢する「賃金アップ」は一部の大手企業だけで、殆どの国
民はその恩恵を受けてはいません。
画像素材:PIXTA 幸せな家庭とはどんな家庭なのでしょうか?
社会の在り方、家族の在り方に大きな変化が起きているのかも…
若者だけではない
先日、孤独や孤立についてのセミナーに参加する機会がありました。
その中の報告で、気になることがありました。
最近、60代以降の孤独死が年々増加傾向なのだそうです。
高齢化の進展と共に単身(独居)高齢者が増え続けている為、納得でき
る面もあるのですが、
少し複雑です…
加えて、50~60代(特に男性)の孤立も大きな問題になってきてい
るようです。
幸福度が落ちている世代は、決して若い世代だけではないのです。
この高齢期の孤独や孤立を甘く考えると大変なことになりそうです。
この孤独、とても厄介です…
身体的な影響としては、喫煙と同程度の健康リスクがあることもわかっ
ています。
喫煙していないのに、1日15本のタバコを吸ったのと同じリスクがあ
ると聞くと驚きです。
日本人の2人に1人が罹患するという癌による死亡リスクも上がるそう
です。
精神的には、うつや自殺にも繋がる可能性が高く、
放置すると、認知症へのリスクも確実に上がります。
早くからこの孤独・孤立問題に孤独担当大臣を設けて対策をしてきた英
国では、この孤独・孤立による経済損失が年間5兆円もあると試算して
います。
一国の経済活動の中で、一つの業界が消滅する程のインパクトがあると
いうことになります。
(孤独問題は過去にも記事にしていますので、ご興味のある方はご参照
ください)
この高齢期での孤立と孤独の問題、確実に日本の幸福度に影響を与えて
いるようです。
画像素材:いらすとや 高齢男性の孤立・孤独問題が深刻化しています
孤立は見えない
この孤独・孤立の厄介なところは目には見えないことです。
孤立した人は見えないのです。
声を上げてもらうことができなければ、分からない厄介な代物です。
最近、都会だけでなく地方でも建設が進むタワマン…
憧れる人も少なくないのですが、マンションが嫌いな人も逆に少なくあ
りません。
理由をお聞きすると、
隣りにどんな人が住んでいるのかわからない…
地域のつながりを感じない(冷たい地域社会)…
というお話しが多いのです。
確かに筆者も神戸の人工島にあるマンションに5年ほど住んでいました
が、とうとうその間に隣人にお会いしたことが無かったのです。
(筆者が殆ど家に帰っていないということもありますが…(笑))
今住んでいる戸建て住宅の街では、ゴミ出しの度にご近所の方とお会い
してご挨拶しますし、どこにどんな方が住んでいるのかはわかっていま
す。
社会の在り方が、孤立や孤独を生んでいる可能性もあるのです。
孤立や孤独を感じている方が声を上げることができる仕組みを、地域の
社会に創る必要性があるような気がします。
今以上に高齢化率が上がり、高齢者の単身(独居)世帯が増える前に…
こんな団地の一室で孤独や孤立が起きていてもわかりませんね
声を上げてもらえない限り把握は不可能です
社会との関係性
筆者が調査をしている団地の中にも、高齢化によって自治会の運営がで
きないところや自治会が解散したところが増えています。
自治会活動そのものに違和感を感じて、脱会する人も少なくありません。
そうなると、個人と地域社会の接点は更に希薄になってしまいます。
結果として、地域社会そのものが弱体化していくのです。
日本人は元々農耕民族でした…
社会に属して、社会の中に居場所があることに安心感を抱く人が多いの
かもしれません。
ある集団(組織)のメンバーであるという事実が、安心につながる筈だ
ったのですが、その考え方にも変化が出ているのでしょうか…
自治会のような組織が衰退していく中で、どのような形の取り組みがこ
れからのこの国の地域社会に必要なのかを考えていおく必要があると感
じました。
上述のセミナーの中では、その解決策のヒントが提示されていました。
それは、「コミュニティ・シェッド(Community Shed)」と呼ばれ
る取り組みです。
1990年代頃から、豪州や北欧のアイルランドで数多くの事例が確認
されています。
高齢男性の孤立や孤独を防ぐ仕組みとして、地域住民の居場所となる場
所をつくっていく取り組みのようです。
画像素材:フォトサリュ
地域の触れ合い喫茶では豪華な食事はできませんが…
ちょっとした「安心感」や「ホッコリ感」は味わえます
高齢者の孤立や孤独の問題は、幸福度が高い国でも存在しているようで
す。
この取り組み、SDGsの一環として、「シチズンサポートプログラム」
として、世界的に取り組みが進められているようなのです。
当然、この日本でも…
強制的なものではなく、地域の中で「緩いつながり」をつくっていくこ
とを目的としているようです。
地域で有志やNPO法人等が取り組んでいる「ふれあい喫茶」的なもの
の進化系なのかもしれませんね。
自治会はこうあるべき論が強すぎるのかもしれないと感じました。
もっと緩い関係性でもいいのかも…
若者が減り、高齢化していくこの国で、地域社会の弱いところを補完で
きる仕組みの登場を期待するばかりです。
幸福度が低迷するこの国で、国民の多くが幸福を感じるようになる為に
何が必要なのかと考えた時、まず地域社会から少しずつでも新しい仕組
みを導入していく…
高齢化していく(高齢者が増えていく)中で、高齢者の皆さんが幸せだ
と感じてもらえる社会の構築が待ち望まれます。
今回の記事は、世界幸福Dayにちなんで、この国を静かに蝕んでいる孤
独や孤立について、セミナーの内容をご紹介しながら考えてみました。
今回の記事も最期まで読んでくださり、感謝申し上げます。