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この国はまた貧しくなるのか?(後編)

2024年11月23日
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今回の記事は前編に続いて、なぜ高度成長期は真面目に働けば食べてい
けたのかを読者の皆様と一緒に考えてみたいと思います。

 

それを考えることによって、何故今「真面目に働いても食っていけない
のか」の理由をハッキリとさせることができるような気がするからです。

 

キーワードは、前編でご紹介した「年功賃金」と「終身雇用」です。

 

終身雇用は、その名の通り企業が社員の生活を保障するのですから、社
員が食べていけないなんてことは起こりえないのです。

 

それよりは、もう一つの年功賃金に大きなインパクトがあります。

 

以前の記事でもご紹介しましたが、下図に日本の年功賃金について図に
示してみました。

 

 

 

以前の記事でも度々ご紹介してきた年功賃金の図です
年功賃金が悪者のようになっていますがとてもよくできた仕組みです

 

 

日本の年功賃金制度は実によくできていると思います。

 

上図の横軸は入社から退職までの勤続年数を表し、縦軸は賃金と社員の
会社に対する貢献度を表しています。

 

右肩上がりのオレンジのラインが年功賃金です。

 

入社から退職する間際まで右肩上がりに上昇しますが、社員の会社への
貢献度は年齢によって変わります。

 

若い時にはまだ会社への貢献度は少ないのですが、賃金が少ないとすぐ
に退職してしまうので、企業が持ち出しで給与を払うのがAの部分です。

 

退職対策が、実は社会(生活)保障の一環になっていたわけです。

 

だからこそ、若くても真面目に働けば食べていけた…

 

それが今は、非正規で最低賃金が当たり前…

 

真面目に働いても食べていくのが難しくなったわけです。

 

今の賃金を図式化したらオレンジのラインは平行ラインになります。

 

それも上図のラインより遥かに下に位置する平行ラインです。

 

ラインの下の面積から生涯年収が激減することがハッキリわかります。

 

このラインで、将来の夢は描けるのでしょうか…

 

企業はこのAの時期、貢献度より多めの給料を払いながら、将来の会社
への貢献度を高める為に若い社員に対して教育を実施していました。

 

その結果、経験とともに仕事ができるようになり、会社への貢献度も上
がっていきます。

 

企業は、時間とお金をかけて社員を育てていたのです。

 

 

昭和の時代を思い出す古びた商店街(大阪府豊中市)
昭和を古臭いという方も多いのですが人を大事に育てた良き時代でした

 

 

非正規に教育等ある筈がありません。

 

言葉は悪いのですが、使い捨てです。

 

人は大事に育ててこそ、利益を上げてくれるのです。

 

Bで示された部分、社員を育ててきたからこそ、ここで企業は利益を上
げることができたのです。

 

労働者の賃金を抑えて利益を見出すだけでは将来は見えてきません。

 

注目すべきはCの部分です。

 

中高年期になると、企業にとっては貢献度よりも賃金の割高感が増して
しまいますが、実はこの時期は一番お金がかかる時期なのです。

 

子供が大学に進学する等、特にお金がかかる大事な時期です。

 

その時期に高止まった賃金が生活を大きく助けていました。

 

だからこそ、社員は安心して働けるのです。

 

働かないオジサンができるのには原因があるのです。

 

不正を働く人が出てくるのも理由があるのです…

 

バブル崩壊以降、批判されている年功賃金には社会保障に代わる絶大な
力があったわけです。

 

それがなくなってしまった今、どうなったでしょうか?

 

本来、社員がもらっていたお金は何処にいったのでしょうか?

 

平均年収は、高度経済成長期と比較して100万円を遥かに超える額が
減少しています。

 

今回の選挙で、手取りを増やすと公約した政党が大きく票を伸ばしたの
は頷けますね(笑)

 

日本人の給料が全く伸びていない。

 

以前の記事でもご紹介した下図を見ても明らかです。

 

 

少し古いデータですので、今はもっと格差が広がっているのかも…
ようやく少し上がってきましたが、大きな効果は期待できません

 

 

 

伸びるどころか減っています。

 

最近ようやく上がってきたとしても、諸外国との格差は大きく開いてし
まいました。

 

生活用品や光熱費が値上がりする中で、生活が厳しくなるのは当たり前
なのです。

 

この要因は、非正規等の雇用形態が広がっただけではありません。

 

企業の社会的責任の持ち方が大きく変わったことも影響しています。

 

欧米の経営手法が定着してしまった影響は、雇用形態だけでなく企業と
従業員の関係をも大きく変えてしまいました。

 

企業は高度経済成長期と比較しても、社員の教育にお金と時間を費やさ
なくなってしまいました。

 

即戦力を採用して、効率よく経営を実施する。

 

とてもかっこよくて、

 

これこそ経営だと思うのですが、

 

本当にこの国に合っているのでしょうか???

 

昔から「この国の資本は人だけだ!」と聞いてきました。

 

その通りだと思います。

 

 

画像素材:Jim Mayes
この国の唯一の資産である人を粗末にするのは寂しい限りです…

 

 

石油も出なければ、天然ガスもありません。

 

貧困で学校へも行けない人が増えれば、即戦力は外国人ということでし
ょうか?

 

インバウンドで外国人が増えるだけでなく、ビジネスの世界も外国人だ
らけ…

 

日本人の大半(一部の富裕層と政治家以外)は貧乏でもいいのでしょう
か?

 

この国の社会の在り方だけでなく、企業の在り方が変わる必要性がある
と感じる昨今です。

 

これから、襲われるのは富裕層の家だけでなく、企業も狙われるように
ならなければいいのですが…

 

最近、「経営理念」とか「社会的責任」という言葉をとんと聞かなくなっ
てしまいました。

 

とても、寂しい限りです…

 

日本の良いところを活かして、世界と戦う…

 

競争する諸外国が、(この国に対して)一番恐れていることは何でしょう
か?

 

それをもう一度明確にする必要性があると感じました。

 

一つだけ言えることは、唯一の資本(資産)である人を教育しなけれ
ばこの国の将来は危ういということだけです…

 

低賃金と不安定な雇用形態に嫌気がさした多くの若者が、既に海外へと
次々に流出しています。

 

これからも止まることはないでしょう…

 

そして、格差はさらに広がる中で、凶悪犯罪は品を変え、質を変えて、
増え続けると思います。

 

こんな状態を放置すれば、どうなるのか…

 

考えただけでも怖くなります。

 

どうすれば、この国の社会が変わるのか、

 

どうすれば気付くのか、

 

諦めないで考えていくことしか方法はないのかもしれません。

 

前回と今回の記事は、闇バイトで募集された若者による凶悪事件がなぜ
多発する社会になってしまったのかを考えてみました。

 

最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。