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ソーシャルミックス

2020年08月26日
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先日、第1回目のセミナー講師をご担当頂いた研究者の土堤内 昭雄さん
のご招待で千葉県幕張の街を見学に行ってきました。

 

東京から電車で約30分程度。

車窓から海が見えて、景色がとても綺麗です。

海沿いのルートを走ると意外と早く到着します。

 

土堤内さんの案内で幕張の街を歩くと驚かされることが一杯でした。

 

この幕張の街、少子高齢化に悩むこの国がどのように対応していくのか
を考える上でとても参考になる街だと思いました。

 

今回の記事は、幕張の街をご案内する形で進めたいと思います。

 

 

ソーシャルミックスという考え方

 

 

幕張の街ができたのは、今から25年ほど前の1995年くらい。

この街をつくる時の基本コンセプトは、ソーシャルミックスだったとの
こと。

ソーシャルミックス自体は、1970年代くらいから米国で注目された概念
です。

低所得者層が集まる地域における犯罪率・失業率の上昇が社会問題とし
て顕在化した為、それを改善するためにソーシャルミックスが取り入れ
られるようになったそうです。

 

ソーシャルミックスが実現すると、様々な階層の人が同じ地域で暮らす
ようになり、地域には所得の高い人もいれば所得がそんなに高くない人
も住むようになります。

その結果、中高所得者層の規範意識が低所得者層に浸透し、犯罪率・
失業率の低下が期待できるのだそうです。

このソーシャルミックスの概念を「多世代が住む街」として焼き直した
のが、この幕張の街ということになるかもしれません。

以前、国土交通省が高齢社会における地域づくりの在り方を検討した
レポートを読んだことがあるのですが、そこにもソーシャルミックスの
考え方がハッキリと示されていました。

 

特に、郊外の住宅団地等で子供世代が独立し、家を離れたまま親元に
戻ってこないことが多い地域では、街の人口が減少しながら高齢化する
ことによって、以前のような多世代が居住しているソーシャルミックス
の状況から、高齢者ばかりが住む年齢構成に変わってしまいます。

 

このような地域に居住する方々にとっては、昨今の自然災害で被害が
拡大しているように、いざという時の防犯・防災に対する不安が大きく
なってしまいます。

 

多世代が住む街の方が安全・安心という面では優れていることは、
かなり前から認識されていたようです。

 

そんなコンセプトをもった幕張とはどんな街なのか。

 

土堤内さんに案内を頂きながら、歩いてみました。

 

 

他の街と全く違う風景

 

 

駅から居住区へ向かうとすぐに大きなグリーンベルトに出ます。

かなり大きな規模で海側から陸側に数Km伸びています。

人々が散歩したり、集う場所でもあるのですが、階段が少なく、
完全バリアフリーです。

居住区へと向かう為に横断歩道を使う必要もありません。

バリアフリーの陸橋が整備されていました。

居住区に入ると、そこには他の街と明らかに違う街並みがありました。

 

 

 

とても綺麗で、お洒落な街並みが広がっていました

 

 

 

まず気付いたことは、電柱がありません。

 

水道やガスだけでなく、電気も地下埋設です。

併せてゴミ回収も地下埋設なので、街中にゴミステーションがありませ
ん。

とても綺麗です。

 

居住区には一戸建てらしき建物は全くなく、全て集合住宅です。

ここは全て土地だけは借地権利用で、建物だけを購入或いは賃貸して
いるそうです。

結構豪華な集合住宅ばかりなので、分譲ばかりかと思いましたが、
ソーシャルミックスの関係上10%は賃貸なのだそうです。
(この条件は、業者に対して義務付けされているそうです)

 

見た目は豪華なマンションなのに、所得がそんなに高くない若者世帯で
も住めるようになっていました。

 

それも賃貸と分譲に建物自体を分けているのではなく、建物内で分けて
いるために建物内の部屋のつくりも多様性に富んだものになっています。

 

一つ一つの区画をみると、そこには一定の法則みたいなものがあること
がわかりました。

 

区画の外周に(道路に沿って)建物を建て、中央部には(中庭的な)
コモンスペースが設けられています。

そのコモンスペースには、公園や共用施設、水場がある中庭が広がって
いたのです。

 

 

 

住戸中庭にあるコモンスペースは、どこも特徴のあるつくりでした

 

 

 

 

外周からは生活感が感じられますが、中に入るとプライベートスペース
が広がっています。

 

そして、お洒落な一戸建てのような部屋も中庭や建物屋上に見つけまし
た。

 

 

 

 

こんなお洒落な一戸建てならきっと若い人も住んでみたいですね!
周りの景観ともよくマッチしています
多世代の住む街にする為に拘るところは徹底的に拘っているようです

 

 

 

 

驚きの風景

 

 

集合住宅の隣にあった小学校を見て、筆者は驚きました。

学校の外周に柵や塀がありません。

校庭を見て、最初は公園かと勘違いしてしまいました。

 

これで大丈夫なのか?

