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老いの一極集中

2020年09月17日
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コロナ第2波は、疾病弱者である高齢者の皆さんに大きな影響を与えて
います。

 

高齢者施設でのクラスターも増えました。

 

お盆の帰省時期、田舎にいる高齢の両親や祖父母への感染を防ぐために
今年は帰省を諦めた人も多いようです。

 

実はこの高齢者の皆さんは、田舎にいる方の数より都市部に多いことを
読者の皆さんは御存知でしょうか。

 

それもこれから爆発的に増えていくことになるのです。

 

度々記事でご紹介してきた2025年問題。

 

高度経済成長期に地方から都会に移り住んだ方々が、高齢者となってい
ます。

 

そして、最も人口が多いとされる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に
なるのが2025年です。

 

この2025年あたりから都市部では大きな問題が顕在化することになりま
す。

 

それも一番深刻な場所は、人口の一極集中がおきている首都圏です。

 

人口の一極集中 = 老いの一極集中

 

という新たな難問が間近に迫っています。

 

 

 

画像素材:フォトサリュ

 

 

雪だるまどころか雪崩のように

 

 

首都圏における高齢者の激増はいったい何をもたらすのでしょうか。

 

まず、介護や医療を例にとってみましょう。

 

今回のコロナ禍では、高齢者対策にとっての大きな課題が発覚してしま
いました。

 

今までは、心身が弱れば施設へ行くことが多かったのですが、通所にし
ても施設に住まうにしても、団体生活が基本である以上、そこには感染
リスクが伴います。

 

最近高齢者の皆さんが、感染を恐れて通院せず、持病が悪化するケース
が増えています。

 

安心を提供するはずの病院にもリスクが発生しているために、高齢者の
皆さんは自衛のための行動をとり始めているのです。

 

新しい生活様式は、高齢者の皆さんにとっても必要なモノになっていま
す。

 

そんな状況もあって、以前の記事でも書いたように、今「在宅」という
KEY-WORDが注目を浴びています。

 

ただ、この「在宅」も大きな課題を抱えています。

 

通所や施設入所であれば、施設内で職員による効率的な対応が可能です
が、在宅となるとその手間は大きく増えることになります。

 

介護職は皆さんもご存知のように、3K職場でありながら賃金が低く、
離職率が非常に高いという課題を抱えています。

 

ようするに介護職を確保するのが難しいのです。

 

以前の記事でも書いたように、現在でも7割は家族や親族での介護が
実態なのですが、爆発的な高齢者の増加は人手不足や施設不足を加速
させた上で、家族や親族の更なる負担増にもつながることになるので
す。

 

親の介護の為に、介護離職がもの凄い勢いで増えています。

 

介護離職を選択した結果、経済的に困窮する世帯も増えています。

 

それも高齢者の増え方が、雪だるま式ではなく、雪崩を打ったように
起こる首都圏では深刻な事態になることが予想されます。

 

 

 

こんな恐ろしいことにならなければいいのですが・・・

 

 

 

医療だけ見ても深刻です。

 

在宅医療が可能な地域は確実に増えつつありますが、まだまだ装備や
システムも含めて脆弱であることは明らかです。

 

筆者が心配しているのは、医療体制だけではありません。

 

社会保障費の上位を年金と共に占めている医療費。

 

首都圏での高齢者の激増は、この医療費をも一気に押し上げていきます。

 

下記のグラフを御覧ください。

 

 

 

年齢別生涯医療費の推移 出所:厚生労働省が発表した厚生労働白書

 

 

 

筆者が、厚生労働白書のデータからグラフ化したものです。

 

一生涯どれだけ医療費がかかるのかを年齢別に示しています。

 

医療費は、高齢期に入ると一気に上昇し、後期高齢期にそのピークを
迎えます。

 

後期高齢者の医療費がとても高いことがわかります。

 

そして、グラフを全体的に見ると、70歳までの医療費と70歳以降の
医療費がほぼ同額であることがわかります。

 

