定年後の不安の解消法
今回の記事は、前回の記事に続いて対談記事にさせて頂きました。
対談頂いたのは、以前に記事でもご紹介させて頂いた経済コラムニスト
の大江 英樹さんです。
新宿のカフェでお会いした大江さん、いつも笑顔が素敵な方です。
お聞きすると、毎朝鏡で笑顔の練習をされているとのこと。
筆者もいつも感心させられています。
それでは、セカンドライフの生き方そのものの良い手本になる大江さん
のお話を楽しんでみてください。
大江 英樹さん
【星田】
本日はお忙しい中、ありがとうございます。
まず大江さんの著書についてお伺いをさせてください。
今年に入って「定年3.0」「定年前」の2冊のご本を出版されていますね。
その中からいくつかご質問をさせて頂きたいのですが、
まず定年前の方々の不安についてお聞きしたいと思います。
大江さんのご本の中にも「お金」「健康」「孤独」の3つの不安について
取り上げられています。
その不安への対処方法等ありましたら教えてください。
まずは見える化と自分化
【大江さん(以下敬称略)】
そうですね。
まず、健康について私は専門家ではないので、お金からいきましょうか。
私がいいたいことは、「老後を不安に思っているが、その割に関心の無い人が多い」ということです。
どういうことかというと、不安だ!不安だという人は多いのですが、
将来の収支について、自分できちんと把握できていない人が多いということです。
私は定年前と定年後の数年間、家計簿をつけましたが、つけるとよくわかるのです。
収入はともかくも、支出の内容をチェックしてみると、何にお金を使って
いるのか、どこに無駄があるのかがよくわかります。
そしてこれは、自分でやらないと意味がありません。
今は、家計簿を付けている家庭は1割くらいしかないと言われています。
現役時代は毎月決まった給料が決まった日にもらえます。
これは企業で言えば、日銭が入ってくるようなものです。
ところが退職すると、年金収入は現役時代の給料よりもかなり少なくなりますし、人によっては退職後すぐ公的年金を受け取れない場合もあります。
したがって、現役のうちに収支の予測をきちんとしておくべきだと思い
ます。
収支が見えてくると不安も和らぎます。
【星田】
まず不安を解消する為には見える化ということですね。
【大江】
その通りです
【星田】
これから企業も大量退社時代を迎えます。
当然のごとく不安を感じている人も増えますよね。
見える化する必要がなかった方々が見える化する為には、まず意識改革が
必要かもしれません。
奥さん任せではなく、まず自分でやってみることが重要になるんですね。
オタクになるな
【大江】
次に健康についてですが、私なりに自分の健康を考える上で大切なことは、
あまり気にし過ぎないこと。
言い換えれば、
健康オタクにならないことが大切かと思っています。
健康とお金はよく似ていると思うんです。
どういうことかと言うと、人生の目的はお金持ちになることではなく、
幸せになることですよね。
健康もお金もそれ自体は幸せに生きるための手段に過ぎないのに、
往々にしてそれ自体が目的になってしまうということです。
だから、やたらお金を貯めれば良い、やたら健康になりさえすればいい、
というのはちょっと違うのではないかと思っています。
【星田】
問題の本質はどこにあるのかということですか?
【大江】
そうですね、それを取り違えないことが大切です。
【星田】
不安の根本にあるのは、もしかするとお金とか健康以外のものかもしれませんね。
それも人それぞれにそれが違うかもしれません。
一つのことに傾注し過ぎるのも良くないかもしれないと感じました。
正しい情報を知るには
【星田】
今度は不安を対処する為の情報収集について教えてください。
大江さんのご本も含めて「定年本」は世に多く出ていますし、
評論家の方々がいろいろな情報を発信されています。
いわば情報が氾濫気味なところもあります。
そんな中で正しい情報を知るのに有効な手段はありませんか。
【大江】
一番いいのは先輩に聞くことですね。
【星田】
それは会社の先輩のことですか?