 

セキュリティ面で少し心配になりましたが、建物自体はセキュリティが
効いているそうです。

 

さすがに大阪の池田小学校襲撃事件の時には、議論になったそうですが、
市の教育委員会や学校側だけで方向性を決めず、保護者や地域の住民も
含めて議論した結果、柵は設けられずに現在に至っています。

 

こうあるべき論を排除し、行政に任せきるのではなく、地域(住民)で
考える。

 

だから地域に愛着が生まれるのではないかと感じました。

 

 

 

 

外周に柵や塀がない小学校 幕張にある小学校は全てこうらしいです

 

 

 

小学校だけでなく、中学校でも面白い取り組みがなされていると聞きま
した。

クラスの教室は存在せず、各科目別の部屋に生徒が集まる仕組みなのだ
とか。

まるで大学のようです。

もう一つ、街を歩いていて気になることがありました。

街区内の道路の両側には、ずらっと車が駐車してあるのです。

こんなところに止めて大丈夫なのかと感じましたが、ここでは街区内は
駐車OKなのだそうです。

 

これだと出かける時にとても便利です。

 

特に高齢になった時には、とても助かるかもしれません。

 

ここにも、こうあるべきという一般常識ではなく、地域の住民の利便性
を考えた仕組みがありました。

 

全てが住民ファーストなのです。

 

 

 

住戸の横にある道路は駐停車OK 一戸建て感覚です

 

 

 

コミュニティの存在

 

 

幕張の街は、街づくりのコンセプトがしっかりしているのですが、その
波及効果によって様ざまなコミュニティができていることも分かりまし
た。

 

多世代が住む街には、各世代が持っている課題が浮き彫りになります。

 

ある意味、多世代の住む街の方が課題も多くなるわけですが、反面その
課題を解決しようとする動きもたくさん生まれるようです。

そんな動きが実現させたのは、様々なコミュニティの誕生です。

そのコミュニティは、行政を動かして空き地を利用してコミュニティ
センターもつくっていました。

 

行政が主体で地域センターを設置しますが、利用者が少なく、機能して
いないところが多いのが実態です。

 

住民主体のコミュニティだからこそ、利用率も上がるのだと理解するこ
とができました。

このコミュニティ、地域にある様々な能力を集めているようです。

様々な階層の方々、様々な職業の方々の能力を「見える化」するのが
コミュニティなのかもしれません。

 

コミュニティが、地域にある「社会資源」に光をあてています。

 

見える化できるほど、地域の問題解決力が上がっていきます。

 

コミュニティは、多世代の課題を住民が共有して、住民自らが解決する
風土を育成します。

 

そして、課題が解決できるところに人は集まります。

 

行政に任せきっても、課題が解決できないことはもう過去が証明して
います。

 

もしかすると、課題解決できるところが本当の故郷になるかもしれませ
んね。

 

そして、このコミュニティの原動力こそが、ソーシャルミックスなのだ
とわかったのです。

 

ソーシャルミックスという考え方が創り出す

 

様々な世代階層

様々な所得階層

そこには様々な職業(得意技を持った)の方々が存在します。

 

この得意技を持った方々が、コミュニティに集って活躍できれば、
問題解決に近づく可能性が高くなります。

 

様々な階層の方々に住んでもらう為には、街を作る時のコンセプトが
重要なのだと感じました。

 

幕張は25年前にそんなコンセプトによって創られた街なのです。

 

行政に任せきるのではなく、

街を切り開いた業者に任せるのでもなく、

住民自らコミュニティを使って、自らの街を良くしていく。

 

これが究極の地域におけるセルフマネジメントだと思いました。

 

見学させて頂いた後、土堤内さんと公園のベンチで休憩しながら筆者は
思いました。

 

超高齢化を迎えた日本の中で、こんな街でした生き残れないのではない
かと。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

次回の記事は、8月最終日の31日に投稿予定です。

今回の記事では、少子高齢化への秘策ともいえるソーシャルミックスを
取り上げましたが、今この国の難題は一つではありません。

「少子高齢化」×「コロナ」×「自然災害」

多くの問題を解決して行く上で、欠かせない考え方があります。

この国が持つ社会資源を最大限に活用する為の方策。

その中心には、「エイジフリー」という考え方があります。

次回の記事では、このエイジフリー(生涯現役)について、読者の皆様
と一緒に考えていきたいと思います。

是非お付き合いください。