平等は悪いことなのか?
会社の役割
朝起きて寝室の雨戸を開けると、大きな満月が山の上に輝いていました。
まだ真っ暗な空にとても明るく、月の表面の模様もハッキリと見えます。
「中秋の名月」ならぬ「(一週間前ですが)冬至の名月」でしょうか…
若い頃はよく会社から花見だけでなく、月見にも出かけました。
結局は飲み会なのですが、会社もこんな親睦会をとても大事にしていま
した。
会社側はお金を使うだけでなく、そんな親睦会に社長や幹部も多く出席
していました。
会社の幹部も社員にとても近い存在だったような気がします。
会社は労働力を提供する場所だけでなく、社会活動の中の大きな一部で
した。
筆者は、「企業は社会の公器」という言葉が大好きです。
辛いことも確かにありましたが、嬉しいことも、(人間として)成長を
感じることもありました。
ただ、今はどうなのでしょう…
お金の為に、
生活の為に、
我慢を重ねて、耐えるような場所になってはいないか心配です。
大阪のビジネス街
ここからそんなに遠くないところで3年前凶悪事件が起きました
消えぬ凶悪犯罪
ニュースでまた刃物で他人を切りつける事件が起きたと報道がありまし
た。
被害者の一人である中学生が死亡したそうです。
このブログの記事にも取り上げた、3年前の12月中旬に起きたクリニ
ック放火殺人事件のことを思い出してしまいました。
社会に生きづらさを感じた犯人が、追い詰められて起こした事件でした。
今回もこの社会に生きづらさを感じた人間の犯行なのかもしれません。
そして、この事件から一週間も経たない状況で、地元神戸でまた事件が
起きたのです。
筆者が毎日のように通る神戸の中心である地下鉄三宮駅の構内でです。
確かに昔も凶悪犯罪はありましたが、こんなに頻繁に発生する世の中で
はありませんでした。
なぜ、こんなことが頻繁に起きる社会になってしまったのでしょうか…
この社会に蔓延る生きづらさの本当の正体とは何でしょうか?
何が変われば、この生きづらさが改善されるのでしょうか?
大阪のウオーターフロント 並木の向こうは大阪府舞洲庁舎
見た目はのどかな街並みですが、生きづらさを感じながら生きる人々は
とても多いのが実情のようです
なぜ平等ではダメなのか
この国にはかつて平等主義という考え方がありました。
労働の対価である賃金にもそれが存在していました。
学歴による賃金差も大きなものではありませんでした。
社内の仕組みもそれは同じです。
先日の記事でもご紹介したように長く勤めれば増え続ける「年功賃金制」
でも、出世のよる格差はそれほど大きなものではありませんでした。
賃金も平等だったのです。
大企業の社長ですら年収1億円の大台を超えている人等はいなかったよ
うに記憶しています。(当然オーナー社長は除いてですが)
それが、経営者の欧米化が広がり、役員になれば年収が1億円を超える
なんてことが当たり前になってしまいました。
某自動車メーカで長く社長を務めた外国人のG氏のようにとてつもない
報酬を求める経営者が増えてしまいました。
外国に別荘を購入したと自慢する大手企業の経営者までいます。
その代わりに貧困に陥る人が増え続けているにも拘わらず…です。
昔の経営者は、
社員の心がわかり
社員から近く
社員を幸せにする責任を感じている人が多かったような気がします。
前述の自動車メーカは、経営者の責任を明確にせず、社員の首を大量に
切るようです。
昔の経営者の中には、
「社員の首を切る前に、経営者が切腹せよ」
と公言する立派な方々がたくさんおられました。
筆者は、この経営者の欧米化が、この生きづらさを感じる格差社会の要
因の一つにもなっているような気がしてなりません。
大阪のメインストリート 御堂筋
街並みは超高層ビルが立ち並び欧米の都市と変わりませんが…
何も全て欧米化する必要等ありませんね
日本の良いところは変える必要はないと思うのですが…
成長と公平な分配
前の総理大臣が就任当時によく口にしていた言葉があります。
「成長と分配」
このブログの記事にもしてみました。
残念ながら雲散霧消となってしまいましたが…
今、この社会の生きづらさの要因になっているのは、この分配が適正に
できていないことによるものだとも筆者は感じています。
平等な分配にはなっていないのです。