【大江】
そうです。
正しい情報を得るために一番いいことは自分自身が体験することなのですが、それは自分自身が定年にならないと分からないわけです。
そこで、例えば同じ会社の2年先輩、3年くらい先輩の人に聞いてみることです。
ここで大事なのは他の会社の方ではなく、自分が勤めていた会社の先輩に
聞くということです。
なぜかというと、同じ会社ですので条件や環境がよく似ているからです。
福利厚生・保険制度・年金等ほぼ同じですよね。
だから定年後どんな暮し向きになるかは話を聞けば想像がつくわけです。
それに、同じ会社で働いてきた同士ですから価値観や考え方も共通点があります。
こういうことが意外に大事なことではないでしょうか。
【星田】
企業風土や文化によって不安そのものをどう感じるかが違うわけですね。
【大江】
おっしゃる通りですね。
年次の近い先輩であれば、今でも連絡は取れるはずでしょうから、
一緒にご飯を食べに行くとかして聞いてみることができればいいでしょうね。
【星田】
だったら先輩を大事にしておかなければならないですね(笑)
【大江】
それと本に書いてあることは鵜呑みにしないことです。
それはなぜかというと、定年本の中にはまだ定年になっていないのに
本を書いている方がいるからです。
そういう人の話は単に想像でしかありません。
中には、いろいろな方にインタビューして本を書いている方もいますが、
やっぱりそれも想像がかなり含まれている可能性があるのではないかと
思います。
【星田】
本に書いてあることが全部正しいこととは、言い切れないということですね。
【大江】
その通りです。私の本も含めて(笑)
【星田】
次に「定年前」のご本でサブタイトルにもなっている「定活」という言葉に
ついて少しお話を聞かせてください。
私の会社の同僚(50代)の中には、早期退職したいという人が多いのですが、今は65歳まで会社に残れるのだから、もう少しじっくり考えてみた方が
いいのではないかとアドバイスすることがよくあります。
なぜなら、50代で定活ができていないと思うからです。
セカンドライフを考える上で、準備はとても大事だと感じています。
この定活、どのように活動をすればいいのでしょうか。
【大江】
大事なことは会社の人間とは付き合わないことだと思います。
できるだけ会社以外の人と付き合うのが「定活」の第一歩ではないでしょうか。
さらに言えば、定活を始めるタイミングが大事です。
私は50代になったら始めるべきだと思います。
定活や定年前の準備みたいな話をすると、評論家の皆さんは
40代からやっておいた方がいいとか、
できるだけ早くから考えておいたほうがいい、
という意見もよく聞きます。
確かにそれはそのとおりかもしれませんが、実際にそれはあまり現実的
じゃないんです。
なぜなら、40代って働き盛りですよね。
一生懸命頑張って部長になれるか、役員になれるかって、勝負をかけて
いる時に老後のことを考えることなんかできっこありません。
やっぱり定活は50代になって、会社での出世レースの勝負がついた後に
やるべきなのです。
私はいろいろな企業で50代の方向けの研修をやりますが、
その時に「もう会社人生で上を目指すのはやめて、早く成仏すべきだ」と
よく言います(笑)。
次のステップの為に自分を成仏させる
【星田】
私は自分で自分を成仏させました(笑)。
会社でひどい目にあった時に大きな気付きがあったんです。
自分の将来の為に諦めるのではなく、次の道に早く進むために。
【大江】
早く成仏して気持ちを切り替えた方が幸せになれるんですよ。
どうせ役員にはなれない。
なれたとしても1~2年くらいで、すぐクビになるかもしれない。
役員になったところで、ずっと身分の保証があるわけではないんです。
成仏するということは、気分を変えて次の人生に対して動きだすということなんです。
LIFE SHIFTという本がよく話題にでますよね。
サブタイトルに「人生100年」とついていて、あの本で「人生100年」という言葉が流行語になりました。
みんなLIFE SHIFTの話をすると、人生100年という言葉だけが
独り歩きするのですが、私はちょっとそれは違うのではないかと思って
います。
著者のリンダ・グラットンさんが言いたいことは、
「人生においてシフトチェンジしましょう」ということなんです。
シフトチェンジの為の定活
【星田】
人生のシフトチェンジをするためには、まず自分を成仏させないといけないんですね。
【大江】
そうですね。
人生100年というのは単にシフトチェンジを前提として、これからは100年
ぐらい生きるかもしれないよということだけのことなのです。
【星田】
人生は長い。まだまだチャンスはありますよってことですね。
【大江】
そうですね。
今までは学校を出て会社に入って40年ほど働き続け、60歳で定年になって
あとは「老後」という時代でした。
でも、もし本当に100年生きるのなら、これからは60歳からまだ40年近くも
人生が残っているわけです。
だったら、定年だけを区切りにするのではなく、いつでもシフトチェンジ
しても良いのです。
シフトチェンジという言葉を転職という風に捉えても構いませんが、
広義に捉えれば自分の生き方とか考え方を切り替えていくことだと
思うんですよ。
定活は60歳でシフトチェンジするための準備といってもいいでしょうね。
【星田】
定活はタイミングとシフトチェンジが重要ということですね。
そして、社外の人と付き合うことの重要性はとてもよくわかります。
私も活動を始めて社外の人から多くの刺激をもらいました。
そして付き合いの幅が増えると良いことも一杯あります。
私の起業をサポートしてくれている方々は全て社外の方ですから。
【大江】
人生は長くなりました。
よく、人生二毛作と言いますが、これからはひょっとしたら三毛作、
いや四毛作になるかもしれない。
つまり、シフトチェンジは何回あってもいいのではないでしょうか。
例えば10年ごとにシフトチェンジしても良いのです。
ただ、大企業で働く方々はシフトチェンジが難しいのが実態です。
【星田】
大江さんも私も大企業出身。
なんとなくわかるような気がします。
大企業で役職を経験したら、なかなか変われないのかもしれません。
でも、変われないこと、シフトチェンジできないということは、
人生100年時代に大きなリスクを背負うようなものかもしれません。
せめて50代になったらシフトチェンジできるように準備することが
大事だと感じました。
大江さん、長い時間お付き合い頂き、ありがとうございました。
今回の対談では、大江さんの著書である「定年3.0」と「定年前」の
内容からKEY-WORDを選んでみました。
詳しく知りたい方是非本を読んでみてください。
大江さん、既に21冊のご本を出されています。
定年前、定年後に拘わらず、いろいろな世代の方々にもとても役に立つ
本だと思います。
ご興味のある方、是非手にとってみてください。
お勧めの本
セミナーのご案内
読者の皆さん、大江さんのお話しいかがでしたか?
とても役に立つことばかりでした。
さすがご講演も多い関係でとても面白かったです。
このとっても面白いお話を皆さんも聞くことができます。
今回、対談をさせて頂きました大江 英樹さんのセミナーを予定しています。
開催日時は現在調整中ですが、場所は東京都多摩市(多摩センター駅近辺)になる予定です。
お近くの方で是非聞いてみたいと思われる方は、ブログの
「問い合わせ」コーナーでご連絡ください。