頑張る人が報われる社会
今年も新春の箱根路を大学生ランナーが駆け抜ける箱根駅伝が行われま
した。
筆者の母校も毎年出場していることに加えて、長く勉強していた大学の
選手も学生選抜で出場(それも2人も)するとあって楽しみにしていま
した。
駅伝3冠を狙った大学の優勝を阻止したのは、昨年度優勝校のA大学で
した。
TVでも赤門リレーと騒がれていました
筆者もT大生が箱根駅伝を走るなんて聞いたことがありませんでした
東京大手町のゴールで、監督と共に(胴上げで)宙に舞った女性がいま
した。
誰かと思ったら、監督の奥様…
実は、選手たちの日頃の生活をサポートする寮母さんの仕事をしている
そうです。
なぜ、監督がゴール地点に奥様を呼んだのか…
監督のコメントに少し感心させられました。
「裏方で頑張っている人間が表に出て表現される流れをつくらないとい
けない」
批判を覚悟で、裏方としてチームを支える奥様にスポットライトを当て
る機会を設けたというから少し感激してしまいました。
日頃の苦労を労う暖かい心遣いでもあったようです。
監督はこうも発言していました。
「頑張った人が報われる社会を僕はつくりたい」
素晴らしい言葉ですが、今の社会はそうではないとも感じてしまったの
です。
この監督の言葉、政治家(特に首相)から聞いてみたい言葉です。
今年も湘南の海をバックに選手たちの快走を見ることができました
持たざるものの重圧
この国では欧米と同じような格差が蔓延ってしまいました。
(お金を)持つものと、持たざるものとの差が広がり続けています。
ごく一部の人間が富を独占し、
多くの国民が非正規で、
そして最低賃金で働くことを国が容認してはいけないのですが…
こんな格差社会の中で、若い世代の中には「諦めのムード」が漂ってい
るそうです。
「頑張っても豊かにはなれない…」
この国では、頑張っても報われないという哀しい現実が社会に広がって
しまったのです。
非正規の世帯でどうやって子供を大学まで行かせることができるのか…
奨学金があるといっても、中身は借金です。
この奨学金が(少ない給料から)返済できなくて困っている若者がどれ
ほど多いことか…
「頑張っても報われないなら、頑張る必要なんてないよね…」
こんな社会の中で、生きていくことの意義を見出すのは、とても難しい
ことだと筆者も思います。
希望の虹も若者にはとって消えかかっているのかも…
「でも、頑張るしかない…(生きていく為に)」
「失敗できない…(今よりも堕ちていっていくのは怖い…)」
こんな状況の結果が過労死なんてことになれば、この責任は誰が負わな
ければならないのでしょうか…
真剣に考えさせられてしまいますね。
待たざるものの重圧を軽減させてあげることができればいいのですが…
大学の無償化といった「点の対策」ではなく、
「面の対策」を考える時が来ていると感じてしまいます。
広がり続ける格差にメスを入れなければ本質的な解決にはなりません。
少なくとも、一生懸命働けばキチンと食べていける社会の実現は必須だ
と思うのです。
だからこそ、非正規は悪なのだと思います。
厳しい環境でも花を咲かせることも可能ではありますが…
社会の中でもっとたくさんの花が咲いてくれればいいのですが…
ゲームチェンジャーの必要性
といいながらも、
持つ者からすれば(既得権のある)現状維持が一番気持ちの良い状況で
あるわけで、変えることは至難の業かもしれません。
現状の仕組みでは、頑張っても報われない社会が続きます。
どうやったら、頑張ったら報われる社会になるのでしょうか?
一つの方法として、現状の仕組みとは全く異なる仕組みを社会の中に導
入することが上げられます。
全く新しい仕組みで動ける経済・社会…
まず、働き方は何度もご紹介してきた「協同労働」が一つの選択肢にな
るかもしれません。
会社組織ではなく、働くもの全てが「出資者」であり、「労働者」でも
ある、完全フラットな組織体制の実現です。
お金を持っている資本家のような存在のみが利益を得るという偏った経
済ではなく、正当な分配ができる働き方もできるのです。
ただ、この協同労働はまだまだ裾野が狭く、これから多業種での実績づ
くりが必要な状況です。
実現すれば、今の新資本主義よりも遥かに分配という面では平等になり
ます。
協同労働以外にも多様な働き方が広がっていけば、不公平な社会にメス
を入れることができるかもしれませんね。
次に産業そのものに目を向けてみたいと思います。
家電製品のように、モノが生活に行き渡ってしまった結果、モノが売れ
なくなってしまいました。
海外との競争の結果、価格が下落して、売っても利益が出ない状況です。
ですからそこで働く人間にもお金が回っては来ません。
もっと違う新しい産業が必要なのです。
例えば以前の記事でもご紹介した「シニア産業」がその一つです。
以前にもご紹介した下図の中で両端はもう産業の一つとして立派に成り
立っています。
東京大学 高齢社会総合研究機構 2018.4.18に行われた秋山 弘子教
授の講義内容を筆者が加筆・アレンジしたもの
図の左側が、少し弱ってしまったシニアを対象とした介護・福祉事業
その反対の右側が、裕福なシニアを対象としたレジャー産業
その中間に位置する「普通のシニア」を対象とした領域が産業の空白域
ということになります。
この「(人口の塊である)普通のシニア」こそ、今、生活の進歩や進化を
待ち望んでいる方々です。
将来の(健康)不安等に対応する為の製品やサービス
死ぬ迄住み慣れた自宅で暮らす為の製品やサービス
筆者が大学の高齢社会研究所で勉強させて頂いていた時、よく先生から
言われていた言葉があります。
「〇〇君、高齢社会のブームを創れ!」
自動車や家電産業で支えてきたこの国の産業でしたが、最近柱といえる
産業がなかなか出てきません。
電車内の広告宣伝は、その殆どが(男性も含めた)美肌産業や派遣事業
者の広告ばかりで悲しくなることがあります。
新しい産業で、この国の仕組みを変えることができれば、
「頑張った人が報われる社会」
をもう一度創りなおすことができるかもしれませんね。
大きな壁はありますが、
(平等な分配が可能な)新しい働き方
と
(キチンと生活が可能な)新しい産業
の創出の為にも、ゲームチェンジャーの出現を待つばかりです。
このゲームチェンジャー、
どんな産業で実現可能なのか、
読者の皆様のご意見も是非お聞きしてみたいです!
今回の記事は、「頑張った人が報われる社会」を目指して何が必要なのか
を考えてみました。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。