大手企業は為替の恩恵もあって、過去最高益を記録しているそうです。
それなのに、社員への分配は言うほど増えてはいません。
大阪中の島 水の都と呼ばれるように水路が街中に走っています
水運という力を使って繁栄を創り出した知恵があるのです
そして利益を生み出すのは「人」でした…
企業も利益を増やしているとはいえ、ヒット商品が出ない状況では、そ
んなに大きく利益のパイは増えません。
企業にとっての利益のパイが変わらないのであれば、後はその中で分配
が行われます。
ただ、その分配(方法)が過去とは大きく違うのです。
簡単に下図にて説明してみたいと思います(思いっきり大雑把ですが)
欧米化で株主の利益が最優先になっている今、株主の配当を上げた経営
者が評価され、経営者の報酬も増えていきます。
株主の配当を上げる為に、経営者は簡単に社員の首を切るようになりま
した。
そして、経費を減らすために非正規を増やしています。
結果として見かけの利益が増え、株主や経営者の報酬が大きく増えてい
きます。
利益のパイが同じとするならば、当然のごとく他の分配の大きさは小さ
くなります。
ここに非正規が凄い勢いで増えている理由があるのです。
少ないパイでたくさんの労働力を確保する方法…
それが非正規です。
バブル崩壊の後、大きく利益のパイが縮小してしまった企業の要望を
(政治家が)容認してしまったがゆえに非正規がこんなに増えてしまい
ました。
ただ、利益構造が改善した今も、なぜか非正規は増え続けています。
過去に、製造業にまで非正規を容認した結果が、今の悲惨な状況という
わけです。
結果として、下図のように “いびつ” な分配になってしまったわけです。
そして、企業が次の成長を期して実施してきた先行投資にも変化が出て
います。
激変する世界情勢を不安視してリスク対応として内部留保が増え続けて
います。
その膨大な額は、以前にも記事でご説明しました。
この内部留保を社員に投資すれば、社員のモチベーションはもっと上が
る筈です。
正しく分配すれば社会も大きく変わるかもしれません。
大雑把なイメージですが、欧米化によるいびつな分配が進んでしまいま
した もう一度この国の良さを活かす分配制度に変える必要があると
思います
この結果、日本の企業で働く社員の満足度は(世界と比較しても)とて
も低いのです。
かつて国に代わって、「終身雇用」と「年功賃金」で社会保障を担ってき
た優秀な企業は消滅しようとしています。
企業や社会に存在していた「互助(助け合い)」の機能も働かなくなって
います。
何かがおかしい…
その結果が、多発する悲しい事件につながっていないと否定できる人は
いるのでしょうか…
社会の中で大きな存在感を示す企業が変わらないと、この社会は大きく
おかしな世界に変わってしまいそうな気がします。
政治家に期待するのは難しいですからね(笑)
ただ、このままではマズイと考える企業は確かに増えています。
以前、セミナー紹介でご案内したことがある団体は、「公益資本主義」を
掲げながら企業活動を通して社会を変えていこうと努力されています。
大手企業も含めて多くの企業がその考えに賛同しています。
こんな動きが、もっと、もっと、うねりを上げて大きくなるよう願うば
かりです。
確かに社会の繁栄を維持したり、成長する為にはお金は必要です
ただ、その生み出し方が大事だと思うのです
錬金術師のようにお金をうまく作り出す経営者ではなく、
社会からの預かりモノである社員(国民)を大事に活かし、
その社員に利益を稼ぎ出してもらえるようリーダーシップを発揮する、
そんな経営者が増えることを願うばかりです。
1億総中流と言われた時代、この国の社会の中には、間違いなく「平等
感」や「安定感」があったのです。
分厚い中間層が、社会に安定感をもたらしていました。
その分厚い中間層が「格差」によって破壊され、社会の安定感が揺らい
でいるのです。
これ以上、悲しい事件を起こさない為にも、この社会に安定を取り戻す
必要があります。
一日でも早く…
今回の記事は、休日の朝から暗いニュースを見て、思うところを記事に
してみました。
希望ある明るい社会の実現を願う一人として…
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。