衰退途上国
先日とても面白いコラムを読みました。
そのコラムは、23年前に出版された予言本について書かれた素晴らしい
ものでした。
年金支給水準を維持するためには、経済成長が必要とした国の見解も吹き
飛ぶようなインパクトがその記事にはありそうだと感じました。
約30年間も景気の停滞と減速が続くこの日本。
安倍政権が、どれほど経済対策(アベノミクス:最近は誰もあまり口に
しなくなりましたが)の「効果」をアピールしても、国民が好景気を実感
することがないのが現状です。
筆者は、そんな現状を予言したかのようなその本を読んでみました。
この本は今から23年前に日本経済新聞から出されたものです。
その本の題は、「2020年からの警鐘~日本が消える」です。
なにかとても暗いイメージが湧きますが、当時の日本経済新聞の記者や
研究者の皆さんが真剣にこの国の将来を心配して書いたものです。
この本を書いた皆さんは、「2020年にはこうならないでほしい」という
想いで書いた本の中身が2020年を迎えた今、まさにそうなっているのは
とても皮肉なことです。
とても残念なことですが、この本を書いた皆さんが心配していたことは、
その殆どが的中し、懸念された事案はどれも防ぐことができなかったという結果が、今年2020年に明らかになりました。
日本経済新聞が示した危機感
筆者は、今年(2020年)の日経新聞は凄いなと思ってしまいました。
特に新春から特集を組んだ「逆境の資本主義」という投稿記事には関心
させられました。
朝、通勤途中に読んで、もう一度会社で読むくらいでした。
内容は、現代の資本主義そのものの危機についてまとめたもので、全部で
9部作として連載されていました。
その第1回目の記事では、「さびつく(錆び付く)成長の公式」と題して、今までの成長の公式ともいえる
“資本を集め、人を雇い、経済が拡大すれば社会全体が豊かになる”
が破綻しようとしているのではないかと表現されていたのです。
今の世界経済がデジタル化やグローバル化で変質し、格差拡大や環境破壊
などの問題が噴き出していると警鐘を鳴らしていました。
安くて良質のものを大量生産するという日本が得意としてきた成長の公式が錆び付き、この国で働くものが拠り所としていた勝利の方程式も機能しなくなってきたのです。
そして今年、いよいよその本が警鐘を鳴らしていたその「2020年」になったわけです。
改めて「23年前」に封印された内容を筆者が見た感想は、
「やはり真の改革が必要だ」
と強く感じたのです。
23年前に「こうなってはいけない」と当時の日本経済の記者やエコノミストの皆さんが「危機感に駆られて」書いた内容が、その2020年になった
現在では「全く危機感を感じない」ばかりではなく、結局何も変えられないのかという無念さが残りました。
まず本の帯からしてそうです。
「先送りはもう許されない」
「先の世代に『夢』ある社会を残すために、我々は何をなすべきか」
「金融、司法、自治、教育など戦後システムを根底から問い直す」
というキャッチコピーが、もう23年後の今を見ると残念な気持ちしか
残りません。
「夢」ある社会などというものは本当にあるのでしょうか。
確かに最近の若者は「希望がない」と異口同音に口にします。
筆者はしょっちゅう地域活動に参加して、若者から実際その言葉をよく聞くのです。
そして大事なことがもう一つ。
この本で、「先送りは許されない」とされていたことのほぼ全てが先送りされています。
⇒政治は票欲しさに改革をしなかったのか?
⇒だれもが正常性バイアスの罠にはまってしまったのか?
筆者はこの本を見て、この日本の社会には無くなってしまったものがあると感じました。
一つ目は、危機感です。
危機感を煽るつもりはないのですが、この本の中に米国の内部文章を使ってこんなくだりがありました。
「日本の行政改革や規制緩和のペースはとても遅く世界のスピードに
ついていけない」
(中略)
「(日本は)衰退の道を歩む可能性がある」
確かに米国の内部文章が指摘しているとおり、改革のテンポは諸外国と比較してとても遅いことは誰の目にも明らかです。
これは政府だけでなく、日本の企業にも言えることです。
これには大きな改革を嫌う風土や文化があるのかもしれません。
変われない危機感よりも、変わる危機感の方が大きいのかもしれません。
二つ目は、夢が無くなったということです。
断言するのはよくないことかもしれません。
全ての人に夢が無くなったのではなく、夢を持てる人が少なくなったといった方がいいのかもしれません。
特にこの国の将来を背負って立つ若者の中でなくなっているのではないかと。
この本の中に、ある教育研究機関の調査報告がなされていました。
1996年に世界6か国の大都市に住む小学校5年生(歳は11歳くらいでしょうか)4500人を対象に調査した結果が記載されていました。
下記に筆者がグラフにまとめてみたとおり、「幸せですか?」「夢はかないそうですか?」という質問に対する子供たちの回答には、少し驚かされました。
対象数が少ないということもありますが、やはり日本の子供達には夢が遠いものになりつつあることが分かります。
日本経済新聞社(編) 「2020年からの警鐘」42ページの内容を筆者が
グラフ化したもの
残念ながら全ての調査項目で日本が最下位だったようです。
日本の子供たちは、5人に4人は夢はかなわないものだと思っているようです。
調査当時(1996年)小学校5年生ということは、今(2020年)はもう社会人になり、企業や社会の中でもっとも活躍している頃になります。
もう一度同じ方に調査するとどうなるのでしょうか?
