縮小への危機感(2/2)
今回の記事は前回の記事に引き続き、コロナ時代を生き抜くためにまず
この国の現状を整理していきたいと考えています。
厳しい現状は、経済状況に留まりません。
国レベルでの将来への投資という面でも、停滞や縮小を表すデータが多く
あるのです。
大学進学率低下
前回の記事の中で給与額を調査していた時にも意外なデータを発見しま
した。
それは大学への進学率です。
欧州の多くの国では、大学までの教育費が掛からないのです。
それが大学への進学率を高めています。
初任給の高い欧州の国は、軒並み大学への進学率は高かったのです。
ランキング上位の国は、殆どの国で大学進学率が80%を超えていまし
た。
残念ながら日本は53%(2018年)で、OECD加盟国の平均である
62%より大幅に低い状態です。
なぜこんなに低いのでしょうか?
進学率を調べてみると、筆者が生まれた1960年は10%程度しかあ
りませんでした。
その後、バブル崩壊まではうなぎ上りに上昇し、バブル崩壊時点で
約50%となった後はあまり伸びていません。
やはり教育費の問題は大きいのかもしれません。
ここで、大学までの教育費用がかからない国の一つ、フランスを例にと
りますと、
日本と同様に少子化に悩んでいたフランスでは、近年出生率が回復して
2に到達しました。(ようするに一人の女性が生涯に生む子供の数が2
人を超えているということです)
出生率が2以上であれば、単純計算ではありますが人口は減少しないこ
とになります。
フランスでは、結婚・婚外の差別扱いは一切廃止されています。
加えて子育ての為のあらゆる支援・保育施設が充実しているだけでなく、
子育て後の女性の復職は元の地位・給与が保証されているのです。
子育て世帯には充実した子供手当、子育て世帯の所得税の大幅控除もあ
ります。
これに大学まで教育費は無料となれば、子供を産んで育てようという気
になります。
フランスの事例を見ると、ここまで徹底的にやらないと子供の数は増え
ないのかと考えさせられました。
下の図を見てみてください。
厚生労働省が集めたデータを内閣府でまとめたものです。
どこの国も1970年代に入ると出生率は低下し、2を下回り少子化に
苦しんでいることがわかります。
ただ、それ以降青い折れ線グラフで表されたフランスは出生率が横ばい
から上昇に転じています。
残念ながら日本はその後も減少しています。
(2005年の1.26を底に若干持ち直してはいますが)
どこかの国のように、制度もつくらず「なぜ産まない」なんてピントの
ずれた発言をする政治家は、フランスにはいないのでしょう。
日本では都会住まいの高学歴の女性は子供を産まないという話をする人
がいますが、筆者はそれは違うと思うのです。
子供一人当たりの教育費が3000万円と知れば、だれもが躊躇します。
いや、真剣に考えます。
大学を出て、それなりの企業に勤め、安定した収入があって、更に国の
補助があれば子供を産んで育てようという女性は多いのではないでしょ
うか。
乳幼児の保育費の無償化や高校の授業料の無償化がようやく実現できる
ようになりました。
この国の将来を背負う子供たちにもっと教育の場を設けることが大人の
使命だと思います。
高齢化の負の遺産を子供達の世代に背負わせるのであれば、その子供た
ちに夢を持たせる施策も必要なのです。
赤門をくぐるということも夢の一つかもしれませんね
世界的競争力の低下
その大学の競争力も低下しているそうです。
日本は企業だけでなく、大学も競争力を落としているのです。
(企業の競争力の低下については別の記事をご参照ください)
ランキングを決めている要素の中に、大学院の規模等があり、研究を重
要視しているかが大きなポイントになっているようで、ランキング上位
を欧米の大学が独占しています。
日本のように就職する為の一つのステップと考えるところは評価されな
いのかもしれません。
(一応就職力もランキングの評価ポイントに入っているようですが)
世界の大学ランキングで、上位100位までに入っている大学は東大
(36位/2020年度)と京大(65位/同)だけになっています。
そして、大学の研究力という点ではとても気になるデータもあります。
公的教育費の対GDP比率は、3.6%と世界で107番目と低いようで
す。(最も高い北欧は8%)
そして、日本における国立大学の学生一人当たり公の財政支出は、20
2万円と世界からみると低い額になっています。
学生数の8割を占める私立大学の場合は、なんと16万円に過ぎないそう
です。
参考として高等教育における公的財政支出のグラフも見つけましたので
上記に参考として添付致しました。
科学技術関係予算は、この20年間に中国は13倍、韓国は5倍、欧米
は2倍になっているにもかかわらず、日本は1.1倍と停滞しています。
こんなところにも停滞という言葉が存在しています。
国の借金
新型コロナの対策で米国が約3カ月で320兆円の(赤字)国債を発行
したという記事が驚きと共にニュースで報告されていましたが、この国
の借金はもう1000兆円を超えています。
その中で、国債の残高は897兆円(2019年度末)と30年間で5
倍に膨らみ、GDPのなんと1.6倍と、他の先進諸国に抜きんでて高く
なっています。
国にお金を貸しているのは国民だと安心するようなことを言う人がいま
すが、こんなに借金が多いとなると以前の記事でもご説明したように社
会インフラが老朽化しても対応ができない状態なのです。
お金がない中で、
さらにコロナウイルス禍で借金が増えていく中で、
どのようにこの国の経済を立て直していくのか。
それを真剣に考え直さなければならない状況なのです。
この国の資産は「人」だけ
この国の国土からは石油は出ません。
この国の資産は人だけ。
これは国民の皆さんの周知の事実でもあります。
この30年間を冷静に見ると、どうやら政治家に任せても駄目だという
ことも分かりました。
この「縮小」から、いかに「成長」へと転換していくのかが、コロナ時
代を生き抜くために重要なKEY-WORDになるのではないでしょうか。
もうそろそろ、国民一人一人がこの国が停滞していること、縮小してい
ることに危機感を持つべきではないでしょうか。
この停滞を許さない。
子供たちの時代の為にも、これ以上の縮小は食い止める。
この国の子供たちの未来の為に。
それには、国民一人一人の衆知を集めなければなりません。
G7の中で国家財政基盤が安定し、国の借金も少ない国としてドイツの名
があげられます。
ドイツは、かつて「欧州の病人」と呼ばれ、危機的な状況にありました。
それが、経済成長を刺激し社会保障制度を安定させるために導入した経
済構造改革で蘇ったのです。
そして、その改革を後押しした「モノ申す国民」の力が大きかったので
す。
やはり日本にも、改革が必要です。
手遅れになる前に。
一部の政治家や官僚、専門家だけで考えて実行するのではなく、国民主
体の活動が必要なのです。
国民の声なき声を確実に政治に反映する仕組みとともに。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。