日本の高齢化の特徴
日本の高齢化には3つの特徴がある
日本の高齢化には、3つの特徴があります。
一つ目はつい先日28%を超えた高齢化率の高さです。
もう既に4人に1人が高齢者である実態だけではなく、それ以外にも特
徴があります。
二つ目は、高齢化のスピードです。
高齢化のスピードは、65歳以上の高齢化比率が7%(高齢化社会)に
なったころから、14%(高齢社会)になるまで何年かかるか、という
ことで測られることになっています。
日本の高齢化比率が7%になったのは1970年大阪万博が開催された
年で、日本が先進国の仲間入りを果たしたころといえます。
どんな国もだいだい先進国になると同時に、高齢化社会に突入するとい
われていますが、「アジアの奇跡」といわれ、世界に類を見ないスピー
ドで経済成長した日本は、高度成長と共に高齢化を発生させたといえま
す。
そして、高齢化比率が14%を超えたのが1994年であることから、
日本は1970年から1994年の24年間で高齢化社会から高齢社会
に移行したということになります。
これに対して日本よりも一足先に高齢化社会に突入したヨーロッパ諸国
では、高齢化社会から高齢社会への移行に50年から100年を費やし
ていることを考えると、日本はヨーロッパ諸国の2倍から4倍のスピー
ドで高齢化しており、日本の高齢化のスピードは異常な速さだといえま
す。
この速さに対応する為には社会の仕組み自体を速く変えていかなければ
ならないことを示していますが、現在は全く社会の仕組みが追い付いて
いない状態であるといえます。
そして三つ目は、少し深刻な特徴です。
日本の高齢化の問題を考える際に注目される点として、日本の高齢化の
深さがあります。
2014年の総務省統計時点では日本の高齢化比率は約26%でしたが、
その半数である13%は65歳から74歳までの比較的若い高齢者(前
期高齢者)でした。
その比率が団塊の世代の人達が全て75歳以上後期高齢者になる202
5年には、高齢者の60%が後期高齢者となり、2060年頃には70
%を超えると予想されているのです。
現在の高齢者は20年前と比較しても若返っているといえますが、75
歳以上になると、急速に自立生活が難しくなるという調査結果が出てい
ることは事実でもあります。
東京大学高齢社会総合研究機構が、健康度の変化パターンについて全国
高齢者を対象に20年間追跡調査した結果、男女ともに70歳を過ぎた
頃から急激に自立生活が難しくなることが分かっています。
ようするに後期高齢者となる75歳以上を超えると確実に動けなくなる
人の比率が増えるのです。
それに合わせて医療や介護のニーズが増えることによる社会保障費の増
大につながっていくという結果を招くことになります。
上記に述べたように日本の高齢化には、「高さ」「速さ」「深さ」の深
刻で対処が難しい特徴があります。
それは下図に示す通り “前例のない難しさ” が伴うものでもあるので
す。
出所: 2014.11 Business Labor Trend 慶應義塾大学 清家 篤
義塾長 講演記録を参考にまとめたもの
高齢化をもたらす要因
上記の高齢化をもたらす第一の要因は長寿化です。
経済成長で栄養・衛生・住環境・医療のレベルが大きく改善され、日本
の平均寿命を縮めていた要因が全て克服されたことによる結果ともいえ
ます。
そして、もう一つの要因として少子化があげられます。
この少子化も経済の発展成長との相関があります。
貧しい社会では多産多死の社会であったのが、一人当たりの所得が上昇
していくと子供はたくさん産みません。
そして産んだ子供は必ず元気に育つという少産少子の社会に変わります。
ただ、この少子化と高齢化は社会保障という観点では矛盾が生じます。
社会保障費は増えていくのに、その担い手が減っていくという矛盾を生
むのです。
また、少子高齢化で人口減少が進むことによって生産年齢人口も減少し
ていくことになります。
日本の高齢化の特徴は、「高さ」「速さ」「深さ」という難しさを伴い
ながら、この少子高齢化による問題を更に複雑なものにしているといえ
るのです。
2018年9月の高齢化の動向
2018年9月16日のテレビニュースで、日本の高齢化についての報
道がありました。
総務省統計で、65歳以上の高齢者が3557万人となり、過去最高を
更新したという内容でした。
65歳以上の女性は初めて2000万人を超えたそうです。
そして前述したようにあっと言う間に総人口における高齢者の比率は
28%を超えてしまいました。
筆者はこの「過去最高」という言葉に違和感を覚えました。
これから何度調査しても過去を更新し続けるのですから。
この日本の高齢化の特徴を知っておくことは、無駄にはならないはずで
す。
社会システムの対応が高齢化のスピードに追い付いていない状況なので
す。
高齢者雇用が進まない現状をみてもわかることですが、影響はこれから
人々の生活にも現れてきます。
このままでは横断歩道を青信号の間に渡り切れない高齢者が多く発生す
る可能性があります。
今からこの社会を守るためにやるべきことがたくさんでてくるのです。
お勧めの書籍
慶應義塾大学の第18代義塾長であった清家 篤氏の書籍は、超高齢化を
迎えたこの国の働き方、そして雇用のあり方について示唆に富んだもの
で、筆者もブログだけでなく、修士論文を作成した際に参考にさせて頂
きました。
皆さんも清家先生のご本を是非手に取って頂ければ幸いです。