そして、今の小学校5年生に再び調査すると、どんな結果が出てくるので
しょうか。
日本の評価について 国内と海外の違い
日本の海外からの評価を日本のマスコミは、あまり報道はしません。
日本の国内にいるとあまり感じないことでもありますが、海外に住んでいる方々は結構感じていることです。
その中でも、日本を手本に急成長してきたアジアの国からの日本の評価は
厳しいものがあります。
多くの外国の方は、日本のことを「終わった国」と称しています。
特に経済発展著しいアジアの新興国の経済に精通した方たちはそう表現しています。
それを認めないのは日本人だけです。
いや、認めたくないだけかもしれません。
事実、日本の大手企業に社長さんが、お隣の中国の大学で講演した際、
中国の学生から
「あなたの会社は終わった会社ですよね」
「早く市場から退場したらどうですか?」
と堂々と言われショックを受けたという話を聞いたことがあります。
日本は、アジアの中でももう凄い国ではなくなりつつあるのかもしれません。
もしかすると、日本人は今でも「俺たちは凄いんだぜ!」と勘違いしているのかもしれません。
日本が消える
この本には副題があります。
「日本が消える」
決して、物理的に消えることを言っているのではなく、正確には世界における存在感が消えると言っているようです。
この本は、この「日本が消える」ということの意味を次のように説明していました。
成長率が低下して国際経済における日本の存在感が「かすむ」ことが
消えること
日本の世界における影響度を示すものとしてGDPが指標として使われていました。
この本では、1990年には世界のGDP総額に占める日本のその割合が
13.9%であったものが、2020年には9.6%迄低下すると予想していたのです。
中国やインド等のアジア勢が影響力を伸ばす中で、米国も欧州も日本と同様に影響力を落とすと予想していましたが、日本の影響力の低下率が群を
抜いています。
この本では、このことを「日本が消える」と表現して危機感を訴えていたのです。
筆者が読んだコラムの筆者がこの9.6%にも言及していました。
コラムの筆者によると、指摘していた数値(現状での割合)は、この本が
予想した9.6%をはるかに上回り、5.9%だったとのことです。
日本経済新聞が予想したよりもはるかに影響力が低下していることになります。
更にコラムの筆者は、2050年には2%になるといういう予測があると伝えていました。
2%になるとすれば、それはもう先進国ではなくなるのかもしれません。
(先進国の定義はいろいろとあるものの)
少子高齢化の影響もあり、その後も国力が衰えるとすれば、「消える」という表現は当たっているといえるかもしれません。
この国が好きか?
日本経済新聞社は、1997年の連載企画「2020年からの警鐘」に合わせ
て、アンケート調査を実施していました。
調査の対象は、全国の18~39歳の男女、つまり2020年に40~60歳代前半になる比較的若い世代でした。
まず、「2020年に日本は繁栄をしてるか?」 という問いに対する
回答は、意外にも冷静に物事を見ていると感じさせるものでした。
日本経済新聞社(編) 「2020年からの警鐘」170~172頁の内容を
筆者がグラフ化したもの
「停滞をしている」「衰退している」双方で70%を超えており、厳しい未来を予想しているといえます。
経済が衰退していく中で、少子高齢化による社会保障費負担増についても、ある程度致し方なしという意見が大半を占める中で、生活そのものが厳しくなることに対する対策については明確な対応策は見えてきません。
経済的な豊かさが見えない中で、そして見通しがつかない中で、本当に不満が募っていかないのか筆者は少し心配になりました。
今、同じアンケートをとったらどうなるのか?
対応策は見えてくるのか?
とても気になりました。
その反面、この国のことが好きな人も多いことが分かりました。
経済的な豊かさは望めないけれども、この国は好きだとアンケート結果は言っているのです。
日本経済新聞社(編) 「2020年からの警鐘」170~172頁の内容を
筆者がグラフ化したもの
但し、この結果は年齢の若い人ほど否定的な結果になっているようです。
このアンケート対象者は、もう既に40歳を超えて筆者と同年代になって
いる方もいます。
今(2020年)の若い世代にこのアンケートをとったらどんな結果が出るのか少し心配になります。
このように経済が衰退していく中で、
少子高齢化で国力が弱まっていく中で、
どのように生きていくのか?
これは他人事ではありません。
まず国民一人一人が、まず現状をハッキリと把握して、自分ができることをしっかりとやっていくしかないのです。
今までのようにどこの政党とかどこの大学を出ているとか、といったことで政治家を選ぶのではなく、何ができるのかで選ぶ必要があります。
そのためには、自身が生まれ育ったこの国とこれからこの国を背負って立つ若い世代の為にもまず知ることから始めないといけないと強く感じました。
まず、しっかり今の社会を知り、世界の動きを見て、自分ができることをしっかり考えて行く。
そこからがスタートだと思います。
これからも皆さんのお役に少しでも立てるように
「超高齢社会を生き切る為の知識習得ブログ」を続けていきたいと思い
ます。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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