上手に老いる
前回の記事で、少子化が続くと「支える人」と「支えられる人」のバラ
ンスが大きく崩れ、社会が不安定になるとお伝えしましたが、子供の数
が増えれば対応ができるというものではありません。
そう、「支えられる人」側にも努力が必要です。
極端な話をすると「支えられる人」にならないようにする。
年齢を重ね、高齢になったとしても「支える人」であり続ける。
それがとても大事なことだと思うのです。
老いは誰にでもやってきます。
全ての人に老いは訪れます。
いつかきっと。
社会を支えながら老いるということはどういうことなのでしょうか。
今回の記事は、上手に老いるをテーマに進めていきたいと思います。
上手に老いるとは
誰もが歳をとりたくないと考えるのかもしれません。
でも、歳を重ねていく「加齢」と「老化」とは別物です。
そこに「人はなぜ老いるのか?」という疑問が湧いてきます。
若さを維持するという意味での「アンチエイジング」という言葉があり
ますが、いつかは老いるのであれば、その言葉には無理があるのかもし
れません。
そこに、上手に老いるという概念が生まれても不思議ではないかもしれ
ませんね。
上手に老いる = withエイジング
そんな言葉の方がピッタリくるかもしれません。
そのためには、まず心構えが必要なのかもしれません。
過去の記事では、健康を維持する為に一番大事なことは「働く」ことだ
とお伝えしてきました。
しかし、高齢でも元気で働くためには健康維持は必須条件です。
どうすれば健康状態を維持できるのか。
まずは、どのような要因で健康ではなくなるのかということを考えてみ
ましょう。
上図をみると25%は遺伝的な要素が影響していることがわかりますが、
大部分は自己管理で健康を維持できるという研究成果が出ています。
要するに自己管理を「やるか」「やらないか」なのです。
上手に老いるためには、自身の健康管理を「やる」必要があるのです。
「簡単なことじゃないよ!」という声も聞こえてきそうですが、健康維
持は自己管理でできることを再認識する必要があるのかもしれません。
フレイル
自己管理が重要であることが分かれば、「支えられる人」にならないた
めにもフレイルの知識が必要になるかもしれません。
下図のとおり、「健康状態」と「要介護状態」の中間点に位置する「虚
弱」の状態をフレイルと称しています。
フレイルという言葉を是非覚えてみてください。
フレイルにならないようにする。
フレイルになっても早期に健康状態に戻す。
それが大事です。
実はフレイルにならない為の取り組みは中年期から始まっています。
中年期におけるポイントは疾患(疾病)の早期発見・早期治療です。
高齢期に入るまでにリスクを極力低減しておく。
人生はとても長くなりました。
死にたくても簡単には死ねなくなったのです。
長くなった人生を生き抜くためにも、健康年齢を極力上げていくことは
とても重要になったといえます。
その為にも、高齢期に入ったら「生活機能低下の予防」を実施しなけれ
ばなりません。
・運動機能の維持向上
・栄養改善
・社会参加(働くこと)
高齢期での就労は、社会参加につながることは以前からもお知らせして
きましたね。
そして、上記の3つのポイントについてしっかり活動を実施しながら、
感覚も磨かなければなりません。
いったい何の為の感覚を養うのでしょうか?
それは加齢や心身機能低下を伴う危険な老化のサインを敏感に察知する
感覚です。
・最近よく躓く
・呼ばれても気付かない
・歩くのが遅くなった・・・等々
大事なことは早期発見、早期対処です。
老いを止めることはできませんが、進行をある程度コントロールするこ
とはできます。
人生の戦略
もう一つ大事なことは、「人生の戦略」を持つことです。
第二の人生も生きがいを持って健康で生きていくためには、人生の戦略
が必要になりました。
その戦略の一つに前述のフレイル予防の為の施策が入ります。
中年期でしっかりと疾患の予防・早期治療を実施しておくのです。
筆者も60歳を前にして大病をし、心臓手術を4回も受けました。
最後の手術は完治を目指した治療でした。
心臓疾患は冬季には血管の収縮による大きなリスクを伴うことになりま
すが、手術のお陰で冬季にもリスクを心配することもなく、日本で一番
寒いといわれる北海道の冬を何ら問題なく乗り切ることができました。
高齢期に入る前に、できる限りリスクを低減させることが必要なのです。
さて、読者の皆様はご自身の健康診断の結果をどれほど真剣に見ている
でしょうか。
最終判定、再検査や要検査、注記項目くらいしか見ていない方は是非結
果の数値も見てみてください。
(診断結果には数値の見方が添付されています)
その際、診断数値の「高い・低い」の判断はあくまでも一般的な目安で
す。
数値が範囲内に入っているから大丈夫というものではありません。
例えば悪玉コレステロール(健康診断の結果シートにはLDLと表記)。
健康診断の説明には、「139以下(であればOK)」と書いてあるので
すが、実は100以上であれば、血中脂質が確実に蓄積されていきます。
筆者の場合は医者の指導でLDLを60以下にコントロールしています。
この数値なら脂質は蓄積されにくいのです。
遺伝的な要素も含めて数値を注意深く確認する必要があるのです。
それも現在の数値ではなく、将来的なものも含めて長い目でチェックす
ることが大事です。
これからは、人生を100年として考えた体のチェックが必要なのです。
そのチェックから人生100年の戦略が見えてきます。
要介護3大要因の予防
高齢になっても介護状態にならないためには3つの障害を予防しなくて
はならないと筆者は考えています。
・運動機能障害(ロコモ)の予防
以前の記事でもご紹介した「貯筋」の推進
・脳と心臓の血管障害の予防
メタボと糖尿病を防ぐ
・認知症の予防
デンマークのコペンハーゲン大学の研究では運動を2週間しない高齢者
は筋肉の1/4を失うのだそうです。
この研究結果には「おまけ」があります。
失った筋肉をもとに戻すのには、3倍以上の時間が必要なのだそうです。
ようするに2週間運動しなかった場合、元通りにするには6週間も運動
しなければならないようです。
フィットネスクラブに通う人も随分と増えましたが、日ごろの運動習慣
がとても大事であることがわかる研究結果だと思います。
上手に老いるためには、自己管理による要介護の予防から始めなければ
ならないことがわかっていただけたでしょうか。
今回の記事は少々長くなりましたので、この続きは次回の記事でご紹介
していきたいと考えています。
高齢期における人生の戦略を考える上で、重要となる視点とはどういう
ものなのかを次回の記事ではご紹介していきたいと思います。
今回の記事も最後まで読んでくださり、感謝申し上げます。