このデータは2010年度推計ですので、もう逆転しているかもしれま
せんね。

 

もう読者の皆さんはわかったはずです。

 

首都圏に集中し、一気に増加する高齢者の皆さんがどれほどの医療費を
使うかということが。

 

社会保障給付費は大きく「年金」「医療」「福祉その他(介護や生活
保護等)」の3部門に分けられますが、2016年度における構成割合
は「年金:46.5%」、「医療:32.8%」、「福祉その他:20.6%」でし
た。

 

社会保障費の中で大きなウェイトを占める医療費が爆発的に増えるとい
うことは、社会保障費を一気に押し上げ、国や自治体の財政を一気に悪
化させていきます。

 

今まで首都圏は、その人口の多さで多方面において恩恵を受けてきまし
た。

 

しかし、この急激な高齢化は大きなリスクとして顕在化することになり
ます。

 

それもある時に、急に、雪崩に会うがごとく顕在化するのかもしれない
のです。

 

 

都会の限界集落

 

 

2025年にはどのような社会になるのか?

 

2025年になったらすぐにそんなことにはならないまでも、団塊の世代の
人口の山が後期高齢者の域内にいる間に大きな問題になることはほぼ間
違いありません。

 

今まで地方の田舎で発生していた限界集落。

 

この限界集落のような地域が、首都圏内でも見られるようになるかもし
れません。

 

その時はどうするのか?

 

大事なことは、そうなる前にきちんと準備することしかありません。

 

それは、行政レベルでも、地域レベルでも、個人レベルでも同じです。

 

もうこれ以上先延ばしにせず、出来ることを粛々と実施していくことで
対応するしかないのです。

 

どのように地域を守るのか

どうすれば(住み慣れた)街を守れるのか

どうすれば(住み慣れた)街と自宅で住み続けることができるのか

 

それぞれのステージで、それを一つ一つ考えて、実行していくしかあり
ません。

 

 

どんな背中を見せるのか

 

 

前述の社会保障費の問題、確実に国民の負担は増えていきます。

 

国民の社会保障負担率は、2000年の13.1%から昨年(2019
年)には17.4%に増加しました。

 

僅か10年足らずで、4ポイント以上も上昇しています。

 

租税負担率を合わせると、国民の負担率は2000年の36.0%から
昨年の42.8%と、これも7ポイントも上昇しています。

 

これからも、今のままでは上昇していくことを避けることはできません。

 

経済成長はこのコロナ禍で見通しをすることすら難しくなりました。

 

今できることは、一つです。

 

高齢期に入った方々が、1日でも多く「支えられる立場」から「支える
立場」に居続けることです。

 

そのためにも、以前の記事でも書いた「生涯現役社会」の実現が必要で
す。

 

アフターコロナの時代には、新しい生活様式だけでなく、社会の価値観
をも大きく転換させる必要があります。

 

それは、パラダイムシフトのような急激なものかもしれません。

 

そして、その常識を変える対象は「高齢期に入った方々」かもしれない
のです。

 

高齢化がこれからも進むこの国で、これからの高齢者は“こうあるべき”
と次世代に背中を見せる任務が高齢者にはあると筆者は思います。

 

 

 

筆者の背中です 何を見せれるかはこれからの努力次第!

 

 

 

国も高齢者を守る政策だけでなく、高齢者にもっと活躍してもらえる政
策をもっと真剣に考えるべきだと思うのは筆者だけでしょうか。

 

筆者自身も次世代に自信をもって背中を見せられるような存在でありた
いと願っています。

 

 

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

次回の記事は、9月22日頃投稿予定です。

今回の記事でも生涯現役社会が重要であると書きました。

しかしながら、高齢者を中心にして働きたくても働けない実態があり
ます。

そして、非正規という厳しい条件の働き方も増えています。

そこで次回の記事では、新しい働き方について取り上げてみたいと思い
ます。

withコロナの時代、新しい働き方が待ち望まれています。